「お前のせいで負けたんじゃないよ!」悪ボスがいじめられっ子にかけた言葉 | 元中学校教師が教える学校のウラ話

元中学校教師が教える学校のウラ話

公立の中学校で25年間、勤務していた私が「クラス替えの仕方」「修学旅行」「部活」「未納」「モンスターペアレント」「学級崩壊」「いじめ」「不登校」「人事異動」など、今まで話すことができなかった、学校のウラ話をお伝えしていきます。

クラスの心が1つになった体育祭



1.「あいつは俺のクラスには、いらない!」教師の言葉
2.みんな、私のクラスに!
3.ボスは体育祭のリーダーに洗脳しよう!
4.自慢のクラスになったけど・・・
5.体育祭前の練習で他のクラスに惨敗
6.作戦会議のおかげでビリ脱出!
7.全員リレーで抜かれたのは、去年いじめられていた子
8.「相手の反則だ!」涙の訴え!
9.半周以上の差が開いても全力疾走!
10.お前のせいじゃねーよ!
11.感動の結末?



1.「あいつは俺のクラスには、いらない!」教師の言葉

ある中学校に赴任してもうすぐ3年目がたとうとしていたころ。

中学3年生のクラス替え会議が行われました。

そこでは、このような声が飛び交います。

「こいつはどうしようもない奴だ!」
「俺のクラスには、いらない!」

「この子は私の言うことを聞きません!」
「別のクラスにして下さい!」

「私は家庭があるので、勤務時間に帰ります!」
「放課後、不登校の子の所には行けません!」
「不登校の子は入れないで下さい!」

「あの子は何を考えているかわからない!」
「病気だから仕方がないけど・・・。」
「私には無理です!誰かと変えて下さい!」


2.みんな、私のクラスに!

主任はそれらの先生たちの意見に対して何も言いません。

結局、主任は私のクラスにそれらの特徴のある子を入れました。

・不登校期間1年の子(小6で不登校、中1の時に私のクラスで復帰、中2で別のクラスで不登校)
・不登校期間2年の子(中1から不登校)
・不登校期間5年の子(小5から不登校)
・男子の学年ボス(その子分数名)
・女子の学年ボス(その子分数名)
・男子のいじめっ子(数人)
・女子のいじめっ子(数人)
・男子のいじめられた子(2人:ボッチャリくん)
・女子のいじめられた子(3人:ポッチャリちゃん)


3.ボスは体育祭のリーダーに洗脳しよう!

私はこのクラスがそんなに嫌ではありませんでした。

この子たちの良いところを、たくさん知っていたからです。

クラスが始まる前、私はこのように考えていました。

「男子のボスは、動くのが好きだから、体育祭のリーダに洗脳しよう!」
「女子のボスは、ジャニーズが好きだから、その話で仲良くなろう!」
「いじめっ子は、思ったことをすぐに口に出すから、学習係にして注意をさせよう!」
「いじめられた子は、真面目にコツコツタイプだから、クラスの見本としよう!」など

もちろん、それ以外の子供たちもそれぞれの個性が活きるように、自分に自信が持てるように、褒めたり、叱咤激励したり、時には調子に乗らせたりしようと考えていました。

ライフスキルやエンカウンター、SSTなどを積極的に取り入れるようになったのもこの時期です。


4.自慢のクラスになったけど・・・

子供たちは、私の想像以上にいろいろな場面で活躍してくれました。

不登校の子供も順次、教室に復帰してきました。

もちろん、いじめもありません。

いじめられていた子も自分に自信をもち、意見も言えるようになりました。

そんな良い雰囲気の中、体育祭の練習が始まります。

ただ、私は体育祭で良い成績を取るのは厳しいと思っていました。

なぜなら、私のクラスには、ポッチャリちゃんやポッチャリくんの多かったからです。


5.体育祭前の練習で他のクラスに惨敗

体育祭本番前の練習で、他のクラスと全員リレーや長縄、学年種目で対決をしました。

しかし、結果は惨敗でした。全ての競技で学年最下位です。

それでも元学年ボスで体育祭のクラスリーダーになった福井くん(仮名)は諦めません。

彼は、私の所にきてこう言います。

「先生、優勝するための作戦会議に参加して下さい!」

現状を把握できていないのか?それとも、絶対に諦めない男なのか?どちらにしても、とても前向きな発言です。


6.作戦会議のおかげでビリ脱出!

