◯基本が才能を導き出す
プロとアマチュア、いや世界と日本といってもよいでしょう、そこには明らかに声そのものの力に大きな差があると思いませんか。その原因を知り、そこを埋めるほどのものでないと、トレーニングといいたくありません。また、成果をみるにも、ずば抜けないと成り立たないのです。
それをしっかりと踏まえ、行なおうとしているのが、私の研究所でいうヴォイストレーニングです。
それぞれのギャップを踏まえた上で、共通の要素や条件を満たせるように抽出し、習得していくからです。
カラオケなら、懇切丁寧に歌い方まで教えたらよいのですが、一流のアーティストはそこからは生まれません。できることは、基本を、身から離れようもないくらいに、しっかりとつけておくことです。
その人のなかの最もよいものを引き出せる環境を整えること、そうして初めて、その人ならではのオリジナリティが出てくるのです。
多くの人はそれを才能と呼んでいます。しかし、それは、こだわり続けた結果として生まれてくる、本当のその人のもつ価値なのです。世の中が認めようと認めまいと、しっかりと身につけた基本の上に得られたものなのです。
人は、同じ期間に同じ努力をしても、同じことができるとは限りません。しかし、努力の方向が正しければ、次のステップに行けるようになります。それがヴォイストレーニングだと思います。
音楽の三要素は、ことばとメロディとリズムです。
このうち、メロディのトレーニングは、読譜や音程のチェックを中心によく行なわれています。リズムとことばのトレーニングもそれぞれにあります。メロディがつくと、音が上下するために、慣れた人でなくては、ことばをしっかりと言えなくなります。
リズムだけなら、案外とうまくできます。最初は、リズムにことばをつけて読むトレーニングをしてみましょう。手足でどこかを叩きながらやってもよいでしょう。大きな声でしっかりとやってみましょう。
課題を覚えたら、体でリズムをとりながら行なうとよいでしょう。リズムマシーンやメトロノームなどを使うとよいでしょう。
このトレーニングには、もうひとつのメリットがあります。それは、ピアノの音がつかないということです。
ヴォーカルのトレーニングに必ずしもピアノの伴奏は必要ありません。弾いているピアノの音に乗っかって歌う人が多いのです。それに依存せず、頭の音を弾いてもらったら、その後に無伴奏で歌うとよいでしょう。
自分の中に予めメロディのラインをもって、そこに声でことばを置いていく、これを何度もトレーニングすると、フレージングの感覚が磨かれてきます。声と耳のためによいのです。