副業・兼業される社員さんがいると、その社員さんの、副業・兼業の様子を把握しなければなりません。会社は、どのようなことを把握しなければならないでしょうか。厚労省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」にそって、考えます。

 

当ガイドラインでは、以下の3つがあげられています。

他の使用者の事業場の事業内容
他の使用者の事業場で労働者が従事する業務内容

これら2つは、競業避止義務にかかわります。競業他社の利益になることが、わが社の不利益になる場合は、その副業・兼業を制限したり禁止したりしなければなりません。大切なことです。
労働時間通算の対象となるか否かの確認

これは、その副業・兼業が、労働時間通算の対象にならない仕事かの確認です。平たく言えば、フリーランスや請負、農業など、労働基準法の労働時間の規制に入らない仕事は、労働時間通算の対象に入りません。

 

また、労働時間通算の対象になる場合、

他の使用者との労働契約の締結日、期間

他の使用者との労働契約の締結日は、労働時間通算において、とても重要です。わが社と、どちらが先に締結したかで、割増賃金の負担が変わってきます。また、労働時間通算がいつまで続くのかも、把握しておかなければなりません。
他の使用者の事業場での所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
他の使用者の事業場での所定外労働の有無、見込み時間数、最大時間数

副業・兼業先の働き方は、労働時間通算にとっても重要ですが、その社員さんの健康管理上の必要もあります。たとえば、働きすぎて健康を害してしまったら、わが社の仕事にも影響しますから、制限・禁止しなければなりません。
他の使用者の事業場における実労働時間等の報告の手続
これらの事項について確認を行う頻度

副業・兼業先の労働時間は、時間数だけでなく、何時から何時までかも、把握します。これは、労働時間通算で、割増賃金を計算するときに、とても重要です。

また、確認の頻度ですが、労働時間については週1回ぐらいが目安になろうかと思います。その週の労働時間を、翌月曜日に報告してもらう感じでしょうか。その他の事項については、変更があった場合すみやかに報告してもらうことになろうかと思います。

 

以上、会社が把握すべきことを、社員さんから報告してもらうことになります。

 

書式ですが、厚労省「副業・兼業の促進に関する ガイドライン わかりやすい解説」にあります。これを、たとえば、副業・兼業先の業務内容について、詳しく知っておきたいことがあれば、詳しく聞くように変えたりします。

 

副業・兼業をする社員さんの労働時間通算については、こちらで詳しく説明しています。ぜひこちらも、ご覧ください。

 

 

 

当事務所では、副業・兼業についてのご相談も承っております。お気軽に声がけください。

副業・兼業をしている社員さん。たとえば、A社で働いた後、B社に移ってまた仕事をする。すると、1日に、8時間以上働く日が出てくることもあるかもしれません。労働者に、1日に8時間以上働かせた場合は、使用者は、労働者に割増賃金を払わなければなりません(労働基準法第37条)。では、A社かB社か、どちらが割増賃金をはらわなければならないでしょうか

 

たとえば、A社で7時間働いた後、B社で3時間働く社員さんの場合はどうでしょうか。この社員さんは、1日の労働時間が10時間になり、2時間の超過勤務になります。

たしかに、1日通算したら10時間にはなりますが、各会社では、8時間以内ですので、そもそも割増賃金は発生しない、と思われるかもしれません。しかし、そうではないんです。労働基準法第38条に、 

労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。

とありますので、その労働者自身の、1日の労働時間は、2時間の超過になり、誰かが割増賃金を払わなければなりません

では誰が?

その日に、後に働いた会社が払う、と思われるかもしれません。たしかに、超過勤務は、本来の勤務をしたあとの勤務と思いがちです。ですので、8時間働いた後の、8時間を超過した労働時間ですので、後の会社、このケースではB社と考えられます。実際労働基準法第38条を素直に読んだら、そう考えてもしかたないですね。

でも、ことは、そう単純ではありません。厚生労働省労働基準局長「副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第 38 条第1項の解釈等について」(基 発 0 901 第 3 号令 和 2 年 9 月 1 日)を見てみましょう。

当通達第3「労働時間の通算」の2「副業・兼業の開始前」に、

「自らの事業場における所定労働時間と他の使用者の事業場における所定労働時間とを通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、時間的に後から労働契約を締結した使用者における当該超える部分が時間外労働となり、当該使用者における 36 協定で定めるところによって行うこととなること」

とあります。つまり、あとに労働契約を結んだ方が、割増賃金を払わなければならない、ということになります。このケースでは、A社と先に労働契約を結んでいたとすると、あとに労働契約を結んだB社が、B社が先に労働契約を結んでいたらA社が、2時間分の割増賃金を払うことになります。

 

では、この社員さんが、ある日、先に労働契約を結んだA社(所定労働時間8時間)で9時間働いた後、B社(所定労働時間3時間)で4時間働いたとします。通算して、13時間。5時間の超過勤務についての割増賃金は、やはり後に労働契約を結んだ方が払うことになるのでしょうか。

