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■日本はソマリア沖に海自艦艇を派遣すべきだ


 ソマリア沖では、海賊の脅威が大きくなっており、諸外国が最近になって次々に軍艦を派遣しています。


 ・2005年1月~2006年3月にソマリア沿岸海域で発生した海賊行為の地図(国連衛星プロジェクト)


 ソマリア沿岸海賊(05年1月から翌年3月)


 また、国連安保理もソマリア暫定政府の承諾があれば、ソマリア領海内への外国艦船派遣を認める決議を出し、同国暫定政府のユスフ大統領も、ソマリア領海内での武力行使を認めています。


【ソマリア沖:EU有志国、海賊摘発作戦へ】  (毎日新聞 10月7日)


 欧州連合(EU、加盟27カ国)の有志国が、東アフリカ・ソマリア沖で出没する海賊の摘発のため、11月にも現場海域で軍事作戦を開始する方針を固めた。摘発作戦には少なくとも8~9カ国が参加する見通しで、現場付近に展開中の米海軍や、北大西洋条約機構(NATO)の艦船と連携する。
 8月初旬、EU議長国フランスのモラン国防相がスペインのチャコン国防相と軍事作戦の開始で原則合意した。さらにEUは9月18日、ブリュッセルに海賊対策のための調整事務所を設置し、加盟国の作戦行動のすり合わせに着手した。
 モラン国防相は今月2日、フランスで開かれたEU非公式国防相会議後の会見で、フランス、スペインのほかベルギー、ドイツ、キプロス、オランダ、リトアニア、スウェーデンが作戦参加の意向を表明したと述べた。またフランスはイギリスに対し、同国内に作戦司令部を設けるよう打診している。今後、11月10日にブリュッセルで開かれるEU公式国防相会議に向け、作戦参加の艦船数、作戦計画と日程、NATOとの連携の詳細などを詰める。
 AP通信によると、ソマリア沖海域では今年、62隻の船舶が襲撃された。うち26隻が海賊に乗っ取られ、12隻(乗組員計約200人)が捕らわれたままだという。9月下旬には戦車を積んだウクライナの貨物船が乗っ取られ、米海軍が監視体制をとっている。
 海賊事件の多発を受け国連安保理は今年6月、加盟国に対し、ソマリア暫定政府の承諾を条件に同国領海への艦船派遣を認める決議を採択している。暫定政府のユスフ大統領は今月1日、外国艦船に海賊に対する武力行使を認めると述べた。


【NATO、ソマリアに艦船】  (産経新聞 10月10日)


 北大西洋条約機構(NATO)の国防相理事会は9日、海賊による船舶への被害が深刻化しているソマリア沖に艦船を派遣し、警戒に当たることを決めた。国連安全保障理事会と世界食糧計画(WFP)が国際社会に協力を求めていた。
 NATO報道官によると、NATO加盟国は2週間以内に計7隻の艦船を派遣し、主にWFPの食料輸送船を警護するほか、周辺海域のパトロールを行う。
(共同)



 日本関係船舶も、被害を被っています。


【ソマリア沖で海賊行為が頻発 1カ月では7隻】  (産経新聞 8月21日)


 マレーシアの国際海事局(IMB)海賊情報センターに入った連絡によると、アフリカ東部ソマリア沖のアデン湾で21日、イランの貨物船と、日本の海運会社が管理するパナマ船籍のタンカー、さらにドイツの企業が管理する貨物船の計3隻が海賊に相次いで乗っ取られた。
 同タンカーを管理する興洋海運(東京都港区)によると、乗っ取られたのは、ケミカルタンカー「アイリーン」(7373トン)。日本時間21日午後1時50分ごろ、船長から「15、16人の海賊が乗り込んできてソマリアへ向かうよう命じられた」との連絡があったのが最後だという。


【日本関係船 海賊から今度は逃げ切る】  (産経新聞 8月23日)


 マレーシアの国際海事局(IMB)海賊情報センターに入った連絡によると、アフリカ東部ソマリア沖のアデン湾で23日、日本企業が関係するパナマ船籍の貨物船が海賊に襲われ、発砲されるなど約1時間追尾されたが、逃げ切ったという。20人の乗組員にもけがはなかった。同海域では先日、日本企業が関係する船など4隻が乗っ取られている。


