【ご質問内容】
Q1.
職場の健康診断で、胸のレントゲン検査や胃カメラ検査があります。高温期や体外受精の時の採卵前の刺激中の時、カメラやレントゲン検査を受けてもいいものでしょうか?
Q2.
放射線科の事務や案内の仕事をすることになりましたが、受精卵や赤ちゃんに影響はないのでしょうか? 配置をかえてもらったほうがよいのでしょうか?
Q3.
採卵の前後や妊娠判定待ちの時に乳がん検診を受けても大丈夫ですか?
Q4.
子宮卵管造影検査後はタイミングを取った方がよいと伺いましたが、下腹部への被曝が心配です。卵子に影響はないのでしょうか?貴院では、卵管造影検査を受けた方は検査後に異常がなければ皆さんその周期にタイミングなり人工授精なりをしていらっしゃるのでしょうか?
Q5.
レントゲンは月経10日目以内に受けるのは問題ないとありますが、 ①移植前の準備周期(プラノバール服用)ではマンモグラフィーや胸部レントゲンを、月経10日以内ではなく、例えば月経20日目~月経までの間に受けても問題ないですか? ②ホルモン補充療法での移植周期(胚盤胞)では移植の何日前までなら大丈夫とかありますか? よろしくお願いします。
Q6.
いつまでCTとか撮影可能か、部位によるのか教えてほしいです。判定まではどっちか分からないから大丈夫なのかなあと思ったり。
Q7.
歯科治療を予定しているのですが、レントゲン検査はいつなら大丈夫ですか?
【当院からの回答】
胎児への影響は被爆時期と被爆線量により異なります
Kasama T, Ota K.:Congenital Anomalies 42,10~14,(2002)
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流産(胎芽・胎児死亡):着床前期(受精0~13日)に最も多く、器官形成期の被曝でも起こります。その閾値(しきいち、それより低ければ生物的反応に放射線の影響がない線量値)は100mGy以上とされています。
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外表・内臓奇形:器官形成期に起こり、各器官でその細胞増殖が最も盛んな時期の照射に特徴的に発生します。その閾値は100~200mGyとされています。
☆ 被爆線量(妊娠中の主な検査の被ばく線量)
E.J.Hall著,浦野宗保訳;放射線生物学,篠原出版,第4版,(1995)
☆ 放射線量のおおよその目安
放射線技師会雑誌No47 10号より
吸収線量:グレイ(Gy)
物質がどれだけ放射線のエネルギーを吸収したかを表す量です。
1Gyは物質1kg当り、1ジュールのエネルギー吸収を与える量です。
線量:シーベルト(Sv)
放射線が人体に及ぼす影響を含めた線量です。
線量=吸収線量×放射線荷重計数×(組織荷重計数)
- 受精後10(13)日(妊娠検査が陽性になる前)までの被ばくでは奇形発生率の上昇はないと考えられます。
- 受精後11(14)日~妊娠10週までの胎児被ばくは奇形を誘発する可能性がありますが、50mGy未満の被ばく線量では奇形発生率の上昇はありません。
- 妊娠10~26週では中枢神経障害を起こす可能性がありますが、100mGy未満では胎児中枢神経障害の発生率増加はありません。
- 健診における胃カメラ(胃内視鏡)、大腸内視鏡などは放射線被爆を伴わない検査ですので、検査そのものが着床・胎児に影響することはありません。
- 胸部単純撮影やマンモグラフィーや歯科レントゲン撮影は、被ばく量が少なく原則いつ受けても良い
- 防護エプロン(鉛のプロテクター)をつければレントゲン線の影響を遮蔽することができます。
- レントゲン検査は、基本的には月経開始10日以内に受けることをお勧めしますが、プラノバール服用中やエストラーナ貼付中などの胚移植前の期間は、妊娠時の被ばくを避けるという意味からは検査しても大丈夫といえます。 胚移植後から着床判定までは避けたほうがよいですね.
- 医療用被ばくでは、腹部および骨盤部CT、子宮卵管造影や大腸(注腸造影)・胃(バリウムを飲んでの胃透視)などの造影検査は、レントゲン被ばく量が多い検査になりますので、月経開始後10日以内が原則になります。
- 子宮卵管造影検査の前にバリウムを飲んでの胃透視などしていると検査できないことがあります。
- ヨード造影剤を使用する子宮卵管造影では甲状腺機能亢進症があるときに問題になる可能性がありますので、「事前に検査しておく」「治療中であれば申し出る」必要があります。
下記の記事もご確認ください。
妊娠前・妊娠中の放射線(レントゲン)検査の妊娠・胎児への影響について