この通達に従って、考えてみましょう。当通達第3「労働時間の通算」の3「副業・兼業の開始後(所定外労働時間の通算)」に

「2の所定労働時間の通算に加えて、自らの事業場における所定外労働時間と他の使用者の事業場における所定外労働時間とを当該所定外労働が行われる順に通算して、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、当該超える部分が時間外労働となること」

とあります。

まず、A社の所定労働時間は8時間(①)、B社の所定労働時間は3時間(②)、①+②=11時間ですので、法定労働時間を3時間(③)超えています。これは、先にあげた、当通達第3「労働時間の通算」の2「副業・兼業の開始前」に基づいて、B社が割増賃金を払います。

「自らの事業場における所定外労働時間と他の使用者の事業場における所定外労働時間とを当該所定外労働が行われる順に通算して」ということで、A社では所定外労働時間は1時間(④)、B社では1時間(⑤)ですので、所定外労働時間の通算は2時間。そして「自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分がある場合は、当該超える部分が時間外労働となること」ですので、A社の分での所定外労働時間の1時間(④)は、法定労働時間を超えていますので、A社は、1時間の割増賃金を払うことになります。

また、後に労働契約をしたB社については、同じように、所定外労働時間は1時間です。B社では、4時間しか働いていないので、法定労働時間を超えた労働時間はないように思いますね。しかし、すでに法定労働時間を超えた労働しているわけですから、元から超えている時間(③)と、B社での所定外労働時間(⑤)を加えた③+⑤=4時間分の割増賃金を払うことになります。

 

では、こういったケースはどうでしょうか。A社(所定労働時間3時間)で4時間働いた後、B社(所定労働時間4時間)で6時間働いたとします。労働契約は、B社が先に結びました。

まず、A社B社の所定労働時間を通算します。A社は3時間(①)、B社は4時間(②)ですから、①+②=7時間(③)。法定労働時間を超えていません。さて、A社はで4時間働きましたので、所定外労働時間は1時間(④)、B社では2時間(⑤)。③+④+⑤=10時間ですので、法定労働時間を超えています。そこで、所定外労働時間の通算をします。この場合、所定外労働時間が発生した順に通算することになります。④と⑤では、④の方が先ですので、法定労働時間を超えた1時間(8-③)については、④から通算するkとになります。このケースでは④は1時間ですので、A社は、割増賃金を払わなくてもよいことになります。一方でB社は、後で発生した所定外労働時間の⑤について、法定労働時間外となり、割増賃金を払うことになります

先に労働契約を結び、わが社の法定労働時間を超えていない分でも、割増賃金を払うことになる場合があることに注意が必要です。

 

ということで、副業・兼業をする社員さんがいる会社は、その労働者が、よそでどれだけの時間働いているかも把握しなければなりません。当通達第2「 副業・兼業の確認」では、
「使用者は、労働者からの申告等により、副業・兼業の有無・内容を確認すること。その方法としては、就業規則、労働契約等に副業・兼業に関する届出制を定め、既に雇い入れている労働者が新たに副業・兼業を開始する場合の届出や、新たに労働者を雇い入れる際の労働者からの副業・兼業についての届出に基づくこと等が考えられること」

とあり、また当通達第3の1の(2)「通算される労働時間」に
「法第 38 条第1項の規定による労働時間の通算は、自らの事業場における労働時間と労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間とを通算することによって行うこと。
労働者からの申告等がなかった場合には労働時間の通算は要せず、また、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間が事実と異なっていた場合でも労働者からの申告等により把握した労働時間によって通算していれば足りること」

とあります。つまり、社員さんからの申告によって計算するように、ということです。

 

副業・兼業する社員さんの労働時間把握について書きました。なんだか難しいな、めんどくさいなとお思いになったかもしれません。当通達では、簡便な労働時間把握の方法についても書かれています。これについては、また稿をあらためます。

 

当事務所では、具体的な計算についてはもちろん、就業規則など副業・兼業制度の構築についても、ご相談を承ります。気軽に、お声がけください。

 

蛇足ながら。「自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間」とはなにかといいますと、法定労働時間は、通常1日8時間、週40時間なんですが、変形労働制をとっている場合、1日10時間働かせた日があれば、法定労働時間が10時間になります。当然、その分労働時間を短縮した日がある場合は、その時間が法定労働時間になります。(その社員さんの通算労働時間)-(その社員さんの法定労働時間)=(割増賃金がかかる労働時間)ですので、副業・兼業先の法定労働時間が変わると、割増賃金が変わってきます。ですので、社員さんが副業・兼業した先の法定労働時間も、こちらとしては把握しておかなきゃなりません。また、フレックスタイム制の場合は、清算期間が終わって労働時間の清算をして、割増賃金の計算をすることになります。

 

