もうすぐホワイトデーですね。
そして、調子に乗ってアオハルもどきの短編を書いてみました。
一応モデルはいますが、あまり似てません。
いつもの如く長いので3回に分けました。
読んでもらえたら嬉しいです︎💕
『バレンタインの次は、』
バレンタインは見事に玉砕した。
茶髪でチャラ男なんだけど思いやりのある人。
矢田あきら君。
「チョリース!」
話題が豊富で、時々下校が一緒になって楽しかった。
友達は多いみたいだけど、私が一番近くにいるって自惚れてた。
あの日も一緒に帰ったんだけど。
「矢田君・・・あのね、これチョコレート。
・・・手作りじゃないけど」
ドキドキしながら、リボンの掛かったそれを差し出す。
「おっ、サンキュ」矢田君は一瞬固まってから、照れる事も無く受け取ってくれた。
「どれどれ〜おっ、美味そう〜」
高校から少し離れた神社の近く。人が居ないとは言えこんな所で箱を開けられるとは思わず、焦る。
「ん!うわ、なにこれ、超美味しいんですけど〜」
瞳がうるうるしている。
「ほら、田村も」まさかのお口あーん?と思ったら、手のひらに乗せられた四角いチョコレート。
期待していたのが顔に出ない様に、ぱくっと食べる。「あ、美味しい」
「だよな〜」
「あれ?矢田君にあげたのに、私が食べちゃったよ」
「ははっ、もっと食べる?」
「えー」何か違うと首を捻ると、矢田君は大事そうにチョコレートをサブバッグにしまった。
その時見えてしまった。
彼のバッグの中には綺麗なリボンの掛かった箱がもうひとつ。
そして背中を見せて歩き出す。
「あのさ、田村。田村みもり」なぜかフルネームで呼ばれてドキッとする。
「は、はい?」
こちらに顔を向けない矢田君。
「俺、もう田村とは一緒に帰らない」
心臓がぎゅっと縮まった。
どうして?⋯声が出ない。
「俺、好きな子ができたから」
えっ、そんな・・・そうなの?気づかなかった。
私はここで『そうなんだ。上手くいくと良いね』と軽く返事すれば良かったのに出来なかった。
平気なフリをすれば、少なくとも友達のままではいられたかもしれないのに。
彼はこちらを向かない。
肩越しにぺこっと頭を下げ「チョコ、ありがとな」と言って、スタスタと帰って行った。
言えなかったし、言わせてもらえなかった。
『私、矢田君の事が好きなの』
目を見てちゃんと言うつもりだったのに。
その夜は泣いた。
わんわん泣いた。
晩御飯を少し食べて部屋に引きこもった私の状況に、家族は何があったか直ぐに勘づいたようだった。
いつも軽くてさ、時々意地悪で、八方美人で⋯
彼の短所なんかいっぱい出てくる。
でも、やっぱり結局、好きなんだ。
そして、こんなにこんなに好きなのに、彼は私の事、友達としか思ってないんだ。
泣き疲れた頃、ふっと鏡が見えて明日休みで良かったと思った。
目がパンパンに腫れていた。
田村みもり。
秋の席替えで隣になって、妙に気が合った。
話していくうちに、あいつの引き出しが多いのに気づいた。
なんでも知ってるという訳では無さそうだけど、ふっと出す変な発言にツボった。
たまたま帰りが一緒になった日、趣味の話をした。
「私、手品が好きなんだ、見るのもするの
「へぇ、誰かに見せんの?」
「家族とか友達に。小ネタばっかりだけど」
「えっ、じゃあ俺にも見せてよ」
その次の週だったか、放課後に教壇の方から手招きされた。
俺の他にあいつの友達と俺の友達がナニナニ?と近寄る。
「これは古代から伝わるマジックです」と徐ろにストライプのハンカチを取り出し、「この縦線が〜」クシャクシャと丸めて「横線になりました〜」なんだよ、それお笑いマジシャンのネタじゃん。みんな苦笑する。
続いて、長いロープを切ったと思ったら繋がってて、多分市販品なんだろうけどスムーズで上手かった。
そして、最後にと赤い布を教壇の上に広げた。
布をゆっくり持ち上げると重そうな花瓶が現れた。お〜。
胸に挿していた赤い薔薇を抜いて、その花瓶に入れる。
「バラよバラよ踊っておくれ」指で魔法をかけると薔薇だけじゃなくて、花瓶ごと浮き上がった。「あれ?花瓶まで浮いた!こんなはずじゃなかったのに〜!」花瓶がゆっくり宙を舞っている。
「わ〜!」みんなで拍手して盛り上がった。
いつの間にか周りに人が集まっていた。
「えっ、どうやってるの?」「すご〜い」
そして田村が花瓶を捕まえ、花びらだけをクシャクシャと掴むと赤い薔薇は白い薔薇になった。友達に「はいっ」と花を渡している。
「お〜!」「やるね〜!」
あいつは胸に手をやり、お辞儀した。
「ありがとうございました〜」
また大きな拍手が起こり「えっ、もっと見たい」「またやってね」と声が上がった。
田村の友達が「腕上げたねぇ〜」と肩を抱いている。
「すっげーな。見せてくれてありがとう!」
面白かった。
そして、皆から拍手を浴びる田村の照れくさそうな笑顔に ドキッとした。
この子結構可愛いかも?
