えっと、手作りじゃない義理チョコって何?
それって、私があげたやつの事?
いやいや、もう勘違いはしちゃダメ、絶対。
「みもり〜」
なんだろ、話によると矢田君も本命にフラれたっぽい。それって、私にまだチャンスがあるって事かな。
「こら、みもり」
「えっ?」
「ほら、矢田君が追いかけて来てるよ」
息を切らしながら、彼が走って来た。
じゃあね、と陽子ちゃんが満面の笑みで帰って行く。
「・・・はぁはぁ。あのさ、どこから聞いてた?」
「矢田君が義理チョコをもらったって話。ごめんね、聞いちゃって」
彼が拗ねるように言った「誰からもらったか聞かないの?」
好きになった子からでしょ、そんなの聞きたくないよ。
「なぁ、俺期待してたんだけど、田村からマジチョコもらえるの」
えっ?
「そう、俺を振ったのはあなた」
「だって好きな人ができたって」
「それも、あなた。
片思いをバレたくなくて、思わず言った」
そんな嘘つく?いえ、そもそも
「あれ、本命チョコだよ」
「・・・だって『本命じゃなくてごめんね』って」
「えっ、そんな事言ってないよ。『手作りじゃない』って、あれ?勘違いした?」
矢田君は目を丸くした。
私は、ゴニョゴニョ言う。「本当はチョコレート作ったの。でも妹が勝手に、買ったのと入れ替えてバッグに入れてて。学校で気づいてショックだったよ」
今度は口をポカンと開けている。
「じゃあ、心は込もってたってかんじ?俺の勘違い?」
「うん。あのね」矢田君の驚き具合いが、なんだかうれしくて、今なら落ち着いて言える。
「私、矢田君の事が好きです。・・・お調子者に見えて真面目なとことか、冷めてるようで実は熱い所とか」
「なんか俺、美化されてない?」
私はそんな矢田君にキュンとして、首を振る。
「好きだよ。まんまの矢田あきら君が好きです」
すごい、真っ赤だ。矢田君が茹だってる。
そして、まるでロボットの様にギクシャクと近づいて来て、恐る恐る私を抱きしめた。
その瞬間、心臓が口から飛び出しそうになった。
「もうわかってると思うけど、俺、田村みもりさんが好きです」
小さな声が耳元に触れて、頭がボーっとする。
「だからこれからも、ヨ・ロ・シ・ク〜」
体を離して、照れを誤魔化すようにウインクした。
も〜何それ。好き過ぎて涙出そう。
矢田君はぎこちなく私の片手を取り指を絡めた「えっとー、なんかしゃべんなきゃ、なんか・・・」彼の心の声が漏れている。
私は片手でコートのボタンを外した。上着のポケットから赤いペンを出し、矢田君の手の甲に小さなハートを書いて赤く塗りつぶす。
この手品は私の十八番。
「私の気持ちです」そう言いながらハートを撫でる。そのまま、手の甲からスライドさせると
「えっ、なんで取れたの!?」
はい、とハートのシールを彼に渡して下手くそなウインクをした。矢田君は口をハクハクさせて、手をキュッと握り直した。
あれからほぼ1ヶ月。
俺は超幸せだ。
イチャイチャするのは恥ずかしいって、たま〜に手を繋ぐ位だけど、そこは我慢だよな。
毎日一緒に登下校して、笑いあったり癒されたり、あ〜〜みもりって可愛い〜 !
「クソっ、何ニヤニヤしてんだよ、このリア充め!」友達のタクヤが白い目で見ている。
「怒るなって。幸せを分けてあげるからさ」
俺は、自分で作ったクッキーの失敗したのをあげた。
「なんだこれ?まぁ、うん、美味いかな」
今日はホワイトデー。
帰りに、上手くできた方のクッキーを渡そう。
で、言うんだ。
「これ、俺の手作り〜」ってさ。
ヤバっ、俺またニヤニヤしてる。
「陽子ちゃん、良かったね」
親友の陽子ちゃんが、気になってた人からお菓子と手紙をもらった。
「うーん、まだ付き合うかどうか迷い中だけどねっ」とは言いつつ満更でもなさそう。
その後、恋バナをして変な風にヒートアップして、気がつくとお昼休みが終わってて、ふたりでくすくす笑いながら午後の準備をした。
今日も彼と一緒に帰る。
慣れたような慣れないような。
時々ふわふわして、頭の上に花が咲いてるかもと思う。
いつもの神社の側に来た。
「えっとーこれ、頑張って作った、いや、そんな大変じゃなかったけど。
バレンタインのお返しというか、いやお礼じゃなくてただの愛?みたいな?」矢田君が白い袋に水色のリボンをかけたプレゼントを私にくれる。
彼があまりにテンパってるから、笑いそうなのを堪えて「ありがとう」と言った。
「わぁ!美味しい!」見た目はちょっと崩れてるけど、本当に美味しい。
「あきら君もはい、あーん」ふざけて、開いた口に入れてあげる。
「うん。甘い」
「あきら君、ありがとう」もう一度お礼を言って、周りに誰もいないのを確認してから、彼に抱きつく。
あきら君も優しく抱きしめてくれる。
「みもり・・・好きだ」
うん、私もだ。
上を向いて、唇を彼の頬に寄せた。
チュッ。
「やばっ、俺夢見てる?」
その後「くそっ、可愛いって」と私の顎をクイッとあげた。
そして唇にチューっとキスされた。
色っぽい物じゃなかったけど、頭が痺れる。
あきら君は顔を離してから、親指で私の唇をそっとなぞり「ファーストキス、だよね?」嬉しそうに優しく笑った。
私は家に帰ってから、ホワイトデーって頭の中が真っ白になるからホワイトなんだろうかとトンチンカンな事を考えた。
次の日、あきら君に「ホワイトデーはさ〜もしかしたら頭の中が・・・」と同じ考えを言われ、なんだか恥ずかしくてストライプのハンカチで顔を覆ったのだった。
おしまい
🍫🍫❤🍫🎁🎀🎀
最後まで読んでくださって、ありがとうございました︎💕
サブタイトルは
『ホワイトデーに バカップル爆誕!』です。
甘〜〜い!チョコとクッキーより甘い。
書いてて自分でも、こなくそ どうしてやろう〜と思いました(*´ `*)
まぁ、こんなのもありという事で、笑っていただけたら嬉しいです😆