俺は家で机に突っ伏した。
田村にもらったチョコを見ながらボヤく。
「なんだよ『手作りじゃないけど』って・・・」
それを聞いた時、ショックだった。
『本命チョコじゃないよ』と念押しされたと思ったから。
でも綺麗な箱だしワンチャン『買ったチョコだけど 𝑳𝑶𝑽𝑬❤』って意味もあるよなと落ち着いて箱を開けた時、チョコの上にピラッと一枚のカードがあった。印刷の字。
『いつもありがとうございます』
瞬間理解した。これってやっぱりそういう事だよな。
甘いチョコを口に入れて涙を堪えたら、あいつの顔が滲んで見えた。
上手く誤魔化したつもりだったけど、俺の気持ちはバレてないよな。
思いっ切り期待したのに義理チョコかあ〜。
ここの所、あいつの側にいると気持ちがいっぱいいっぱいになって困っていた。
去年、あの元通りになったスプーンを見た途端に気づいたんだ。
田村の笑顔とか、優しい声とか、面白くて可愛くて、とにかく全部好きだって。
もしバレンタインでチョコレートをもらったら、俺も好きだって言おうって。
ーー結局、勘違いヤローだったんだけど。
下心があったのを知られたくなくて、顔を隠した。
『義理じゃなくて〜手作りが欲しかったなぁ』って冗談めかして言えば良かった。
俺馬鹿だ。
ただの友達じゃなくて、好きだって思って欲しいって心の中で拗ねた。
悲しかったし苦しかった。
そう、苦しくて逃げたんだ。
「兄ちゃん!見て見て〜!いっぱいチョコもらったよ〜」健太がもらったチョコを見せに来る。小学生のクセに手作りチョコいっぱいもらったのかよ。ケッ。
「ねえ、お兄ちゃん、その綺麗な箱は彼女からもらったの?」
健太は、幸姉ちゃんがくれた開けてない箱を指さす。
「ああ、幸姉ちゃんから、矢田家の皆さんにだって」
幸姉ちゃんは、いとこのお姉ちゃんだ。
2歳年上なんだけど俺が同じ高校にいるからって、チョコをくれた。
「やった〜これで7個目ゲットだぜ!」
はぁ〜〜⤵
休み明け、教室に入った途端つい彼を探してしまう。
肩をポンと叩かれドキっとした。
「おはよ〜みもり!」陽子ちゃんがいつもと同じ様に接してくれる。
ダメだったって事はあの日メールで言った。
それと今は何も話せないから、気持ちが落ち着いたら聞いてとも。
小さい声で「授業抜けて保健室で話しする?」と聞いてくれたけど「放課後付き合って」と屋上を指さした。
屋上には先約が三組も居た。
それぞれ二人づつ、ほぼ等間隔に立って話してる。
はいはい。バレンタインでカップルになった人達ね。
うー、羨ましすぎる〜
「他所に行こ」
体育館の裏手についた。
「・・・」「くそっ」陽子ちゃん、口悪いよ。
でもそこっ!学校の裏手でキスするの止めて。
ため息をついて結局辿り着いたのはファストフード店だった。最初からここに来れば良かったのだ。
「・・・でね『好きな子』ができたんだって言われた」
「えっ・・・みもりと良い感じだと思ったけどな」
「私も勘違いしてた・・・。バッグの中に誰かにもらったチョコが入ってたから、その人からかも」
「もらったチョコ・・・あ、それは多分違うよ。私知ってる」陽子ちゃんの話では、矢田君はいとこからもらったと友達に話していたらしい。そのいとこには彼氏もいると。
「そうなの?でも、私はやっぱり片思いなんだよ。友達でもいられなかった」
「・・・」陽子ちゃんは何か言いたそうだったけど、その後はずっと私の話を聞いてくれて、慰めてくれた。
小一時間程してから、そろそろ帰ろうと2階から1階に降りる。
1階の奥から、私の好きな人の声が聞こえた。
「・・・でさぁ、義理チョコだったわけよ!わかる?俺の気持ち」
矢田君だ。
「はいはい。フラれたわけね」友達が慰めてる。
私は陽子ちゃんと階段の踊り場まで慌てて戻った。
「ハッキリ言うなよ。てか、義理チョコでも
せめて手作りなら希望が持てたはず、うん」
「くれるだけ良いだろ。ありがとうって言って、さりげなくハグすれば良かったのに」
矢田君の大きなため息が聞こえる。
「そんな事したらますますチャラいだけの男でしょ〜よ。俺はハートブレイクでショックで、逃げ出したかったわけ。でさ・・・」
後の声が小さくて聞こえない。
陽子ちゃんが身を乗り出した。
「あ」「えっ?」
見つかった?
私も矢田君と目が合ってしまう。
「・・・まじかよ」
「えっと、えーっと、ごめんねっ」私は猛ダッシュで外に出た。
つづく
🍔🍟🍔🍟🍫🍫🍫
今日も読んで下さってありがとうございます❤
次回で終わりです。
考えると屋上に用事がある人はいっぱいいますよね。友達との悩み相談、屋上からの景色を見たり絵を描いたり、洗濯したり将棋したり😁、楽器演奏の練習とか・・・他にも色々。
調子っぱずれのトランペットを聴きながら、告白なんていうのもあるかな😳
パ〜〜ポ〜♪「好きですっ!」ブ〜ブ〜⤵😆