2023 登山 その35 槍ヶ岳~大キレット~北穂高小屋~北穂高岳~涸沢ヒュッテ 3日目 その4 | HIRO'S DIARY vo3

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令和5年8月11日(祝)槍ヶ岳~大キレット~長谷川ピーク~A沢のコル~飛騨泣き~北穂高小屋~北穂高岳~涸沢ヒュッテ(長野県)

 

と言う事で、精神的にも肉体的にも限界を遥かに超えている自分に気合を入れて

「涸沢ヒュッテ」を目指して「北穂南陵」を降りる事にした。

 

 

登山道を下ってテント場を抜けて暫くすると、目の前に「ライチョウ」が現れた。

 

 

「ライチョウ」は特別天然記念物なので、刺激しない様に止まって様子を見ていると

何故か、こちらに向かって歩いてきた。

 

 

そして、自分の足元を一周して前を歩き出した。

 

とりあえず止まったまま様子を見ていると、こちらを振り返って止まった。

 

すると「涸沢はこっちだから付いてきて」って言ってるような感じで

また歩き出したので付いて行った。

 

 

その後も、何度もこちらを振り返りながら先導してくれた。

 

そして、ハイマツの中に消えて行った。

 

そんな「ライチョウ」とお別れした後は、少しだけ危険な登山道を慎重に抜ける。

 

 

すると、今日の宿泊地の「涸沢ヒュッテ」が遠くに見えた。

 

 

そこから更に下るが、体に全然力が入らない。

 

何度も立ち止まって休憩して息を整え、エナジーゼリースポーツ羊かん

ブドウ糖を食べて、シャリバテにならない様にエネルギーを補給するが体力は回復しない。

 

それでも、とにかく行くしかないので更に下ると長いハシゴが現れた。

 

 

高さがあるハシゴを怖がる人がいるが、確実に手を掴めるし足も置けるので

自分にとっては、チェーンロープと比べると安心できる場所だが油断は禁物だ。

 

 

 

しかも手も足も力が入らないので、いつもは手と足を交互に使って降りるが

両足を揃えて降ろして、その後に両手を揃えて掴んで

その動作を繰り返して一歩ずつ慎重に降りる。

 

そして、その先の岩場も慎重に降りると、今度は垂直な下りの壁が目の前に現れた。

 

 

ハシゴと違って手と足に力が入らなくても、いつもと同じように降りないといけないので

一歩ずつ慎重に、つま先を段差に引っ掛けて降りる。

 

下まで降りて見上げると10m位あって、日が暮れてヘッドライトで降りていたら

かなり危険だった。

 

 

って言うか、降りる事が出来なかったかもしれない。

 

そして、そこから「涸沢ヒュッテ」が少しだけ近づいて見えた。

 

 

ただ、この時すでに6時30分を過ぎていて予定よりかなり時間が掛かっている。

 

しかも、もうすぐ日が暮れてしまう。

 

でも、体力はすでに限界を遥かに超えていて、中々足が前に進まないが

それでも少しずつ下る。

 

ただ、危険な所はもう無さそうなので、ストックで体を支えながら降りたいが

ストックを仕舞っているバックパックを降ろすと、もう担げないような気がして

降ろす事が出来なかった。

 

そして、とうとう日が暮れて真っ暗になってしまった。

 

ただ暗くなってからは樹林帯で、ヘッドランプで照らせば

前も足元も見えるので道に迷う事は無い。

 

でも、大きな石が沢山あるので足を捻らない様に気を付けないと

捻挫したらそこで終わってしまう。

 

そんな中で何度も立ち止まって休憩しながら暫く慎重に下っていると

砂利道になった所で、足が滑って尻もちを付いてしまった。

 

そして、立ち上がろうとしたが身体に力が入らず、そのまま動けなくなってしまったので

座り込んだまま暫く色々な事を考えた。

 

ツェルトエマージェンシーシートダウンジャケットホッカイロもあるので

このまま無理して降りるより、ここで「ビバーク」した方がイイかもしれない。

 