【複数の「被弾」確認 海賊襲撃の日本関係貨物船】  (産経新聞 8月25日)



 23日にアフリカ東部ソマリア沖のアデン湾で日本の企業が運航する貨物船が海賊に襲われた事件で、同船が船橋に被弾していたことが25日わかった。
 海賊の襲撃を受けたのはパナマ船籍の貨物船「AIZU」(1万4103トン)。鋼材などを積んでシンガポールからサウジアラビアに向かう途中、日本時間の23日午後5時50分ごろ、アデン湾をイエメン寄りに航行中、高速船2隻の追跡を受けて発砲されたという。



 こうした動きの中で、実際に被害を受けている日本でも、艦艇の派遣に関する新法制定の動きが、にわかに活発となってきました。


【首相、海自派遣に前向き…ソマリア周辺の海賊対策で】  (読売新聞 10月17日)


 麻生首相は17日の衆院テロ防止特別委員会で、アフリカのソマリア周辺海域で頻発する海賊対策海上自衛隊艦艇を活用するための法整備を前向きに検討する考えを明らかにした。
 民主党の長島昭久氏らの質問に、「検討する用意は十分ある」と答弁した。
 これに関連し、首相は同日夜、首相官邸で記者団に対し、自民党に与野党で具体策を検討するよう指示したことも明らかにした。艦艇派遣のほか、P3C哨戒機による洋上監視などが検討課題になると見られる。
 ただ、自衛隊の活用には、武器使用基準の緩和が必要となり、憲法解釈が議論になる可能性がある。
 公明党の太田代表は17日、「勉強が必要だ」と慎重姿勢を示した。


【海賊対策に自衛隊 首相、ソマリア沖派遣に新法検討】  (朝日新聞 10月17日)


 麻生首相は17日の衆院テロ対策特別委員会で、東アフリカのソマリア沖で横行している海賊対策のための新法を検討する意向を明らかにした。具体的には、海上自衛隊の艦艇による商船護衛や哨戒機P3Cによる監視活動などが浮上しそうだ。政府はインド洋での給油活動に続く国際貢献策として、野党の協力を得て実現したい考えだ。
 首相は、ソマリア沖での海自の国際貢献を求めた長島昭久氏(民主党)らに対し「海賊行為は新たな脅威になりつつある。法制上どういうものがあるか検討したい」と述べた。その上で「一つの艦船が航行するだけで海賊行為の抑止力が働きうる。与野党で検討する用意は十分ある」と、野党側に協力を呼びかけた。
 国連安全保障理事会は6月、ソマリア領海内での海賊取り締まりを認める決議を採択。今月7日には、関係国に無期限の海賊制圧を求める決議も採択した。日本は両方の決議の共同提案国に加わった。インド洋での給油支援以外にも国際貢献に積極姿勢を示す狙いがある。アフガニスタン本土への自衛隊派遣が困難という事情も背景に、政府内でかねて海賊対策の可能性を探っていた。
 具体的には▽海自艦船が対象海域を航行する商船を護衛▽哨戒機が海賊の動向を監視▽後方支援として他国の海賊対策船に給油――などの案が検討課題となりそうだ。
 ソマリア沖周辺では、すでにテロ対策の一環として米国を中心とする多国籍軍が海上阻止活動を実施。さらに安保理決議を受けて欧州連合(EU)の有志国が海軍艦船を派遣する計画を立てている。
 問題は、自衛隊が海賊に対して実力を行使した場合、憲法が禁じる「武力行使」に抵触しかねないことだ。海自艦船が海賊から攻撃を受けた場合の対応について、首相は「軍艦に向かって襲ってくる海賊船はあまり聞いたことがない」と述べるにとどまり、突っ込んだ議論を避けた。また、反政府勢力の海賊船が外国船を攻撃している現場に海自艦船が駆けつけて応戦することができなければ、海自が他国海軍と海域を分担して警備する形での協力が難しくなる可能性もある。
 防衛省によると、ソマリア沖やアデン湾では、今年に入り未遂も含め66件の海賊事件が発生している。4月には日本郵船の大型原油タンカー「高山」が襲撃を受け、8月にも日本企業が管理するタンカーが海賊に約20日間乗っ取られる事件が起きた。
(山田明宏、金子桂一)



