- 「方言コスプレ」の時代――ニセ関西弁から龍馬語まで/岩波書店
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田中ゆかり著『「方言コスプレ」の時代』読了。
朝日新聞の読書欄で紹介されているのを見てから、ずっと読みたかった本。
タイトルにある「方言コスプレ」とは、話し手が生まれ育った土地の方言ではない他の地方の「ヴァーチャル方言」(正確さではなくその土地「らしさ」を重要視した方言)を、その場の空気や演出しようとするキャラクターによって着脱すること。
ツッコミをするときに、関西出身ではない人が「なんでやねん」と関西弁を使うのが解りやすい例。
この著書では、方言が「恥ずかしい」とされていた時代から、現代のように「おもちゃ」として扱われるようになるまでの価値の遷移や、
数多ある方言の中でも特に有名な大阪方言や九州方言などの「方言ステレオタイプ」がどのように形成されてきたか、
またその「方言ステレオタイプ」の流通にメディアがどのように影響を与えてきたか、
そして、「方言コスプレ」を行なう地域間の格差とそこから見えてくる問題などが、丁寧に解説されている。
私は幕末ファンなので、「組織におさまりきれない個性を持った」歴史人物が、成長とともに「新しいヒーロー像を確立するひとつの方策」として「方言キャラ」が与えられるという考察が特に面白かった。
確かに、西南戦争で新政府に対抗した西郷さんは「薩摩弁キャラ」だけど、新政府で活躍した大久保利通には、同じ鹿児島出身でも薩摩弁のイメージないもん。
私はあまり「方言コスプレ」はしないけれど、「方言萌え」にはとても共感する。
自分が関西圏に住んでいたせいもあってか関西弁(と一言で言っても、大阪と京都と神戸ではまた違うけど)が一番好きで、関西弁を喋る人には男女問わず親近感が湧く。
それに、「萌え」以外の感情も、方言のほうが揺さぶられる気がする。
たとえば私の大好きな中島みゆきさんの「ファイト!」は、標準語の部分より方言の部分の歌詞のほうがジーンとくる。
だから「方言コスプレ」にポジティブな感情を持ってこの著書を読み進めていたけれど……問題もあるのだなぁ、と。
私はその他の地方の方言も標準語に比べて好きだけど、「どこの方言が好きか」と言われてまず思い浮かぶのはやっぱりイメージの強い博多弁や広島弁だ。
著者が警鐘を鳴らしているように、「方言コスプレ」が進行し、イメージが強くて着脱のしやすい方言だけが生き残り、その他の方言が衰退していくのは……悲しい事態だと思う。