◆養介護施設従事者(介護職等)による高齢者虐待の特性
ある介護施設でまたも虐待疑いというニュースが報道されました。「入所者のベッドを柵で囲うなどの不適切な身体拘束が日常的に行われていた疑い(NHKニュース)」とのことです。
これに対して、施設側は、「身体拘束があったことは事実で反省しているが、虐待を指摘されるようなことはしていない」との見解を示しているとの報道内容でした。
もちろんベッドを柵で囲み身の自由を奪うという行為は、身体拘束にあたります。しかし、この事案で筆者が注目しているのは、「緊急やむを得ない場合の身体拘束」との境界線上にあるとてもグレーな部分の解釈です。
これは筆者がこれまで様々なケースを研究分析するなかで、大きな懸念材料となっています。介護施設が、身体拘束3要件(切迫性・非代替性・一時性)を誤認あるいは拡大解釈することによって、全国にまだまだ今回と同様の不適切ケアが存在するのではないかといことです。身体拘束の適正化の推進が厳格化される中で、発生したこの事案は、氷山の一角ではないかと懸念しています。
介護施設での高齢者虐待は、大きく分けると一人の介護職を取り巻く様々な一因が重なりストレスの増加によって感情コントロール不能となり、突発的あるいは意図的に虐待に及ぶというケースと、不適切ケアなどであるにもかかわらず、職員の認識不足や常態化(馴れ合い)によって、気づかないうちにその対応がエスカレートしていき虐待を積み重ねるというケースがあるのではないかと捉えています。
つまり前者は一個人とその職場環境との関係性、後者は組織的構造に潜む認識不足などです。介護人材不足の折に、「非代替性」、つまり他に替わる対応が見つからないという状況をどこまで丁寧に、愚直に取り組もうとするかは、法人組織あるいはそのスタッフに熱意、専門職としてのプライドにかかってくるのではないかとも感じる。
【次回テーマ】第8回:不適切ケアと虐待の関係性について
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このブログは、高齢者虐待防止研究を専門分野とする筆者(高齢者福祉研究☆梅沢Lab主宰 梅沢佳裕)が、これまで発出されてきた論文、専門誌、Web、その他さまざまな知見や情報をもとに、ブログ「介護施設における高齢者虐待防止と権利擁護」として配信しているものです。
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