 朝日新聞の記事では、「自衛隊が海賊に対して実力を行使した場合、憲法が禁じる「武力行使」に抵触しかねない」とありますが、これは諸種の現行法の法解釈上、「抵触しない」方が正しいと思います。


 朝日新聞の記者がどう解釈しているのかは定かではありませんが、日本国憲法は、個別的自衛権などを認めており、武力行使自体を否定しているものではありません。


 例えば、自衛隊法に定められている「海上警備行動」について、自衛隊法第82条において言明があります。

 海上警備行動の際の自衛隊の武器使用権限については、警察官職務執行法第7条、海上保安庁法第16条、第17条第1項、第18条、の規定に準じます。

 すなわち、以下の通りです。


『警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。』(警察官職務執行法第7条)
『海上保安官は、第5条第2号に掲げる職務を行うため若しくは犯人を逮捕するに当たり、又は非常事変に際し、必要があるときは、付近にある人及び船舶に対し、協力を求めることができる。』(海上保安庁法第16条


『海上保安官は、その職務を行うため必要があるときは、船長又は船長に代わつて船舶を指揮する者に対し、法令により船舶に備え置くべき書類の提出を命じ、船舶の同一性、船籍港、船長の氏名、直前の出発港又は出発地、目的港又は目的地、積荷の性質又は積荷の有無その他船舶、積荷及び航海に関し重要と認める事項を確かめるため船舶の進行を停止させて立入検査をし、又は乗組員及び旅客に対しその職務を行うために必要な質問をすることができる。』(海上保安庁法第17条第1項


『(第1項)
海上保安官は、海上における犯罪が正に行われようとするのを認めた場合又は天災事変、海難、工作物の損壊、危険物の爆発等危険な事態がある場合であつて、人の生命若しくは身体に危険が及び、又は財産に重大な損害が及ぶおそれがあり、かつ、急を要するときは、他の法令に定めのあるもののほか、次に掲げる措置を講ずることができる。
1.船舶の進行を開始させ、停止させ、又はその出発を差し止めること。
2.航路を変更させ、又は船舶を指定する場所に移動させること。
3.乗組員、旅客その他船内にある者(以下「乗組員等」という。)を下船させ、又はその下船を制限し、若しくは禁止すること。
4.積荷を陸揚げさせ、又はその陸揚げを制限し、若しくは禁止すること。
5.他船又は陸地との交通を制限し、又は禁止すること。
6.前各号に掲げる措置のほか、海上における人の生命若しくは身体に対する危険又は財産に対する重大な損害を及ぼすおそれがある行為を制止すること。
(第2項)
海上保安官は、船舶の外観、航海の態様、乗組員等の異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して、海上における犯罪が行われることが明らかであると認められる場合その他海上における公共の秩序が著しく乱されるおそれがあると認められる場合であつて、他に適当な手段がないと認められるときは、前項第1号又は第2号に掲げる措置を講ずることができる。』(海上保安庁法第18条


 海上警備行動と近似した法整備で、その法の執行範囲を拡げるだけで十分に、海外での海賊行為に対して有効な手立てを講じることが出来うる法律が制定できると思います。



 同様に朝日新聞が指摘する、「反政府勢力の海賊船が外国船を攻撃している現場に海自艦船が駆けつけて応戦することができなければ、海自が他国海軍と海域を分担して警備する形での協力が難しくなる可能性」についても、参考法案として、PKO法(国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律)第24条には、以下のような条文があります。


『派遣先国において国際平和協力業務に従事する隊員は、自己又は自己と共に現場に所在する他の隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で、当該小型武器を使用することができる。』(第24条)


 この法律の「当該小火器」という部分を艦艇の装備に準じたものとし、他国艦艇への救援に際して当該艦艇を「自己の管理の下に入ったもの」とすれば、法解釈上の問題は解決出来そうな気がします。


 この他国艦艇への救援について、「集団的自衛権の行使で違憲だ」と主張する方も居るでしょうが、私は自衛権に個別的も集団的も無と考えています。

 そのあたりの法解釈をどうするかは、政府の判断に拠るでしょう。


 その他に、装備面や、遠方での長期的活動となるため、インド洋派遣とあわせ、艦艇ローテーションの調整などが必要となってきます。


 このあたりを国会でどの程度まで突っ込んで議論していただけるかは、与野党の無意味な政策対立が無ければ、法整備の話が民主党の側から出てきたことを鑑みれば、十分に可能だと思います。