参照

副業・兼業の促進に関する ガイドライン わかりやすい解説

これは、とてもわかりやすく書かれています。ぜh、ご覧ください。

相談窓口を設置したのに、相談に来てくれる人がいなくて、開店休業状態になっていることはありませんか。せっかく窓口を設置したのですから、活用したいですよね。社員が、話したいことがあっても、会社に言わずにいて、それで大ごとになってしまったりする。会社としては、そうなる前に、言ってきてほしかったと思うでしょう。

 

実際、ハラスメントを受けたら、社員はどう行動するか。「令和2年度厚生労働省委託事業職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、「なにもしない」がもっとも多く、パワハラで35.9%、セクハラで39.8%でした。その次に多かったのが、「同僚に相談した」で、パワハラで22.0%、セクハラで18.3%。「相談窓口に相談した」は、パワハラセクハラともに5%ぐらいでした。どうでしょうか。5%の人しか、相談窓口を利用していないんですね。

令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査 主要点 PDFです。

 

考えてみれば、同僚に相談するよりも、相談窓口に行く方が、解決しやすいはずなんですよね。それは、労働者もわかっていると思います。なのに、解決には遠いところに相談に行ってしまう。そもそも、誰にも相談しなかったというのが、一番多いんです。労働者としては、解決を求めていないとか、ただ愚痴を聞いてほしかったとかといったわけではないと思うんですね。ハラスメントを受けて、とても悩んでいるはずなんです。

 

カウンセリングでは、クライアントに話をしてもらうことが、なにより大事です。クライアントは、カウンセリングルームに、自ら話をしに来るのだから、カウンセラーが何もしなくても話をするだろうと思われているかもしれません。でも、実際はそうではありません。カウンセラーのところにきても、なかなか話せない人の方が多数です。話せても、自分の本当の気持ちまでは話せない人も多数です。最初から、どんどん話しできる人の方が少ないです。人って、「話したい」と思っても、心にバリアを張ってしまって、なかなか人に話できない生き物なんですね。悩んで弱ってるときは、特にそうです。ですので、心のバリアを張らなくても大丈夫な、同僚や家族、友人に相談するんです。

 

ならば、相談窓口も、「なにかあったら話してくれるだろう」という前提ではなく、「何かあっても話してくれない」ことを前提に、ではどうしたら言ってきてくれるかを、考えなければなりません。

 

ひとつは、カウンセリングの有資格者か、研修を受けた人を、窓口にします。世間では、カウンセラーは、守秘義務もあるし、話しても大丈夫な人だという認識があります。そういった、話しても安全な人が話を聞いてくれるとわかれば、相談窓口の敷居は低くなるでしょう。

なお、会社にいる産業保健師なども、カウンセリングを習っていますし、窓口となっている会社もあるでしょう。これもいい手ではありますが、気をつけるべきこともあります。産業保健師は、社員の精神衛生も仕事のうちですので、心理カウンセリングをすることもあります。そうなると、当然守秘義務が生じますので、ハラスメントの事実を聞きだしても、社員が許可しなければ、会社の報告できませんので、会社として対処できなくなります。ハラスメントの事実を話してくれたら、そこからは、産業保健師としての立場で聞くのか、相談窓口の立場で聞くのかを、はっきりさせなければなりません。

 

また、相談窓口に行っても、社員に不利にはならないようにすることです。不利になるとは、相談したことで昇進や昇給に影響しないことや、秘密は厳守されることなどですね。また、相談したことで、職場内で悪口やいじめにならないようにしなければなりません。まず、就業規則やハラスメント規程に、その旨明記することが必要です。違反者には、罰則をつけてもいいでしょう。また、明記しただけではなく、その通りに実行しなければなりません。実行することによって、社員からの信用がえられます。ここは、厳格に運用することが大事です。

 

さらに、、ハラスメントを許さないという、トップによる強いメッセージが必要です。ハラスメントを受けた人は、自分も悪いのではないか、職場の空気を乱さないように、我慢しなきゃならないのではないかと思いがちで、それがまた、相談窓口に来れない原因もなります。そこで、トップによる強いメッセージがあれば、そのメッセージが背中を押してくれます。

 

加えて、研修や社内報などによって、就業規則やハラスメント規程を説明し、ハラスメントはしてはいけないこと、泣き寝入りをしないことを徹底し、相談窓口の紹介をすることです。スタッフの紹介には、カウンセリングの資格や研修歴を入れるとよいでしょう。また、相談方法についても、説明します。なによりも、気軽に相談できるところであることを、強調します。

 

ハラスメント対策は、トップのメッセージ、ハラスメント規程の作成、相談窓口、社内研修の4本の柱が、一体となって行うべきものです。ハラスメント対策4本柱については、こちら。

 

 

相談窓口で相談を受ける場合に気をつけるべきことについて、こちらにまとめてあります。あわせてご覧ください。

 

 

心のバリアをはずして、話をしてもらうやり方として、「傾聴」があります。傾聴を相談窓口に活かすことについて、まとめてあります。

 

