■質問内容
Q1.
排卵誘発剤は卵巣の老化を早めると、別の不妊治療に通っている友人に言われました。 実際のところはどうなのでしょうか? 無駄に老化を進めたくはないのですが。
Q2.
複数回の採卵や、体外受精などで、たくさんの注射や内服薬を継続して使用していますが、体に副作用等はないのでしょうか? 長期間不妊治療をすると更年期が早くくるとか、老化が早いとか聞くので、不安になることがあります。
■当院からの回答
卵子は生まれる前に造られ次第に減って行きますが、第一減数分裂の途中で眠って保管されている卵子のうち1000づつ位の単位で活動を再開し、それから約6ヶ月くらい掛けて月経期の胞状卵胞に到達します。
この6か月の変化の詳細は不明ですが、この時期に変化する小卵胞がAMH抗ミュラー管ホルモンを産生しており、AMHが発育する卵子数をコントロールしているのではないかと考えられています(AMHが高いほど残っている卵子数は多い)。
抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、極初期の発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンで、現在、最も正確に卵巣予備機能の低下を感知できる検査と考えられます。
厳密にはAMHは、原始卵胞から変化を始めた一次卵胞、二次卵胞、前胞状卵胞の
顆粒膜細胞から産生されていますので、原始卵胞数自体を現すものではありませんが、原始卵胞数を予測するための最も信頼性の高い指標です。
AMHの産生源 (Human Reproduction Update, Vol.16,113–130, 2010 改編)
排卵誘発剤は、この月経期に胞状卵胞に達している卵子に対し、通常は一つしか成熟卵胞に達することがないものを、卵胞刺激ホルモンを注射する、あるいは通常より多く卵胞刺激ホルモンを産生するように促す内服薬を使用することにより、より多くの胞状卵胞を成熟卵胞に達しさせようとするものです。
従って、排卵誘発剤を使っても使わなくても、排卵が起こっても起こらなくても、卵子数は次第に減ってしまいますし、単に数が減るだけでなく、第一減数分裂(排卵直前に終了)および第二減数分裂(排卵翌日に精子が侵入して終了)がうまく進まないために、妊娠しにくかったり、受精卵の異常(流産や児染色体異常)が起こりやすくなります。
現在まで、この老化を防止できる医療はできていません。「老化を防止する」という数々のサプリメントが売られていると思いますが、バランスの良い食事、適度な運動、愉しいことをするストレスの少ない生活しかないのではないでしょうか?
排卵誘発剤を使用した人の閉経時期が早いといった明確なデータはありませんが、いずれにしても必要以上の卵巣刺激は避けなければなりません。
排卵誘発剤は、この月経期に胞状卵胞に達している卵子に対して影響を及ぼすもので、胞状卵胞に至っていないものには影響は及ぼしません。
胞状卵胞から、通常、一つしか成熟卵胞に達することがないものを、排卵誘発剤を使用することで、より多くの胞状卵胞が成熟卵胞に達する可能性があり、体外受精では、この目的で下記の排卵誘発剤(注射や内服薬)を使用します。
①本来は下垂体で造られる卵胞刺激ホルモンFSH/hMGを注射する
②下垂体からの卵胞刺激ホルモン産生が高まるように内服薬(クロミッドやレトロゾール)を内服する
排卵誘発剤を使っても使わなくても、排卵が起こっても起こらなくても、卵子数は次第に減っていきます。
下記の記事もご参照ください。