 勿論この国益に直結する法案を、政争の具とする愚挙は、絶対に慎んでいただきたいものです。

 与野党が一体となって、日本と言う国家の国益を考えて行動してくれることを、国民の一人として期待しています。



 【参考HP】


 日本国外務省HP 『国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律』
 日本国海上保安庁HP 『海賊及び海上武装強盗情報』





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■対馬沖に中国フリゲートが出現

【長崎沖に中国の新型軍艦】  (産経新聞 10月17日)


海上自衛隊が撮影した「周山」081017


 17日午後1時ごろ、長崎県対馬市の北北西沖約16キロの公海上で、中国海軍の新型フリゲート艦と補給艦が航行しているのを海上自衛隊のP3C哨戒機が確認した。
 防衛省によると、ジャンカイII級フリゲート艦(3900トン)で航行目的は不明。2007年に就役し4隻が稼働中とされる。海自が06年12月に沖縄本島沖で確認したジャンカイより、搭載ミサイル性能が向上しているという。



 海自が撮影した航空写真に写る、艦体に示された艦番号より、「江凱Ⅱ/周山」級(054A型)フリゲートの1番艦、「周山」であることが確認できます。
 「周山」は、産経新聞記事中には2007年就役とありますが、2007年には公試運転に入っただけです。
 実際には今年1月に就役したばかりで、まだ試験や慣熟訓練などで、本格的な初期作戦能力の獲得には至っていない気がします。


 ・「周山」

 中国海軍フリゲート「周山」


 2000年前後までは、中国海軍の訓練海域は、黄海、東シナ海・南シナ海沿岸であったのが、近年は、中国海軍の第二列島線志向が強くなっていることを背景に、外洋海域にまで進出して示威的な訓練・演習を行うことがあります。


 ・第一、第二列島線

 第一、第二列島線


 中国海軍は、99年以降複数回に渡り、尖閣諸島北方の海域において、日本のEEZを侵犯する形で演習を行っています。



 ■明らかな示威行動


 今回、「周山」が現れた対馬北北西(対馬海峡西水道)は、日本が独自に指定する特定海域に含まれます。
 特定海域(宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道・同海峡(朝鮮海峡)西水道、大隅海峡の5つの海峡)は、領海の幅が通常の12海里(22.2km)から3海里(5.5km)に狭められています。
 ですので、本来22kmであるはずの領海は、対馬海峡においては5.5kmに制限され、故に沿岸から16kmという距離でも、『一応』、公海扱いなのです。


 対馬海峡西水道自体が最狭部の幅約50kmであり、対馬沿岸から16kmという距離に「周山」が近づいたことは何気ない航行のように思えますが、相手国を刺激するか挑発する意図がない限り、国家の延長である軍艦がわざわざ国際海域の沿岸に程近い場所を通過しないことが、通常の慣例ではないかと思います。


 補給艦も伴っていたということもあり、訓練かロシア向けの航海だと思うのですが、それにしても沿岸に近づき過ぎです。
 明らかな示威行動だ思います。


 このような軍事国家が日本のすぐ隣にあって、極東の軍事情勢・日本の安全保障を脅かし続けていることを、決して忘れてはいけません。



 【参考HP】


 日本周辺国の軍事兵器
 SinoDefence.com



 【参考書籍】


中国の戦略的海洋進出

平松 茂雄







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■北テロ国家指定解除:日本独自の制裁を強化せよ

 北朝鮮による拉致被害者の一部が日本に帰国してから、今日で6年となります。

 アメリカによる北朝鮮のテロ支援国家指定解除には、深い失望を禁じえません。



【テロ支援国家指定を解除 米政府】  (産経新聞 10月12日)


