不妊症の患者に対して、精巣内精子採取術(TESE)の適応を判断する目的でY染色体微小欠失検査(AZF遺伝子検査)が保険適用になっています。
- AZF遺伝子は、Y染色体の長腕に存在し、精子形成に関与しています。
- AZFは3つの領域a,b,cからなり、27種類のタンパク質をコードしています。
- これらのタンパク質は、精子形成に必須で、減数分裂や精子形成細胞の細胞周期に関与しています組織学的にはAZFa微小欠失でセルトリ細胞のみ、AZFb微小欠失で精子発生成熟停止、AZFc微小欠失で精子形成低下となります。
- AZFaおよびAZFb領域の微小欠失では精子は認められません。
- 一方、AZFc微小欠失の場合には精子回収が可能なことが多くあります。
周産期遺伝カウンセリングマニュアル
[算定要件] Y染色体微小欠失検査は、不妊症の患者であって、生殖補助医療を実施しているものに対してPCR-rSSO法により、精巣内精子採取術の適応の判断を目的として実施した場合に、患者1人につき1回に限り算定する。なお、本検査を実施する医学的な理由を診療録に記載すること。
このY染色体AZF遺伝子についての説明したいと思います。
【無精子症】
無精子症では射精された精液中に精子が認めらない状態ですが、
TESE(精巣精子採取術)で精子が回収できれば、顕微授精(ICSI)で妊娠のチャンスがあります。
- TESEは鼠径部の皮膚切開を行って精巣の精細管を採取します。
- メスを入れる前に精子が採取できるか事前に予測することが望まれます。
- このために、Y染色体にあるAZF遺伝子(azoospermic factor:無精子症因子)に微小欠失がないか、事前に採血検査で確認します。
- 微小欠失としては、AZFa、AZFb、AZFc、AZFb+c、AZFa+b+cの5つのパターンがあります。
- 無精子症や高度乏精子症、極度な精子形態異常や精子運動異常では、5~10%の方にY染色体AZF遺伝子の微小欠失あると考えられています。
- 残念ながら、AZFa または AZFb 領域の微小欠失では、TESEしても精子が採取できる可能性がありません。
- AZF c単独欠失の場合は、精子採取の期待がありますが、AZF cの遺伝子欠失は男児が生まれた場合に、児に同様の状態をもたらすことが推測されます。
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