○世界に文化を伝える声をもつこと
私のヴォイストレーニングの基本的な考え方を述べてきました。
よくよく考えてみると、声とは、今後、日本が文化大国となり、
日本人がこれから世界にはばたいて国際人となるときに必要にされる条件、
つまり、マナー、プレゼンテーションから考え方や行動規範にまで
深い関わりがあることを強く感じます。
個人としての魅力を身につけて発揮していくであろう日本人が、
これから直面する問題が、声というものを通して浮かびあがってくるのです。
アーティストは、常に個人としての自己の世界を確立し、
その世界を伝えることを人生における自らの使命として果たそうとしてきました。
日本人にはこの個の確立という意識がどうも欠けていて、
これがしっかりとした声を出せない背景にあるように思われます。
たとえば、ヴォーカリストになるということは、音楽という武器を使って、
何らかの世界を伝えようとする表現者として、
どうありたいのかを問い続ける道を選ぶということです。
しかも音楽は、国境を越えるというすばらしい可能性をもっています。
ここのヴォイストレーニングも同じように、
日本の中だけで評価される声や日本人にしか通用しないことばでなく、
世界に対して同等もしくはそれ以上のコミュニケーション・ツールとして
声が使えるところまでを目標としています。
それはいつの日か、世界に冠たる日本人のヴォーカリストや俳優などの誕生に、
何らかの形で寄与することがあると信じています。