 米政府は11日午前(日本時間12日未明)、北朝鮮へのテロ支援国家指定の解除を発表した。北朝鮮が核施設への検証の枠組みについて同意したことを受けて、ブッシュ大統領が解除を承認した。検証の枠組みにはプルトニウムだけでなく、ウラン濃縮による核計画や、海外への拡散活動も含まれるとしている。日本政府は「合意案には確認すべき点がある」(中曽根弘文外相)と慎重な判断を求めたが、米政府は北朝鮮との合意履行を優先した格好で、日米関係に悪影響を及ぼす可能性がある。
 米政府が11日発表した合意文によると、検証作業には国際原子力機関(IAEA)が「重要な役割を担う」と明記されている。そのうえで、検証の枠組みには北朝鮮が申告した「すべての施設」に加えて、「未申告の場所」も含まれるとしている。ただ、「双方の同意に基づいて」という留保もついている。
 合意を踏まえ、北朝鮮は寧辺にある核施設を当面使えなくする無能力化の作業を再開するという。
 米政府高官は今回の解除について、あくまで暫定的な措置であり、北朝鮮が検証作業に応じなければ、テロ支援国家に再指定することもあるとしている。
 マコーマック国務省報道官は11日の記者会見で、 日本人拉致事件について、日本の立場を支持する考えを改めて明確にするとともに、北朝鮮に対し、解決に向けて即刻取り組むよう求めた。



 今回の措置は「暫定的」とはいえ、任期満了間近のブッシュ政権でこの決定が覆ることは、まずないでしょう。

 また、北朝鮮の外交戦略は、瀬戸際外交ゴネ得外交が基本中の基本であり、六カ国協議が開催されたとしても、今回の合意事項を北朝鮮がその通りに遵守するかについては、大きな疑念が付きまといます。


 この問題について、米共和党の次期大統領候補マケイン議員は、強い疑念を示しています。


【マケイン候補が懸念表明 北朝鮮テロ支援国家指定解除問題】  (産経新聞 10月11日)


 米共和党の大統領候補マケイン上院議員は10日、北朝鮮の核問題に関して声明を発表し、米政府が核施設の検証のあり方をめぐり北朝鮮との間で基本合意に達した後に「了承を得るためだけにアジアの同盟国と協議している」と訴え、日本に事後承諾を求めている政権側の交渉手法に懸念を表明した。
 日本人拉致事件でも、北朝鮮のテロ支援国家指定解除の決定と関連するにもかかわらず、最近の交渉では提起されていないと懸念を示した。
 マケイン氏はテロ支援国家指定解除では、しっかりとした検証の枠組みの確立を求めてきた。今回の基本合意が指定解除を支持するに足りる内容なのか「はっきりしない」と指摘。そのうえで、政権側に、指定を解除する前に検証の枠組みが米国や同盟国の国益にどのように利するのか説明することを求めた。



 麻生首相は、国会答弁でアメリカの決定に不満を表明しています。


【麻生首相「われわれは解除に不満」 テロ支援国家指定解除に答弁】  (産経新聞 10月14日)


 麻生太郎首相は14日の参院予算委員会で、米国の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除について「一つの手段として分からないことはない」としながらも「われわれは解除に不満と、はっきり申し上げてきている」と述べた。また、「早期に全面的な拉致被害者に関する調査のやり直しを開始し、生存者全員の帰国につながる成果を出すよう求めていく」とし、拉致問題の解決に全力を尽くす考えを表明した。
 さらに、核無能力化進展の見返りに提供するエネルギー支援について「拉致問題を含む日朝関係がきちんとしない限りは六カ国協議の下での経済、エネルギー支援に参加しないという方針に変わりはない」と話した。



 日本政府と同様、国民も今回のアメリカの決定に、大きな不満を抱いているはずです。

 私自身も、強く失望させられました。



 アメリカが北朝鮮のテロ支援国家解除を急いだ背景には、ブッシュ米大統領が自身の任期満了までに、北朝鮮政策において何らかの外交的成果を望んでいるということが、最も重要なファクターとして挙げられます。


 外交と安全保障をクロフネが考えてみた。では、『前福田首相が対北朝鮮外交を180度転換し、制裁を一部解除したことで、アメリカが「日本が対北制裁解除へ方針転換したのだから、アメリカも制裁を解除して良いというGOサインが日本政府から出た」と受けとめ、ライス国務長官が北朝鮮のテロ国家指定解除方針を明言し、6月下旬に解除手続きにはいった』と分析されています。


 韓国では、李明博大統領がテロ支援国家指定解除を歓迎したという報道が伝えられていましたが、与党保守陣営、保守系野党からはやはり不満の声が上がっている模様です。


【【テロ指定解除】韓国与党代表も反対】  (産経新聞 10月14日)