そんな事を考えながら、とりあえず座り込んだままウエストハーネスと

チェストストラップを外して、ショルダーベルトから両腕を抜いてバックパックを降ろした。

 

その時、毎日出発前にアミノバイタルと一緒に飲むためにペットボトルに入れていた

最後の「リポビタンD」がバックパックにある事を思い出し

明日の事より今の方が大事なので、取り出してアミノバイタルと一緒に飲んだ。

 

そして、しばらく休憩して息を整えて落ち着いたところで

バックパックからストックを取り出し、そのまま座った状態でバックパックを担ぎ

最後の気力を振り絞って立ち上がった。

 

ストックで体を支えながら降りると少し楽なので、もう暫く頑張る事にした。

 

でも、もう無理だと思ったら「ビバーク」するしかない。

 

そんなヘロヘロな状態で降りていると、遠くにテントの明かりと「涸沢ヒュッテ」が見えた。

 

 

その時「涸沢ヒュッテ」の所から、こちらに向けてランプが点滅してるのが見えたが

勘違いかと思ってそのまま暫く降りて行くと、ずっと点滅している。

 

もしかしたら、到着が遅いのを心配して宿の人が合図を送っているかもしれないと思って

自分もヘッドランプを点滅して合図を送った。

 

すると、点滅が点灯になってまた点滅したので、同じように合図を送り返した。

 

下まで降りる気力も体力も、もう無くなっていたが

その合図をエネルギーに変えて、最後の力を振り絞って歩みを進めた。

 

そして、ヘロヘロになりながら樹林帯を抜けて「涸沢小屋」の横に出て

そこからテント場の間を抜けて、何とか無事に「涸沢ヒュッテ」に到着した。

 

その時午後8時30分を過ぎていて、槍ヶ岳を出発してから17時間が経過していた。

 

道に迷った訳でもなく、大きなトラブルがあった訳でもないのに

標準タイムの2倍も時間が掛かってしまったが、何とか宿に辿り着く事ができた。

 

でも、建物が入り組んでいて受付が分からなったので探していると

 

「北穂高から降りて来た人ですよね?大丈夫ですか?」

 

って、20代位の女性とその母親らしき親子に声を掛けられた。

 

「大丈夫です。なんとか降りて来れました。ありがとうございます」

 

「テラス席で座って休憩していたら、上から降りてくるヘッドランプが見えて

 みんな心配してたので、下から合図を送ったのですが分かりましたか?」

 

「はい、分かりました。ありがとうございました」

 

「無事で本当に良かったです、お疲れさまでした。受付はこちらです、案内します」

 

そんな会話があって受付に向かったが、こんな時間に登山フル装備の疲れ切ったオッサンが

フラフラになりながらウロウロしていたので気づいたのだと思う。

 

そんな自分の事を心配してくれた人がいて有り難かった。

 

そして、受付に行ってバックパックを降ろして

 

「到着が遅くなってすみません。心配をお掛けしてすみませんでした」

 

「全然大丈夫ですよ。それより無事で良かったです」

 

「おなか減ってないですか?夕食を用意しましょうか?」

 

「ありがとうございます。でも行動食を食べながら降りて来たので大丈夫です」

 

本当はお腹がすいていたが、こんな時間に夕食を用意してもらうのは

申し訳なかったので遠慮した。

 

宿の人も自分の事を心配してくれて有り難かったが

たくさんの人に心配を掛けて申し訳ないと思った。

 

そして部屋に案内してもらい、とりあえず部屋着に着替えてから洗面所に行って

顔を洗って歯を磨いてコンタクトを外して、部屋に戻って横になった時に

 

「午後9時になりましたので消灯の時間です。館内の電気を消します」

 

と放送があり、館内と部屋の電気も消えて真っ暗になった。

 

 

そして、ヘッドランプを点けて明日の用意をしようと思ったが体が動かず

そのまま、倒れ込むように眠りについた。

 

 

4日目に続く・・・。

 

 

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