英訳の問題がある大学はどのぐらいの割合なのでしょうか?
世の中には、医学部受験のデータブックのようなものを出されているところがあり、私立医学部の出題傾向と出題範囲などを載せてくれています。 その中のひとつ、時事通信社の 全国医学部最新受験情報を見てみると、2017年~2019年まで間、全国21私大医学部のうち、和文英訳を出題していたのは、7私大でした。自由英作文は5私大。
一方、和訳はどうかというと21大学中、この3年の間に1回でも出題があった大学は15私大、3年連続で和訳を出題したのは、10私大でした。
私学だけをみると英訳より和訳の問題を出す大学が多い印象ですね。
国公立の医学部の英語の2次試験の問題ではどうかというと、このような情報誌でまとまった内容のものを見たことがないのでわからないのですが、印象としては、和訳(または、日本語での要約も含む)を出題している大学がかなりあり、英訳も多くの国公立大学の出題範囲に入っていると感じます。さらに、傾向として、自由英作文や課題型英作文は増えているのではないか?と思うのですが、どうでしょうね。
つまり、国公立の医学部を目指すのであれば、かならず、和訳と英訳にはある程度時間をかけないといけないように思います。
また、英作文や英語長文の和文要約のような問題も大学によっては出題されますので、その対策も必要かと思います。
ただし、和訳や英訳ができないと英作文・和文要約は歯がたたないと思われますので、順番としては、英訳>和訳>英作文>和文要約 の順に時間を見積もって勉強してはいかがでしょう?
これは私の個人的な印象ですが、もっとも英語の受験勉強で時間がかかると思うのが「英訳」です。
これだけは、勉強を後回しにしていて、いくら最後の2か月で馬力を最大にあげて挽回しようとしても太刀打ちできない分野だと思います。
というわけで、個人的に今から始めて、必要と思う総学習時間を仮に「150時間」と提案します。
(現在の英語力を高校3年生1学期現在のものと仮定。)
「英訳」がある程度不安なくできるようになるまでに今から、共通試験が行われる1月半ばまでに必要な総学習時間だと思ってください。長文読解、共通テスト用の勉強、和訳、などの勉強時間はここに含まれません。それでは、どのような頻度と濃度で勉強すれば最も効率がよいのでしょう?
例えば、
① 6月~1月半ばまで毎週平日だけ1時間ずつ勉強する。→約160時間
② 6月~9月までは毎週土日だけ1時間ずつ勉強時間をとり、10月~1月半ばまでは毎週土日に3時間ずつ取る。→約124時間
③ 毎週平日の2日だけ1時間ずつ勉強し、土日のどちらかに2時間勉強、というパターンで6月~1月半ばまで。→約128時間。
1週間の英訳総学習時間はそれぞれ、
① 約5時間 (今から受験直前までずっと)
② 9月までは約2時間、その後は約6時間
③ 約4時間 (今から受験直前までずっと)
という感じになります。
②と③は先にあげた150時間という目標に達していませんが、足りないと自覚した場合にちょっとした長期休暇の時などに、自分で増やすなどして調整すればいいのではないでしょうか?それよりも、毎週取り組むペースの目安をつくることが大切だと思います。
おススメは①か③です。なぜなら、このふたつは、英訳をやる日とやらない日のブランクがあまりあかないからです。学校の課題や、他の科目の学習時間との兼ね合いもあると思いますので、平日に1時間というのは大体妥当ではないかと思います。
さて、なぜ、「英訳」の勉強には時間がかかると感じているかというと、覚える範囲がとても広いと思うからです。
例えば、以下の表現のうち、今の時点でどのぐらいすんなり英訳がでてきますか?
(問題の一部は大学入試 最難関大への英作文 桐原書店 大矢復著 から抜粋)←私のおすすめ
〇 交通は全面的にマヒした。
〇 停電があった。
〇 住民は避難するよう警告された。
〇 彼はわざわざ来てくれた。
〇 知らない単語をいちいち辞書で調べた。
〇 彼は免停になった。
〇 彼は罰金を取られた。
〇 気分転換に外食しない?
〇 日本社会は急速に老齢化している。
〇 差がどんどん広がっている。
〇 下水を海に破棄する国があるのは遺憾だ。
〇 医学の進歩によって、生活の質が改善している。
〇 化石燃料が枯渇しつつある。
〇 臓器移植への需要は年々増加している。
〇 予算オーバー。
〇 疑いの余地がある。
〇 二酸化炭素排出量に関して条約を結んだ。
答え:
〇 Traffic was totally paralized.
〇 There was a blackout.
〇 The inhabitants were warned to evacuate.
〇 He took the trouble of coming.
〇 Look up every word in the dictionary.
〇 He got his driver's license suspended.
〇 He got fined.
〇 Why don't we eat out for a change?
〇 Japanese society is rapidly aging.
〇 The gap is getting wider and wider.
〇 It is pity that there are countries which dump sewage into the ocean.
〇 Thanks to progress in medicine, the quality of life is improving.
〇 Fossil fuels are running short.
〇 The demand for organs for transplant has been increasing year by year.
〇 Beyond the budget.
〇 There is room for doubt.
〇 Conclude a treaty on the amount of CO2 emission.
これは短文の例ですが、この短文でさえ、下線部のような表現がさらっと英語でにできるようになるには、まず、単語の知識はいりますし、日本語の内容をかみ砕く練習も必要になります。 日本語を英訳しやすい別の表現に「ほぐす」方法にも慣れ親しんでおくとよいと思います。 例えば、「いちいち単語を」という表現は「(いちいち)ひとつひとつの単語を」ということで、英語にすると、「every word」です。このように日本語をかみ砕く(ほぐす)考え方を頭の中に確立するためには、ある程度の練習とそのための時間が必要だと思うのです。
受験本番が近づくと、緊張から同じ時間でも圧縮されているように(短く)感じると思います。まだその緊張も圧縮も起こりにくい今のうちに よい参考書を1つ決め、こつこつと英訳の勉強を続けていくことで、受験期の終盤では落ち着いて他の科目に取り組めるのではないかと思います。
おすすめの英作文の参考書を選ぶためには、信頼している先生がそばにいるなら、その先生にアドバイスと求めるとよいと思います。英語の先生であれば、必ずおすすめの英作文の参考書をお持ちです。やる気のある生徒には必ずアドバイスしてくれると思いますので、ぜひそれを1冊完璧に取り組みましょう。
(以前も書きましたが、おすすめの参考書の取り組み方は、全文英訳です。 ノートの左に和文を書き写し、右がわに英訳の答えを書いていきます。国公立によっては和訳も出題されますので、和文を書き写す作業が和訳の無意識トレーニングにもなります。)
大きな山を登るのも、ほんの小さな着実な一歩からです。