令和4年・神奈川県独自地域限定保育士試験(以下「神奈川県試験」といいます。)の筆記試験まであと9日ということで、まずは難関科目の一つ「教育原理」の神奈川県試験における出題傾向と対策について考えておきたいと思います。
神奈川県試験の筆記試験の出題範囲については、神奈川県試験の「受験の手引き」p24に、
「出題範囲については、全国試験と同じになります。」
「筆記試験における法令等については、令和4年4月1日以前に施行されたものに基づいて出題します。」
と記されているので、今年の全国試験(後期)の筆記試験と出題範囲が同じということになります。
ですので、今年の全国試験(後期)の筆記試験に対応した教材で、神奈川県試験の筆記試験に対応できるということになります。
神奈川県試験が始まった平成29年以降の5回の筆記試験の「教育原理」の問題を見てみると、ほぼ全国試験の「教育原理」と出題傾向は変わらず、全国試験の出題形式を踏襲しながら、同じような事項について、内容を少しずつ変えて(ずらして)問題を作成している、といった感じの出題となっています。
一方で、
令和2年・問10
「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について(通知)」
令和3年・問10
「外国人児童生徒等の教育の充実について(報告)」
のような、準備している受験者はいないであろう通知や報告からの出題も見られますが、このような出題は全国試験でも見られます。
このような問題は、空欄補充問題か、「不適切なもの」を選ぶ問題が多く、落ち着いてじっくり読めば、文脈や組み合わせ、保育士試験全般における常識から対応できる場合が多いので、準備を考える必要はなく、また無理に準備しようとして手を広げようとすべきではないでしょう。
そのようなわけで、神奈川県試験対策としても、全国試験対策と同様に、準備可能な問題を確実に取るべく、土台となる重要法令や重要人物をしっかり押さえ切る、妥協を捨ててしっかり覚える、という姿勢が大切になってきます。
以下、準備可能な優先学習事項をあげておきます。
1 基本的法令問題について
昨年の神奈川県試験では、「教育基本法」・「学校教育法」ともに出題がなかったので、この2法については、特にしっかり準備しておきましょう。
● 「教育基本法」
は、ほぼすべて(前文、1~17条)、できるだけ「覚える」ことが必要です。
続けて同じ条文が出題されることすらあるので、ヤマは張らないほうがいいでしょう。
● 「学校教育法」
は重要条文(1条、11条、21~27条、72条、81条など)だけでいいと思います。
11条は懲戒、72条は特別支援学校ですね。
● 「幼稚園教育要領」
も超頻出事項です。
ただ、第1章だけでも内容量が多いので、「覚える」のは難しく、「目を通しておく」という姿勢になるかと思いますが、どうしても手がつかないという方は、テキストで抜粋されている部分(リベンジセットのポイント集ならp26・27)の抜粋部分だけでも読み込んでおきましょう。
また、昨年は「日本国憲法」26条1項・2項が出題されているので、今年は、
● 「児童の権利に関する条約」28条・29条
● 「児童憲章」
あたりをしっかり押さえておきましょう。
2 人物(業績)・歴史問題
これについても、「教育基本法」と同様、ヤマは張らないほうがいいと思います。
過去に出題されたもの(特に全国試験で出題されて、神奈川県試験で出題されていないもの)、お手持ちのテキストやリベンジセットのポイント集・予想問題集に載っている程度の重要人物と業績・キーワードはしっかり押さえましょう。
「私塾」などは、出題されるたびに「難しかった」という声を耳にしますが、一定の範囲のものしか出題されません。
世阿弥、寺子屋、正統的周辺参加、(レイヴとウェンガー)ニュージーランドの「テ・ファリキ」など、全国試験で出題されて神奈川県試験で出題されていない事項は確実に押さえておきましょう。
「学制」や「教育令」などの歴史的事項も内容量は多くないので、「古い順に並べた場合」の問題には対応できる程度に押さえておいたほうがいいと思います。
「著者当て問題」については、著作を読んだことがあるかどうかを試すわけではなく、その著者に関するキーワードを押さえていれば対応できる問題がほとんどなので、通常の人物・業績問題と区別することなく、コメニウスやペスタロッチ、倉橋惣三などの超重要人物についてはやや手広く、キーワードや業績を押さえておくことで対応していけばいいと思います。
過去問で出題があるのに「盲点」となりそうな人物と代表的なキーワードを挙げておきます。
● ヘルバルト:教育(訓育)的教授、4段階教授法、学習者の側からみた段階説
● コンドルセ:フランス革命期、近代公教育のパイオニア
● パーカースト:ドルトン・プラン(「自由」と「協同」を原理とする個別学習の方法)
● ウォッシュバーン:ウィネトカ・プラン(「一般共通科目」と「創造的集団活動」の組み合わせによる総合的な教育)」
(※ 上記2つは、主として、プラン名とその内容についての出題でした。)
● 澤柳政太郎:成城小学校、『教育問題研究』
● 羽仁もと子:自由学園
● 鈴木三重吉:『赤い鳥』
3 その他諸々について
(1) 教育の実践等
「教育の実践」関係の抽象論としては、カリキュラム(教科・経験、「隠れた」など)と教育評価(絶対評価・相対評価など)は、出題サイクルに関わらず、基本的事項として、確実に押さえておきましょう。
(2) 用語
● IoT(あらゆるモノがインターネットにつながる仕組み)
● ICT(情報通信技術)
● ESD(持続可能な開発のための教育)
● キー・コンピテンシー(主要能力)
● 超スマート社会(Society 5.0:①狩猟社会、②農耕社会、③工業社会、④情報社会に続く人類史上5番目の新しい社会)
などの意味を問うような用語問題については、やはり全社協のテキストが出題の一つの基準となっていると思われますので、今からでも、全社協のテキストの巻末の「項目索引」に掲載されている語句で、「まったく知らない語句」がなくなるようにチェックしておけるといいでしょう。
(3) その他法令・資料問題
準備不能な資料等からの問題については、準備が求められているわけではないと考えられるので、何とか準備しようと手を広げる必要はありません。
準備不能な資料等からの問題を見たら、ひるむのではなく、「国語の問題が出た」と捉えて、冷静に丁寧に記述を読みつつも考えすぎずに、常識的判断で素直に解答すれば、正解に至るものです。
その一方で、客観的に重要と考えられる資料等については、できるだけしっかり押さえて、出題された場合は、確実な得点源とすることが大切です。
平成30年6月に閣議決定された「第3期教育振興基本計画」は、全国試験(令和3年・後期)で出題され、神奈川県試験で出題がないので、今回、出題されてもいいと思われます。
● 「第3期教育振興基本計画」(文部科学省HP)
IoT、ICT、超スマート社会(Society 5.0)などの用語に注意しながら、できるだけ読んでおけるといいのですが、全文の量は「半端ない」ので、上記の文部科学省HPの「概要」か、「リベンジセット教育原理」のダイジェスト版の抜粋部分(p54~61)だけでも見ておけるといいでしょう。
その他では、
● 「体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について」
● 「いじめの防止等のための基本的な方針」(最終改定:平成29年3月14日)
あたりが出て来てもいいと思います。
(参考)
● 「「いじめの防止等のための基本的な方針」の改定及び「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」の策定について」(文部科学省HP)
比較的新しい法律では、
● 「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」
にざっと目を通しておけると安心だと思います。
これですべてではありませんが、最後の追い込み学習のメリハリづけの参考にしていただけると幸いです。
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