今日は5月1日。
ちょうど一年前に今上天皇が即位され、元号が令和となりましたね
ついこの間のことのように思いますが、もう一年が経ったとは!
この即位の日にちなんで「民のかまど」の逸話をご紹介いたします。
聖帝とも称される第16代仁徳天皇の御代
天皇は高台に登り国を見渡してこう言いました。
「ここから国を望むと全く釜戸の煙が出ていない。民は炊飯できないほど貧しいのではないか。五穀が実らず民は困窮している。都がこの有様なのだから地方はもっとひどいだろう」
「これから3年間、全ての民の課役(課税と労役)を免除し、民の苦しみを取り除くのだ」
と詔され、この日から天皇はボロボロになるまで衣服や靴を新調せず、食事は質素にされ、宮殿の塀や壁が崩れても修理せず、風雨が隙間に入って衣服を濡らしました。破れた屋根から星々が床を照らしました。
季節が巡り、天皇が再び高台の上から国を望むと、国中に釜戸の煙が上っており、その様子をご覧になった天皇は側にいた皇后に
「朕は既に豊かになった。憂いはない」
と言いました。
皇后が
「どうして豊かになったと言えるのですか」
と問うと
「炊飯の煙が国に満ちている。民は豊かになっている」
皇后は
「宮殿は壊れ塀は崩れ服は濡れるというのに何が豊かになったというのですか」
天皇曰く
「天下を治める君主が立つのは民のため。君主とは民があっての存在なのだ。政(まつりごと)は民を本としなければならない。古の聖王は民が一人でも飢える時は自らを責めたという。民が貧しければ朕もまた貧しい。今は民が富んでいるのだから、朕も富んだことになるのだ」
と言いました。
さらに6年の歳月が過ぎ
「民は豊かになった」
と判断された天皇はようやく課役を命じ、宮殿を再築しました。
天皇に感謝した民は誰からも強制されることなく、老いも若きも協力して材木や土籠を背負い、昼夜をいとわず競って働き、程なくして宮殿が完成しました。
こうして仁徳天皇の治世は讃えられ、聖帝(ひじりのみかど)の世といわれたと伝わります。
ちなみに
(古代)天皇が高台から国土を望み見る行為を
『国見』
といいます。
この「民のかまど」の逸話は
民を思いやる徳の政治
という理想の君主による理想の政治の事例として語り継がれています。
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