オオトモイッカの事務所に戻ると
「コウキは?」
ドンヘに聞かれて気づいた。
そういや、俺が考え事をしてる間にいなくなってたわ
「先に戻ったと思ったけど」
「戻ってきてないよ。まあ、いいや。ほら、ヒョクもご飯食べなよ」
「うん、、、なあ?ドンヘ…」
「ん?」
「お前…」
「おいっ!早く飯食え!」
うおっ!?
この声は、、、
「マスター?来てたんですか?」
「こいつらの飯を作りに毎朝きてんだよ。
そんな事より、早く食っちまいな」
「あ、はい。すみません」
謝って食卓についた。
「あ、なあ?オヤブンサンは?」
「病院だって」
「え?どこか悪いの?」
「どこも悪くない。」
「どこも悪くないのに病院に行ったの?」
「歳を取ると病院通いが趣味になるんだって言ってた。」
「趣味?なにそれ?
「知らないよ。オヤビンに聞いてよ」
「いや、聞くまでの事じゃないからイイよ」
「ねえ?ヒョク、コウキとなんの話してたの?」
「え?、、、ああ、この街の事を色々と聞いてたんだよ」
「そうだよね…オレのせいでヒョクも韓国には帰れなくなっちゃったんだもん、、、。
ヒョクと離れていたくなくてヒョクをこの国に呼んでしまったけど…そのせいでヒョクまで組を裏切ったって思われて…ヒョクまで危険な目にあわせてる。本当にごめん、、、」
「ドンヘが謝ることなんか無いんだって!約束したろ?どっちかがヘマしたら二人で逃げるって!
お前と二人なら、この街で生きていくのもいいかもしれない。」
「ヒョク、、、」
「とは言っても、生きていくためには働かないとな。ねえ?マスター?」
「んー?」
「オレでも出来る仕事とかないですかね?」
「あるよ」
あっさり?
「なんですか?」
「ノルテでアルバイトしろよ。アパートの家賃分くらいのバイト代は出すよ」
「アパートの家賃分?て、5000円?1日のバイト代ですか?」
「1ヶ月に決まってんだろ?1ヶ月5千円もありゃあ、暮らすにゃ十分だ。この街で金なんか使う事なんかねえんだから」
「って言っても5千円じゃ光熱費やスマホ代も払えませんよ。それに食費だってかかるんですよ?」
「食費は要らないよ。なんせ三食タダで食えるんだから。朝は、ここに食いに来ればいいし、昼と夜は店で賄いを出してやるよ。
まあ、流石に5千円じゃナンだから3万でどうだ?」
3万あればスマホ、光熱費、銭湯も毎日入れるな。
「やりまっす!!」
「オレもやるっち!」
「いやいや、二人も雇える余裕ないし、あの狭い店に二人もバイトは要らないのよ。」
「ヒョクと一緒がいいのにぃ〜!!」
「ワガママ言わないの。それにキミには、ここの仕事があるでしょ?」
「えーーー?ここの仕事って言っても、、、
オヤビンの話し相手になったり、若頭と川で洗濯や釣りをしたり、マツイサンと山にシバカリに行ったりだよ?」
「川で洗濯?山で芝刈り?」
「それは雰囲気でいってみました」
「おい!」
「でも、本当にそんなかんじだよ?遊んでるみたいな。それ仕事っていうかな?」
うん、、、。
それは、仕事とは言わない…かもな。
「お金をもらってないなら仕事じゃないな」
「お給金は貰ってるよ」
「貰ってんの⁉︎」
「うん、プリンとかお菓子とか食べたいって言うとオヤビンがお金くれるんよ。1000円とか」
、、、それはお給金じゃなくてお小遣いって言うんだよ。
てか、甘やかされてるなあ
「じゃあヒョクチェには今日から仕事してもらおうかな」
マスターの言葉に
「えーーー?明日からでいいじゃん」
異議を唱えるドンヘ
「あのね?君の大切なヒョクチェは今、潜艦アパートに住んでるんだよ。その家賃を稼がないといけないの」
「潜艦アパート?」
「そうだよ。ドンヘはどうする?今までと同様にここで寝起きするか、潜艦アパートでヒョクチェと一緒に暮らすか?」
素晴らしい提案をしてくれるマスター
「あの、オンボロのアパート?ヒョク、あんなヒドイところで寝てるの?」
「お前、あのアパート知ってるの?」
「うん!コウキに見せてもらった事あるから」
「ふぅ〜ん、、、コウキにね。なんで見せてくれたの?あそこに住めって?」
「んんん、言われてない。この辺の案内をしてもらった時に通ったんだよ。中も見せてもらったけどヤバいくらいボロボロだったし」
「ボロボロでも、慣れたら悪くないよ。つってもまだ一泊しかしてないけど(笑)それに布団はマスターのお情けで新しいものを貰ったから」
「ねえ?ワタル、オレもヒョクと一緒に、あのオンボロのアパートに住みたい!オンボロだけどヒョクと一緒にいれるならオンボロでもガマンできる!」
「オンボロ、オンボロ言うんじゃねえよ。すんげえオンボロではあるけども(笑) まあ、あのオンボロのアパートでイイなら、ヒョクチェの部屋の隣を使えるようにしておくし、新しい布団も用意しておくよ」
「んんん、ヒョクと一緒の部屋でいいよ。
てか、一緒の部屋がいい」
「あ、そ」
マスターは呆れたような苦笑を浮かべてオレを見る。
その目は
【本当にお前が一緒じゃないとダメな子らしいな】
って言っているようだった。
「俺は先に行ってるから、お前はドンヘと後片付けしてからノルテに来てよ」
マスターはそう言うと先に店に戻って行ってしまった。
「マスターは本当に食事を作りに来てるだけなんだな」
「オヤビンの奥さんは大昔に死んじゃったんだって、だから姐さん的な人がいないから一番下っ端が後片付けするんだって」
「一番下っ端はコウキじゃん」
「だから、いつもはコウキとオレが二人でやってんの。でも、今日はコウキがいないからヒョクとだね」
朝食の後片付けを終えると
「じゃあ、仕事が終わったら迎えにくるから」
ドンヘにそう声をかけて、バイト先のノルテへ向かった。
つづく