 

なお、前に引用した「令和2年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査」ですが、原文が260ページぐらいあるので、主要点のリンクを張りました。もし原文を読まれるのであれば、こちらから

 

当事務所では、相談窓口の運営、相談を受ける人の研修など、公認心理師でもある私が承ります。ぜひ、お気軽にご相談ください。

相談窓口を設置し、実際相談者が来たとき、相談を受ける人は、相談する人から、様々は情報を聞きだすことになります。その手法として、傾聴がいいと言われています。では、傾聴とは、どういう手法なのでしょうか。

 

人から話を聞く手法をは、大きく分けて2種類あります。ひとつは、構造化面接、もうひとつは非構造化面接です。構造化面接は、あらかじめ聴く内容を決めておくやり方です。非構造化面接は、聴く内容を決めずに面接します。傾聴は、非構造化面接の部類に入ります。

 

傾聴では、相手に、とにかく自由に話をしてもらいます。こちらから、聴く内容を指定しません。相手の思うまま、考えるままに話をしてもらいます。そして聴く側は、相手を遮ることなく、おかしいなと思っても否定することなく、聴きたいことがあっても質問もしない、するとしたら相槌を打つか、聴き取れなかったことを聴き直す程度で、とにかく聴くのみに徹します。人は、自分の話すことを否定されたり、内容を追及されたりすると、安心して話ができません。相談は議論ではありませんから。傾聴では、話をする人は、自分の言うことを否定されないし追及もされないので、安心して自分の気持ちを素直に話すことができます。ですので、傾聴は、相手の気持ちを引き出すのに、とても有効な手法です

 

しかし、この傾聴、やるとなると、かなり難しいんです。研修などで実際やっていただくと、その難しさがわかります。

まず、人の話の中で、はっきりしないことや矛盾などがあると、質問したくなることが出てきます。それで、思わず質問してしまったりします。でも、傾聴では、質問することはできません。質問したら、相手の話を、こちらがコントロールしてしまうことになります。自由に話をしてもらうのが傾聴の根本思想ですので、それに反してしまいます。また、その質問が、相手を追い詰めることにもなりかねず、相手が安心できなくなり、自分の気持ちを話をしてくれなくなってしまいかねません。

また、傾聴では、自分の先入観をなくして、相手の考えや感じ方に忠実に従うことが求められます。自分の考えや感じ方にあわない、おかしいと思うことであっても、相手に忠実に従う。人は、先入観に支配される生き物です。先入観を捨てるというのは、思いのほか難しいんです。また、矛盾していることでも、たとえ法令違反であっても、そのまま受け入れなければなりません。思わず言い返したくなる気持ちをぐっと抑えて、ただ仏像のように聴くに徹する。

なので、傾聴の研修をすると、その難しさに、うなりを上げてしまう人も出てきます。

 

さらに、相手に自由に話をしてもらうと、こちらが聴きたい情報が得られないことがあります。相手が言いたくない、またはいうに値しないと思っていることは、言ってくれません。それを言ってもらうまで待っていなければならない。何度も何度も面接を繰り返さざるをえず、両方にとって負担です。時間が限られている面接です。効率よく情報を聞きだす必要があります。傾聴に徹すると、時間がかかるおそれがあります。

 

そもそも傾聴は、カウンセリングの手法として編み出されました。カウンセリングでは、クライアントの恢復が目的です。自分の気持ちや考えを自分の外に表現して、自分を客観視することで、恢復を図るのが、傾聴の目的です。情報を聞きだすことは、傾聴の本来の目的ではありません。

 

しかし、傾聴が、相手の気持ちを引き出すのに有効であることはたしかです。また、自分の気持ちや考えを語ることで、相談に来た人の気持ちが楽になる効果も期待できます。さらに、傾聴をすることで、相談を受ける側とする側との間に、信頼関係ができ、その後の流れがスムーズにいく可能性が高くなります。相談窓口としては、傾聴という手法を、うまく使いたいですね。

 

傾聴を活用するやり方として、傾聴を、面接の導入に使うというのがあります。つまり、相談に来られたら、まずは傾聴に徹する、そして、気持ちや考えが出だしたら、構造化面接に移行する、という流れです。もし2回以上面接ができるのであれば、最初の1回は傾聴に徹する、2回目以降に、構造化面接をする、でもけっこうです。そうやって、うまく使っていきたいですね。

 

傾聴は、難しい手法ですが、研修や訓練で、誰でもできるようになります。ぜひ、職場でご活用ください。

 

当事務所では、社労士でありカウンセラーでもある私が、相談窓口や傾聴などの相談や研修を承っております。お気軽にご相談ください。

 

相談を受けるときに気をつけるべきことについて、まとめています。あわせてご覧ください。

 

 

相談窓口を設置して、実際相談が来たとき、窓口が聞かなければならないことは、大きく分けて2つです。ひとつは、事実、もう一つは、被害者の気持ちです。

 