あれは冬休み前の半日授業の日だった。
タイミングが合ったので、一緒に下校した。
途中に通る小学校の近くで、二人の女の子が蓋付きの側溝を覗いていた。
「どうしたの?」
「鍵を落っことしちゃって・・・」
ひとりの女の子は泣きそうで、もうひとりは「先生を呼んで来るよ」と言っている。
田村は「そうだね、先生に・・・あ、でも待って。この側溝ってお水は流れてないんだね」と側溝の隙間を覗く。「浅いし、いけるかも・・・」とブツブツ言ってる。
そしてポケットから何か小さなコイルに巻いたワイヤー?みたいな物を取り出した。
そのワイヤーの先には黒い小さな丸が付いている。
「おーい、鍵やーい、釣れろ〜」と言いながら、スルスルとそのワイヤーを側溝の中に下ろしていく。
「うん、手応えあり」ゆっくりワイヤーを引き上げる田村。
熊のストラップが付いた鍵が持ち上がった。
お〜。
「わぁ!ありがとう!」
「お姉さん、ありがとう!すごい!」
「お役に立てて良かった。今度から気をつけてね」
また歩き出しながら気になっている事を聞く。
「そのワイヤーみたいなの何?」
「ふっふっ〜、これはね手品の道具なの。柔らかいワイヤーに磁石を括り付けてあるんだ。なかなか役に立つのよ。カードを近づけないように注意しなきゃいけないけどね」
「へ〜。いつも持ち歩いてるの?」
「まぁね」ドヤ顔で、髪を肩からかきあげる仕草をした。
「じゃあさ、良い事をした田村にアイスを奢ってあげよう」
「えっ、いいの?」
コンビニのイートインでアイスの蓋を開ける。
「あれ?スプーンが折れちゃった」
プラスチックスプーンがポキっと曲がっている。
「まじかよ。もう一本もらってこようか」俺がレジに行こうとすると
「良いよ、こうすれば・・・」折れた辺りを擦っている「ほら、直った」って、スプーンは元に戻った。
俺は吹き出す。「どうやったの?」
「へへっ、内緒」
こいつ、手品のタネをどんだけ持ち歩いてるんだよ。
胸ポケットとかスカートとか?
ちょっと想像しだして、あ、俺変態かもと思考を急停止させた。
玉砕するバレンタインの前日だった。
私は頑張って作ったチョコレートをサブバッグに入れた。
中学生の妹の ひよりがそれを見ていた。
「良いな〜手作り。私、チョコレートを爆発させちゃったんだ」
私が帰って来る前に作っていたのは知ってるけど失敗したんだね。
「お姉ちゃ〜ん〜それ半分もらったらだめ?」
「え〜ダメ。これは私が人に渡すために作ったんだから、ひよりは作り直すか、買ったチョコレートで我慢しなきゃ」
「じゃあ、一緒に買いに行ってくれる?」
そうして、ひよりとスーパーの催事場に行った。
「スーパーでも色んなのがあるんだね!」
二人ではしゃいで、ひよりは自分のお小遣いで綺麗にラッピングされたトリュフチョコを買っていた。
ところが・・・!
次の日、私が学校に着いてバッグを開くとそこには、ひよりが買ったあのチョコの箱が入っていた。
「ぐぬぬぬぬ・・・あいつ取り替えたなぁ〜」こめかみに青筋を立て、涙目になった私を陽子ちゃんが「ど、どうしたの?」と心配してくれる。
「陽子ちゃ〜ん!」カクカクシカジカ!
「そ、それは可哀想に・・・」
プンプン!エーン!
「そっか、そっか。せっかく作ったのにね」
ガックリ⤵
「うーん、一生懸命作ったのが渡せなくて可哀想だけど、あげないより良いと思うよ。思い切って渡したらどうかな?」
それで、帰りに渡した。
そして、振られた。
🎁🎀💝🎁🎀💝🎀💝
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます💓
長っ。多少は削りました。
矢田君の、チャラいけど実は・・・というギャップをもう少し表現したかったなー。
後2回続きます。
お付き合いくださいましたら、喜びの舞を踊ります✨