 韓国与党ハンナラ党の朴●(火へんに喜)太代表は14日、米国による北朝鮮のテロ支援国家指定解除に「個人的には賛成しない」と述べた。聯合ニュースが伝えた。朴代表は北朝鮮が核放棄に踏み切ることはないとの見通しも示した。
 韓国では、解除への反対や、米国が韓国との十分な協議なしに解除に踏み切ったのではないかとの不満の声が同党などの保守陣営から出ている。
 これに対し大統領官邸高官は同日、韓国メディアに、今月初旬に訪朝したヒル米国務次官補が李明博大統領に北朝鮮との協議内容を説明していたとし、米韓は緊密に協議してきたと強調した。
 さらに、解除直後に6カ国協議の韓国首席代表が解除を歓迎すると表明したのは、北朝鮮が非核化に踏み出したことを歓迎するとの意味だと述べるなど、釈明に追われている。
(共同)


【テロ指定解除:韓日両政府の反応(上)】  (朝鮮日報 10月13日)


 米国が北朝鮮に対するテロ支援国指定を解除したことについて、韓国政府は公式には「歓迎」の立場を明らかにした。韓国の6カ国協議首席代表を務める金塾(キム・スク)韓半島(朝鮮半島)平和交渉本部長は12日の記者会見で、「韓国政府は6カ国協議が正常軌道に戻り、究極的に北朝鮮の核廃棄につながるきっかけになると評価している」とコメントした。
 しかし、韓国政府内部でも軽率なテロ支援国指定解除に懸念の声が多く、立場を整理するには相当の困難が伴うとみられる。政府消息筋は「北朝鮮がテロ支援国リストに載ったのは1987年の大韓航空機爆破事件がきっかけだったが、韓国政府は北朝鮮からの謝罪がない状態でテロ支援国解除を受け入れるべきではないとの意見が多かった」と述べた。与党ハンナラ党、保守系野党の自由先進党などからは12日、「北朝鮮の謝罪や遺憾表明が先だ」と反発の声が相次いだ。



 東アジアの同盟国の国情、国民の意思を蔑ろにしたままでの指定解除には、日本・韓国の側から相当な反発が出ているのが現状です。


【北朝鮮へのエネルギー支援せず テロ指定解除に「不満」の麻生首相 (1/2ページ)】  (産経新聞 10月14日)
【北朝鮮へのエネルギー支援せず テロ指定解除に「不満」の麻生首相 (2/2ページ)】  (産経新聞 10月14日)


 08年10月14日参院予算委で答弁する麻生首相


 麻生太郎首相は14日の参院予算委員会で、米国が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除したことについて「核の問題を動かす1つの手段として分からなくもないが、われわれは不満だということははっきり申し上げている」と述べ、米国の対応に不快感を表明した。首相はまた、拉致被害者全員の早期帰国を目指す考えと北朝鮮へのエネルギー支援への不参加を明言した。15日に自ら本部長を務める拉致問題対策本部を2年ぶりに開き、拉致問題の解決を最優先する日本政府の姿勢をアピールする。
 首相は、拉致問題について「国家主権にかかわる重大な問題だ。米朝間に拉致問題はない。米国とは立場をかなり異にしている」と指摘した。一方で、11日のブッシュ米大統領との電話会談に触れ、「拉致を含め日朝間の問題をよく理解しているという話は向こうからあった」と述べ、日米間の信頼に影響はないことを強調した。
 北朝鮮へのエネルギー支援については「米朝合意を6カ国協議の場で詰めることが大事なプロセスだ。核申告検証の具体的な枠組みに関する文書を採択すると思うが、
拉致問題で何ら進展がない限りエネルギー支援に応じることはない」と述べた。
 今後の日本政府の対応については「(北朝鮮が)早期に全面的な(拉致被害者の)調査のやり直しを開始し、生存者全員の帰国につながる成果を出すよう求める方針は、ずっと変わらない」と強調。さらに、「拉致、核、ミサイルといった懸案を包括的に解決した上で不幸な過去を清算し、国交正常化を図るとの基本方針は引き続き堅持していきたい」と述べた。自民党の細田博之幹事長も14日の記者会見で、「拉致問題の解決は日本政府、国民の悲願だ。追及の手を緩めたりしてはならない」と述べた。
 