事実を聞くのは簡単だと思われているかもしれません。実際あったことを、そのまま言えばいいわけですから。しかし、複数人に同じ映像を見てもらい、1週間後に、その映像を見ていない人に、どんな映像だったかを説明してもらうと、それぞれが違う説明をしてしまう、なんてことがあります。研修で、これを体験してもらうのですが、みなさん、驚かれます。

なぜそうなるのか。まず、人間の記憶は、時間がたつにつれ、変化していくものであるということです。つまり覚え間違いですね。これは、間違って覚えているよりも、正しく覚えていて、後で記憶が変換されたケースが多いんです。人間の頭は、記憶をそのまましまっておくことができません。自分に都合がいいように、なんらか変換して記憶するんですね。

さらに、人間は、すべてを記憶できません。自分が見たものしか覚えられないんです。しかも、自分が興味あるものしか見ようとしない傾向(バイアス)がかかります。ですので、見落としが必ず出てきます。その見落としが重要なものであったら、重要な事実を語っていないことになります。だから、その人が、事実を説明しているつもりでも、実はそうでなかった、なんてことが起こるんです。

ですので、事実を知りたいのなら、ひとりの人からの聴取だけで判断せずに、当事者のどちらにも聴取するのは当然のこととして、まわりの人やご家族など、できるだけ多くの人から事情聴取をする必要があります。

 

気持ちを聞くのも、簡単だと思われるかもしれませんね。大人なんだから、自分の気持ちはわかっている前提ですし。しかし、実は、自分の気持ちって、自分ではわからないことが多いんです。そもそも人間は、言葉で感じるのではありません。自分の気持ちに言葉を当てはめるんですね。時に人は、自分の気持ちに、違う言葉を当てはめてしまうことがあります。たとえば、怒っているのに「冷静だ」という言葉を当てはめてしまうことはありますね。だから、まわりの人から見たら、明らかに怒っているのに、自分は怒っていると思っていない(だから、自分の怒りの感情をちゃんと把握するのが、アンガーマネジメントの第一歩です)。なので、自分の気持ちを正確に言葉にできるとは限らないんです。

さらに、自分の気持ちを話すと、自分に不利になると思うと、正直に気持ちを話せません。先ほどの怒りについても、ここで怒ってはいけない場面で怒ってしまったら、その怒りの気持ちを隠そうとしますよね。すると、自分は怒っていないと思いたいわけで、それがバイアスになって、自分の気持ちがわからなくなる。素直に怒りを表現していい場面なら、そんなバイアスがかかることはありません。ですので、自分の気持ちを、なんでも正直に表現できる場が必要になります

 

ということで、人から事実や気持ちを話してもらうのは、思いのほか難しいんです。

 

ではどうすればいいのか。実は、カウンセリングは、人から事実や気持ちを話してもらうために、いろいろな手法を編み出しています。傾聴なんかも、その一つです。傾聴やほかの手法については、長文になりましたので、稿をあらためます。

傾聴については、こちらにまとめてあります。あわせてご覧ください。

 

 

 

相談窓口の運営や、相談技術の向上などのご相談を、社労士でカウンセラー、公認心理師である私が承っております。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

ハラスメント対策をしましょうというと、「うちは小さな会社だから、お金もないし」とか「こんな小さな会社に、ハラスメントなんてないよ」とかいう声を聞くことがあります。ハラスメント対策は、令和4年4月から、すべての事業所で義務になります。とはいえ、たしかに、対策するとなると、なんでもお金がかかる世の中ですし、今問題になっていれば別ですが、そうでなければ、優先順位が違うと思ってしまいますよね。

 

まず、ハラスメント・メンタルヘルス対策にお金がかかる問題から考えます。ハラスメント・メンタルヘルス対策となると、就業規則の変更やハラスメント規程の作成、研修、相談窓口の設置などをすることになります。これらをすべて外注すると、たしかにけっこうなお金がかかります。ただ、どこまでやるかによって、かかるお金が変わってきます。手厚くやればやるほど、お金はかかるのですが、とりあえずでも、必要最小限のことをすると、その分かかるお金も少額ですみます。さらに、外注ではなく、自分たちでできることは自分たちでするようにすると、もっとお金をかけなくてすみます。

一方で、対策をしなくて、万一ハラスメント・メンタルヘルス事案が起こってしまった場合、賠償金などで数百万円以上かかることになり、もっと高額な出費になります。しっかりした対策をとっておれば、そもそもハラスメント事案が起こる可能性も低くなりますし、もし起こったとしても、会社はきちんと対策をとっていたと、主張することができます。

 

また、ハラスメント・メンタルヘルス事案は、会社の規模の大小を問わず、どこでも起こります。小さい会社だと、家庭的な雰囲気になって、社長さんも社員さんもみんな仲良しの会社もあるかと思います。仲良しの集団には、ハラスメントはないと思いがちです。しかし、いじめは、仲のいい集団で起こることが多々あります。家庭的な雰囲気の中でも、赤の他人が集まる集団であることに変わりはありません。社員さんみんなが考え感じていることを、お互いがすべて把握しあうことは不可能です。家庭の中でもそうでしょう。家族全員がお互いの気持ちをわかりあっているなんてことは、ありません。

