『せどり男爵数奇譚』を読んで | ほぼテンダネスのブログ

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肩がこらなくて、でも易し過ぎない本を読もうと(そればっかり)『せどり男爵数奇譚』を借りました。帯に「『ビブリア古書堂の事件手帖』に登場!」とあったのも気になって。
とても面白かったです。



『ビブリア古書堂の事件手帖』はまだ6巻しか読んでないのですが、一般人向けで面白いです。


『ビブリア古書堂の事件手帖』は、珠玉の文学作品(手塚漫画なども)が沢山出てきて、物語とリンクします。ビブリアに出てくる人物と、扱われている文学作品の登場人物の生い立ちが似ていたり、
主人公達に起きる事件のヒントが、文学作品の中にあったり。
主人公の五浦大輔が、昔のトラウマで活字を読めない、しかし本は読みたいという設定が、あまりない設定で好きです。
テレビで実写化された時のAKIRAの大輔、好きだったわ。
ビブリア古書堂の店長、栞子さんは人見知りだし普通の生活は送れない感じですが、本の事なら情熱的でなんでも知っています。
ほぼテンは、地味で清楚でいかにも文学好きな栞子さんが好きなのですが、美人で胸が大きいというおまけ?も意外性を狙って?て好きですw

さて『せどり男爵数奇譚』に戻ります。
「せどり」は古本好きの方ならご存知だと思いますが、本文では
『古本屋仲間で、厭がられる商売の仕方に、新装開店の店へ行って、必要な古本だけを買うのを、俗に「抜く」とか「せどり」と云うんですよね・・・。』とあります。
つまり、A店がその本の価値に気づかず安い値段を付けた品をせどり屋は買い、すぐB店に行って高く売ると。目利きじゃないと出来ない仕事です。
作者(と言ってもいいかも)は、銀座のバーで再会した せどり屋の笠井菊哉から色々な出来事を聞く。笠井は、せどりが得意だったので周りから せどり男爵と呼ばれていた。
笠井が、価値のある本を探し求める人生をおくるきっかけとなる出来事があったのは、
15歳の時だった。ある老人が、古本露店のゴミ山から1冊の和綴本を見つけてブルブル震え、店員にお金を払った途端、狂ったように走りだした 。それは、和本収集家の南順之介老人。その人に会った事が笠井の将来を決めたのだ。
最初は、老人の執念に感心していただけだった笠井。
しかし順之介老人は言う。「三銭で買えたものを わしは十銭だした。〜〜・・・(けれど実は)この『京すずめ』は六冊揃う(すでに5冊持っている)と、〜・・・店頭では、四百円の値がつくのです。」
これって「なんでも鑑定団」思い出すなぁ。
笠井は、素人だとわからない古本の価値への興味が一気に湧く。
そして収集熱が上がったダメ押しが「ワジルシ」を見ちゃった事。はい、子供は絶対見ちゃだめなやつです。
ほぼテンは箱根の岡田美術館で数枚見ました。おったまげーです。
(岡田美術館、広いですね♪歩き疲れたので会館前の足湯に浸かりました)


笠井は和本の歴史に詳しくなり、漢籍を白文で素読し、木版の崩し仮名文字をすらすら読めるようになる。南老人なみの情熱を燃やすのです。
大学生の時にあるきっかけで、百冊揃ってこそ価値のある『謡曲百番』を集め始める。残り一冊というところで集まらず、十二年たってから見つける。手に入れるためにちょっとした犠牲が・・・。

『せどり男爵数奇譚』は六章に分かれているのですが
「色模様一気通貫」「半狂乱三色同順」「春朧夜嶺上開花」など章ごとに麻雀の役名が付いています。(役満懐かしいわ)
面白い題名ですが、なぜ麻雀?と不思議に思っていました。でも途中まで読んで思い当たりました。(あくまで、ほぼテンの考えですが)せどり屋って博識ってだけでなく、山師(本の価値を知らない人から激安く買う)だったりギャンブラー(客のニーズを捉え思い切って高く売る)だったりするんじゃないかな、だからかと。
それまで、ほぼテンが持っていた
古本屋さん=知的な先生、というイメージが変わりました。
作品中の古本屋さんは、まず経営に必要な計算高さが見られます。そして、本に対する愛情と執着、人によっては狂人じみたこだわりがあります(マニアックとも言う)。
「好き」が「仕事」になったパターンではないかしら。

神田の本屋通りをウロウロした事がありますが、自分の興味がないものには全く目が行きません。せどり屋さんなら棚の隅々まで目がいくんだろうな。ある年の古本市で、一冊の本を手に取って買おうかどうしようか迷っていたら「その本あまり面白くないよ。止めといた方がいい」と声をかけてくださった方がいました。いかにも古本に精通してそうな人だったので、思わず素直に本棚へ戻しましたw

またまた脱線しましたが・・・
『せどり男爵数奇譚』はどの章も面白いです。
しかし、なんと言っても最後が超ショッキングでした。グロいのが大っ嫌いな ほぼテンですが、それを飛び越えて驚きました。大袈裟かと思われたら恥ずかしいのですけれど、他の話とも考え合わせて実話だと考えると大袈裟ではないと思います。
この本をこれから読まれる方は以下読まないで下さい。


六章『水無月十三么九』は本の装丁の話です。
笠井の知り合い、佐渡さんは、若い頃に山羊の皮で装丁された本を見てから、変わった装丁にハマった。
自分で作るようになり、最初は紺ガスリなどの布装丁から始めた。年を経てゴム、樹脂などの材料を使うようになる。しかしスランプに陥り、硝子、畳表などするも上手くいかない。
そして恐ろしい物に・・・
それは人間の皮・・・。
ある客の依頼で、生きた人間の皮を手に入れ本を装丁した佐渡。
その時の衝撃が忘れられず、事故にあった人が落とした腕の皮を求めたり、詳しく書きませんが亡くなった方の頭皮とか・・・あらゆる部位を求める。
本の題名や内容に合わせて使う部位を変える。
目以外あらゆる!です。本文中では、佐渡自身の急所も使う予定でした。
また、その皮の なめし方がグロい。
噛むんです・・・( ×m×)ゲロゲロ
もうね、狂人。けれど、笠井も類友だから笑って面白がってる。

「あたしみたいに、一冊の本を、とことん探し廻る阿呆もおれば、一冊の本のために人殺しする者もあるんですな。」

まったく、突き抜けている人達の行動は考えつかないですね。びっくりしました。