体育祭が始まりました。

作戦会議の甲斐もあり?学年種目と長縄ではビリから2位という、結果を残すことができました。

ただ、総合得点はダントツのビリを突っ走っています。

それでも元学年ボスの福井くんは諦めません。クラスの仲間を集め円陣を組み、こう言います。

「最後の全員リレーに絶対に勝とうぜ!」


7.全員リレーで抜かれたのは、去年いじめられていた子

福井くんと全員リレーの責任者は、最初に足の速い子を集めることにしました。先行逃げ切りの作戦をとったのです。

最初は独走していた私のクラスですが、徐々に2位との差が狭まってきます。

すると、2位とほとんど差がない状態で、昨年、いじめられ、不登校になりかけた高山くん(仮名)にバトンが渡りました。

高山くんは体重80kgのポッチャリくんです。

クラスのみんなが高山くんを応援します。

高山くんもその声援に応え、死に物狂いで走っています。

高山くんがコーナにさしかかったとき、遠心力で?高山くんが隣のコースに降られました。

そこを見逃さなかったのか、2位の子がインコースから強引に高山くんを抜こうとします。

体の接触もありましたし、2位の子の足が1コースの内側に出ていたようにも見えました。

ただ、審判?の生徒の旗はあがりません。

結局、高山くんは抜かれてしまいましたが、その後も必死で走り続けました。


8.「相手の反則だ!」涙の訴え!

走り終わった高山くんに声をかけようと私が近づくと、高山くんが怒っています。

「先生!」
「あいつ、インコースから抜いたよ!」
「絶対にコースの内側に足が出てたよ!」
「反則だよ!」
「ずるいよ!」

私のクラスで自分の意見を言えるようになった高山くんでしたが、あくまでも基本はおとなしくて優しい子です。

去年、いじめにあって、不登校になりかけた子供でもあります。

そんな高山くんが、このように声を荒げることは今まで1度も見たことがありません。

すると、高山くんはこう言いながら涙を見せました。

「するいよ・・・。」
「反則だよ・・・。」


9.半周以上の差が開いても全力疾走!

結局、高山くんの後に控えていたポッチャリ軍団が次々と抜かれ、ダントツのビリでゴールを迎えました。

ビリから2位のクラスと半周以上の差が開くほどの大差でした。

ただ、そんな惨敗にもかかわらず、抜かれたポッチャリ軍団もアンカーだった福井くんも、最後まで手を抜かず全力で走ってくれました。

担任としては、その全力の姿を見ることができただけでも嬉しい事です。


10.お前のせいじゃねーよ!

閉会式が終わった後、高山くんがみんなの前で泣きながら、頭を下げてこう言います。

「みんなゴメン!」
「俺が抜かれたせいでビリになってしまって!」
「俺が抜かれなきゃ・・・。」
「みんなゴメン!」

ぶっちゃけ、高山くんが抜かれなくても、その後のポッチャリ軍団で抜かれています。

半周以上の差をつけられて負けているので、高山くん一人の問題ではありません。

すると、リーダーの福井くんが高山くんにこう言います。

「バカ!」
「お前のせいじゃねーよ!」
「リーダーの俺のせいだよ!」

元学年ボスの体育祭リーダーの福井くんも涙目です。

すると、去年、高山くんをいじめていた子たち(私のクラスではいじめていません)もこう言います。

「そうだよ!お前は悪くないよ!」
「俺がもっと速ければ良かったんだよ!」
「私も、もっと練習すれば良かった!」
「高山くんが悪いんじゃないよ!」


11.感動の結末?

ここで高山くんと、福井くんが抱きしめ合ったり、堅い握手をしたりすれば、ドラマのようで感動的なのですが・・・・。

なぜか、福井くんが泣きながらこう言います。

「よし!みんなで高山を胴上げしよう!」

最後は、高山くんを胴上げして終わるという、よく分からないことになってしまいました。

ただ、1ヶ月後に行われた合唱コンクールでは、クラスがさらに一致団結して、見事に「金賞」をとることができたのでした。


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