メンタルヘルス問題についても、会社の規模の大小を問わず、人である以上、誰でも精神的な疾患にかかる可能性はあります。さらに、小さな会社には、人が少ない分、一人の仕事量が多くなったり責任が重くなったり、小さいならではの、メンタルヘルス問題のリスクがあります。いくら、家庭的な雰囲気の会社であっても、それだけでリスクを回避することはできません。

しかも、ハラスメント問題やメンタルヘルス問題が起こってしまったら、当事者を転勤や転配属をしなければならないケースが多いですが、規模が小さい会社だとできません。ハラスメントの場合、どちらかに、無理やり仕事をやめてもらわなきゃならなくなります。メンタルヘルスの場合も、ある程度は休職制度が使えても、いつまでも休職のままにはできません。復職できす、やめてもらうことになることがあります、そうなると、退職をめぐる争いになって、さらにお金や手間がかかる。さらに、休職することになったら、その人の仕事を誰かがやらなきゃなりません。社員が少なかったら、その分、ほかの人の負担が多くなります。そもそも社内で争いがあったら、会社の雰囲気が悪くなります。雰囲気が悪くなると、社員一人ひとりのパフォーマンスが下がり、会社がうまく回らなくなります。つまり会社が小さいと、対策として使える手が少なくなるんです

 

規模の大小問わず、ハラスメント・メンタルヘルス問題のリスクはあるということです。ならば、小さい会社だからこそ、しっかり対策しておくことが必要になります

 

つまるところ、ハラスメント対策は、会社にとってはリスク対策という側面もあるんです。考えられるリスクについては、あらかじめ対策をとっておくべきですよね。将来の会社のために、今一度ハラスメント対策を考えてみてはいかがでしょうか。

 

当事務所では、ハラスメント・メンタルヘルス対策全般についてのご相談を承ります。

ちなみに、当事務所は、顧問企業様には、一般的なハラスメント対策の相談は顧問料の範囲内です。

就業規則作成見直しなどは別料金がかかりますが、顧問先企業様には、優待制度があります。

当事務所では、社会保険労務士・公認心理師が研修を承ります。研修料についても、顧問企業様には優待制度があります。

ぜひ一度ご相談ください。

不幸にも精神疾患を得て、仕事を休まなければならなくなった社員さん。はじめはなにもできなくて。寝てばかりの日々でした。でも、回復するにつれて、少しずつできることが増えてきました。復職に向けて、リハビリをする段階になって、さて何をしようかと。

 

最近は、うつの人向けのリワークプログラムをする病院などが増えてきました。リワークプログラムは、仕事復帰に向けたリハビリで、最初はその場所に行くことから始めて、少しずつ軽い作業を少しずつ増やしていって、ある程度できるようになったら、復職を考る、というプログラムです。

 

ここで大事なのは、うつという、できることが極端に減る病気であっても、なにもできないわけではない、ということです。そして、なにかをすることが、治療の一環になることもある、ということです。

 

さて、病気休職中の副業について考えます。リワークプログラムでは、軽い作業をします。その作業に、基本的に賃金は払われません。一方で、精神障害者の作業所に、リワークのために一時的に入所して、作業をすることもあります。この場合、賃金ではないですが、お金を払ってもらうことがあります。また、リハビリのために、自宅で内職的なことをすることもあります。さて、これは、副業になるんでしょうか。

 

病気休職中は、治療に専念する義務が生じるのが一般的です。その作業や内職が、治療に資するものであるなら、作業や内職をしても、治療専念義務違反にはなりません。そして、その作業や内職をすることで賃金なりお金が発生しても、治療専念義務であるかどうかの判断には関係ありません。

 

問題は、就業規則などで兼業禁止の規定がある場合、この作業や内職も禁止されるべきなのか、つまり治療専念義務と兼業禁止がバッティングする、ということです。

 

法的には、一般的傾向として、会社は、その労働者が復職できるように働きかけることが、強く求められています。病気休職後自然解雇のばあでも、その解雇が認められるかどうかは、その労働者の病状だけでなく、会社が復職に向けて、どれだけ努力したかを見られます。と考えると、作業や内職が復職に向けて効果があるとわかっているなら、兼業禁止よりも治療専念義務を優先して、作業や内職を認める方向で考えるべきかと、私は考えます。

 

ただ、その報酬が、会社の賃金に比べてあまりに高額であると、休職していない社員と不公平感が生まれます。また、その作業や内職が、同業他社の利益になるなど会社の利益を損するものであると、認めるわけにはいきません。そのあたりは、メリットとデメリットを天秤にかけて、合理的な判断をすることになります。いくらリハビリのためとはいえ、会社として合理的に考えて受け入れられないものは、受け入れる必要はありません

