子どもの小遣いでは1度にたくさんは買えない、1袋20円の仮面ライダースナック。
お金があれば自分で1袋買い、母と買い物に行けばまた1袋ねだりました。そのうち何も言わなくても、母は買ってきてくれるようになりました。
とにかく1日でも早く、1枚でも多くの新カードが欲しくてたまらない毎日でした。
僕の家から歩いて数10秒の所にパンやお菓子を売る店がありました。
おじいちゃんが経営する、定番の品をず~っと並べる地味な個人店。そこにライダースナックを見つけた時は驚きました。このエピソードだけでも、どれだけスナックの人気が高かったかがわかります。
引き戸を開けて中に入ってもたいていは無人で、「すいませ~ん」と呼ぶと奥からおじいちゃんがやって来る昭和の店。僕には懺悔をしなければならないことがあります。
おじいちゃんがいない間にカードを1枚、盗んだことがあるのです。
出来心とは言いません。悪意を持って盗みました!
家で開けると、持っていない1枚が出ました。
正直うれしかった。でもやっぱり当時も今も複雑な思いがあります。
ごめんなさい! おじいちゃん。
店で盗んだカードはその後もダブって出ることなく、貴重なコレクションとしてずっとアルバムに収まっていました。
正義の味方を応援しながら、悪の道に入ってしまったこと反省しています。
そしてここでは正しくないことですけど、感謝もしています。
ライダーカードは日本でのカードコレクションの始まりとなりました。
1980年、隣に建った新築への引っ越しを機に、僕はアルバムごとカードを古本屋に売り払ってしまいました。あの興奮も興味もまったくなくなっており、何も考えずに大量のマンガ単行本と共に処分したのです。
間もなくそれらは愛好者に高額で取引されるアイテムとなりました。あと数年持っていれば買い取り価格も跳ね上がっていたはずです。ちょっとだけ残念な気持ちはありましたけど、大人になるための通過儀礼だと思えました。
人の子の親になった僕は、息子がポケモンや遊戯王のカード集めに一所懸命になっているのを微笑ましく眺めました。やはり、お金はだいぶ遣ったみたいでしたけど(苦笑)。
カルビーはスナックを「仮面ライダーチップス」として1999年に再発売、当然カードが付いていました。僕も何個か買いましたけど、このときはパッケージの表に粘着テープで張り付けられた小袋を剥がし、カードを取り出すスタイルに変わっていました。
手から手へ。
お菓子屋さんから劇場へ。場所は変わっても50年ぶりに人の手から受け取った仮面ライダーカードに思わず僕は心を動かされ、こぼれる想い出を綴りました。
ふんわり静かに・・・。