 米朝合意を承認すれば北の核兵器保有黙認にも繋がりかねません。

 北朝鮮のミサイル、核の直接的な脅威を受けている日本にとって、北朝鮮のテロ支援国家指定解除は、国家安全保障上許容しがたいものです。

 日本政府として、厳然たる対処が必要とされることは間違いありません。


 前政権の福田首相時代と違い、麻生首相は物言いにこそ棘があるにせよ、対北朝鮮政策では断固とした姿勢で臨む人物と目されています。


 産経新聞の興味深い記事を引用してみます。


【【テロ指定解除】日本がテロ指定すれば(1/2ページ)】  (産経新聞 10月12日)
【【テロ指定解除】日本がテロ指定すれば(2/2ページ)】  (産経新聞 10月12日)


 米国が北朝鮮に対するテロ支援国家指定を解除したということは、病床にある将軍様の意向が十分に発揮されたことになる。まるで、「死せる孔明生ける仲達を走らす」かのようだ。病床に伏せる金正日総書記が、米国のヒル国務次官補を走らすの図である。
 政権も末期のブッシュ政権が、そんなに焦ってテロ国家の指定解除に走るなら、日本は独自にテロ国家の指定を肩代わりすることができるがどうか。
 三国志では、蜀の諸葛孔明と対(たい)峙(じ)していた魏の司馬仲達が、「孔明死す」と聞いて蜀軍を攻撃したところ反撃にあい、孔明の死を謀略と思って退却した。金正日総書記が孔明ほどの名将であるはずもないが、ヒル次官補の外交行動は、実際に「伏せる将軍様」の威光で進む核実験再開ムードに翻弄(ほんろう)されていた。
 米国の説明では、北朝鮮をテロ支援国家リストから暫定的に外し、北が合意を守らない場合は再度リストに戻すことで妥協したという。しかし、合意条件にウラン濃縮の検証が排除されているから、体制護持が絶対の金総書記とその取り巻きは形を変えて核開発を続けられる。
 まして、金総書記が倒れる前に「核開発の継続」を決断している可能性が高いから、取り巻きがその意思を勝手に変えることはできない。変更は将軍様死後なら遺訓に逆らったことになるし、回復すれば復帰後に処罰されるのがオチだ。
 放っておいても、世界不況が北の経済を襲うから、ブッシュ政権には経済的な締め付けに出るチャンスであった。あのリビアだって、大量破壊兵器の全計画を放棄して米国がリストから外すまで2年もかかっていた。ヒル次官補が「伏せる将軍様」に走らされたと表現してどこが悪い。
 そこで、国家テロの拉致事件を抱える日本としては、独自に北をテロ国家指定に処する時期が到来したといえるがどうか。
 北朝鮮が米国のテロ国家指定で困るのは、世界銀行やアジア開発銀行からの融資が日米の反対で受けられないからだ。それなら、日本が代わりにテロ国家に指定して、国際金融機関などから北に援助できないようにすればよい。
 日本は世銀の第2の拠出国だし、アジア開銀は第1位だから実現は可能である。世銀総裁は米国人であり、アジア開銀は財務省OBの黒田東彦総裁だ。これまでの北朝鮮に対する経済制裁に加えれば、格好の揺さぶり材料になる。


 大変興味深い記事です。

 記事が主張するように、法案を閣議決定、あるいは国会で法律を制定するなどして、徹底的に北朝鮮の姿勢、テロを断罪してゆく姿勢が望まれます。


 アメリカが指定解除したことを受けて、日本政府独自のテロ支援国家指定、あるいは制裁の徹底的な強化が必要とされているのです。


 他国民拉致、ミサイル開発、核開発を推し進める北朝鮮に対し、断固とした姿勢で臨み、日本独自の制裁を強化した上で、六カ国協議への積極的な拉致問題付託、ミサイル・核開発の糾弾を外交力を総動員して行い、アメリカの決定を無効化するような強い実効性のある政策を、日本の麻生首相に求めたいものです。



 【参考HP】


 外交と安全保障をクロフネが考えてみた。  様
 アジアの真実  様



 【参考書籍】


拉致と侵略の真実 完全保存版-教科書が教えない日本被害史
撃論ムック


めぐみ

横田 滋



家族’08

北朝鮮による拉致被害者家族連絡会



奪還

蓮池 透






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