 

なお、リハビリ中の副業について、就労規則やメンタルヘルス規程などに、副業を認める手続きや場合について、特別な条項を入れておくと、後々便利です。

 

大切なのは、病気休職中の労働者と、できる限り連絡を密にして、リハビリ内容について、会社が、労働者、主治医、産業医とよく話し合うことです。病気休職者のリハビリは、労働者のためだけでなく、会社のためでもあります。会社も労働者も、納得できるリハビリを考えていきましょう。

 

病気休職者のリハビリ、復職プログラム、メンタルヘルス規程などについては、社労士で公認心理師である私が、ご相談を承ります。ぜひお気軽にご相談ください。

 

ハラスメント対策は、4つの柱から成り立っています。

 

 

その柱の一つ、対策を具体的にどうしていくのかを決める、ハラスメント規程について、。ここでは、作成のポイントをあげていきます。ハラスメントは、パワハラ、セクハラ、マタハラ・パタハラと、様々なものがいわれています。それぞれのハラスメントについて規程を作成するのが、すっきりしていいかもしれませんが、分類できないハラスメントが起こった場合や複合されたハラスメントが起こった場合、統一した規程がないと対処できにくくなります。私は、ハラスメント規程をひとつ作っておいて、様々なハラスメントに対応できるようにした方がいいと思います。

 

ハラスメントを禁止する旨の条文目的)
この規程はどういうものかを書きます。会社としての、ハラスメント対策についての考えや決意を書くのもいいでしょう。

ハラスメントの定義
ハラスメントとはどういう行為や言動なのかを定義付けます。基本的なところは、

業務上必要かつ相当な範囲を超えた指導や行動言動・人事考課などにより

労働者の就業環境が害される
ものをハラスメントといい、そのうえで、パワハラなら「優越的な立場を背景とし」とか、セクハラなら「性的な行動言動により」、マタハラ・パタハラなら「出産を理由として」などと加えていきます。さらに、これら3つのハラスメントには当てはまりませんが好ましくない行動や言動、いじめや嫌がらせについても、ここで定義し、禁止するようにするとよいでしょう。この定義については、厚労省のHPなどを参考にされるとよいと思いますが、定義づけが難しく、定義のしかたを間違えると大きなトラブルになりますし、実効性があやしくなりますので、ぜひ専門家にご相談ください。


禁止行為等
どういうことをしてはいけないのか、言ってはいけないのかについて決めます。暴言暴行はいうまでもないですが、そのほかに、

・職務上不必要な配置の不利益な変換や減給などといった人事考課

・性的な画像や文書の配布などといった環境面

・交際の強要や飲み会などの強制参加・無視や嫌がらせ悪口の流布などといった人間関係

にかかわることも含みます。これは、より具体的に細かく決めるのがよいと思います。禁止行為は厚労省のHPにありますが、職種や業種など会社の実情に合わせて、取捨選択していくことになります。これも、専門家に相談された方がいいと思います。

 

ハラスメント対策部署
通常は、人事部課長になりますが、会社の実情に合わせて決めることになります。なお、ハラスメントを予防するための計画作成実行や、職場のハラスメントリスクの測定、研修企画などをする、常設のハラスメント対策委員会を設置した場合、その旨記載します。


苦情相談の処理
窓口の設置

ハラスメントが起こった時、起こるおそれがあるときに、どこに言いに行けばいいかを決めます。面談による相談だけでなく、電話やメールなどによる相談もできるようにしておくとよいでしょう。各課部ごとに窓口を設置するのが理想だと思いますが、同じ課部の人に相談しにくいこともあろうかと思いますので、会社全体で窓口を統一するのもよいでしょう。相談にあたっては、

ア相談者に対して誠実に対応すること

イ相談したこと自体、相談内容についての秘密を厳守すること

ウ相談したことによって、不利益を与えないこと

エ相談した結果について、公表できる範囲で知ることができること

を定めておくとよいでしょう。

なお、相談を受けるにあたって、あらかじめ聞く内容をまとめて、ワークシートを作っておくと。効率的に正確にほしい情報が得られます。当事務所に、ワークシートのひな型がありますので、ご相談ください。

秘密の保持

苦情相談の内容について、誰に対して開示するのかを決めます。通常は、社長または所属長、人事部課長、関連の上司にとどめます。また、情報を得た人は、他人にその秘密を洩らさないことも定めておきます。秘密保持規程があれば、それに準ずるjことになります。

苦情相談窓口の運営については、カウンセリングの技術が非常に有効です。ぜひ、当事務所にご相談ください。

罰則規定
ハラスメントの行為者を処分するに当たっての取り決めです。通常、就業規則の罰則規定によるものになります。
 

相手方の救済
休職やハラスメント行為者とかかわりがない部署への異動等、ハラスメントをされた人の救済措置について決めます。休職した場合、その間の給料はどうするのか、異動させる場合、相手方の同意なく降格を伴うものにしないなど、相手方の不利益にならないように配慮すること等を決めておきます。


