22
○中音域の完成後に高音をのせる
一番高い音を出して、その音から上ばかりを出そうとがんばっている人が少なくありません。その場合、よほど気をつけなくては逆効果となってしまいます。
まず、出している一番高い音が喉をつめずに楽にひびいているかをチェックすることです。
ほとんどが力まかせに喉声かあてただけの声になっています。
そうでなければ、胸に支えのない浮き足だった芯のない声を出しているかです。声の力を抜くことで、即成栽培したものを完成した声と思っている人も多いのですが、そういうことなら、誰でもすぐに、それっぽくはできます。しかし、これではカラオケ、エコー頼りの普通の人の声から抜けられません。
きちんとした中音域の声の上にしか、迫力ある高音(中高音)はのりません。高音をより伸ばすためには、この中音域を充分に完成させなくてはいけないのです。
そこで本当にプロのように表現力をもてたなら、おのずと先へ進むことになるでしょう(ハイトーン、裏声、ファルセットは別です。)。
高い音をとるためだけに、鼻に浮かせたような弱々しい声や力だけでもっていった雑な声が、どうして歌に使えるでしょうか。
とはいえ、現実には、そういう軽く細い声で共鳴がなくても、音響技術に頼って人にみせられるプロやトレーナーはいます。しかし、その方が、生来の声の質から問われ、先の可能性としては難しいことを知ってください。何とか音に届くようにはなっても、それを使いこなすのも、それで認められるのも、相当難しいことだからです。
いつも考えて欲しいのは、あなたにとってどうかということです。そして、トレーニングによって変えられるところに絞り込むということです。
高音、高音と、音域を広げたいのはわかります。しかし、へたに発声のくせを、無理な音域でつけていくと、長年やっていれば声になってくるはずの中低音域の声までも荒れていくなら、大して変わりません。
それで自分の才能のなさと決めつける結果となってしまうのは、あまりにももったいないことです。
ピッチ(音高)だけに正しく届かせている芯のない声は、ひびいても弱々しく、ことばとして歌うにはパワーに欠けます。細くとも芯のしっかりした発声が基本だということを、忘れないでください。