再発防止
事例公表や社内研修等、再発を防止するために何をするかを決めます。事例公表の場合、相手方はもちろん、行為者についても、その人権上の配慮をする、たとえば氏名は公表しない、人が特定できるような表現はしない等を定めておきます。人権上の配慮は非常に大事で、公表の仕方によっては、新たなトラブルを生むことになります。ぜひ、専門家に相談してください。

 

当事務所では、ハラスメント規程や、就業規則にハラスメントに関する条項を入れることについてのご相談を承ってます。ぜひ、お気軽にご相談ください。

 



 

ハラスメントの定義や対策法、相談窓口のこと等、ハラスメントに関する取り決めを、「ハラスメント規程」として独自に作るところがあります。厚労省も、ハラスメント規程のひな型を用意しています。一方で、新たに規程を作るのではなく、就業規則に織り込んでいるところもあります。どちらがいいのでしょうか。

 

法的には、どちらにしなさいというのはありません。そもそも、就業規則にハラスメントについて記載しなさいという規則はありませんし、ハラスメント規程を作りなさいという法律もありません。もっとも、法的には作らなくてもいいのですが、ハラスメント対策をするには、必要なものです。一言で言えば、どちらでもいいです。要は、どんな形であれ、規定があればいいわけです。

 

ハラスメント規程を独自に作るメリットとして、ハラスメントについての規定を探しやすくなります。社内のいろんな規定を盛り込んだ就業規則にすると、膨大なものになって、必要な時に探しにくくなります。就業規則が膨大になると、労働者使用者側もも読む気がなくなり、ただのお飾りになってしまいがちです。就業規則をスリムにして、各細かい規程をほかに作るというのも、いいやり方だと思います。

 

一方で、各規程をほかに作ると、その各規程がたくさんになり、あちこちにばらけてしまいがちになります。なにがあっても、これを見ればわかるようにする、というのも、ありかもしれません。

 

要は、作る側の好みです。どちらの形にするにせよ、必要なことが書かれていればいいわけで、どんな形にするかよりも、何を書くのかを考えるようにしましょう。

 

就業規則の作成、修正などについても、ご相談を承ります。お気軽にご相談ください。

 


 

 

 

うつや適応障害など、精神疾患で休職した社員さん。復職に向けて治療に専念していただきたいところです。一方で、会社は、その社員さんが、いつ復帰できるかの予測をしなきゃ、復職に向けた対策が立てられません。そこで、主治医の診断書をもらうことになるのですが、最近は、「1か月の休養を要する」など、1か月単位でしか、診断書を出してもらえないという話をよく聞きます。また、主治医が「復職可能」の診断書を書いて復職したけど、またぶり返して休職してしまった、という例もあります。主治医が書いた診断書、どう読めばいいのでしょうか

 

まず、精神疾患は、回復のパターンが、ある程度決まっているのですが、個人差がかなりあって、医者でも、確定的な予想はできません。よくなるスピードも、人によって、また回復の段階で、まちまちです。先のことは、なかなか断言できないんですね。1か月単位の診断書も、そういった背景があります。ですが、回復が進んでくると、わりと精度が高い予想ができるようになってきます。ですので、1か月単位の診断書が出てきたら、まだ、先のことはよくわからない段階なんだなと考えてけっこうです。

 

また、主治医の「復職可能」の診断なんですが、これは、あくまでも主治医の判断であるということです。こんなことを言うと失礼かもしれませんが、主治医は、その会社の産業医でなければ、会社の仕事や職場環境がよくわかりません。会社のことを知らない人の判断ですから、復職可能かどうかの判断は、あまり精度が高くない可能性があります。ですので、主治医が「復職可能」と診断したとしても、それを鵜呑みにしないで、産業医の見解を聞いて、会社が判断することが大切です。

 

ただ、では、主治医の意見は意味がないのかといえば、決してそうではありません。患者である社員さんのことを、一番よく知っているのが、主治医です。その主治医の意見を聞かない手はありません。社員さんの許可を得て、主治医と面談することをお勧めします。そして、会社でしてもらいたい仕事を説明し、それが可能かどうか、配慮すべきところは何か等の意見をうかがいます。その意見を、会社に持ち帰り、産業医と相談して、復職を決めましょう。

 

主治医の診断は、裁判でも尊重されることがあります。主治医の診断は、軽く扱ってはいけません。だから、会社は、主治医と連携をとって、社員さんの復職を考えなければなりません。会社から人が、話をしに来るわけです。医者も、会社の本気を感じます。ほとんどの医者は、協力的になってくれるでしょう。主治医とうまくつきあって、いい復職のしかたを考えましょう

 

主治医の診断や服飾計画については、それに詳しい社会保険労務士や公認心理師が、力強い味方になります。ぜひ、ご相談ください。