【大師高校野球部は】

 1983年4月、神奈川県立高校として共学校で設立開校。野球部も創部され、桐蔭学園で甲子園優勝経験がある大津省吾監督が就任する。

 

 創部2年の1985年秋季県大会でいきなりベスト4、翌年春季県大会でも同じくベスト4.。その夏の第一シードとなる。県立高校の星と注目されるが、しかしその後なかなか成績が伸びず。

 

【現野原監督は家庭科の先生】 

 現在の野原慎太郎監督は2012年に同校に赴任し秋から監督に就任する。私自身は野原先生とは面識がないが、ふとしたことからその存在を知った。近々野原監督の指揮を生で見ることとなる。

 

 2017年夏には3回戦で名門桐蔭高校を4-3で破り、5回戦で桐光学園に2-4で惜敗しベスト16。2015年夏もベスト16だった。

 

 野原監督は、東海大相模高校野球部出身で、2000年の選抜優勝チームの背番号10の投手。選抜では、エースの筑川投手がほとんど一人で投げ、野原投手がマウンドに立つ場面は残念ながらなかった。

 

 高校卒業後、小学校の先生になろうと、横浜国大教育学部に入学する。しかし大学1年の時、家庭科のジェンダー論の講義を聞いてそれまでの見方が180度変わったそうだ。

 

【「男は仕事、女は家事」からの脱皮】

 それまでは、「男は男らしく、家事といったらイコール主婦の仕事」と思っていた。

 

 しかし、「性別による役割分担が必ずしも必然的なものではない」「“家事は女性”という考え方は、専業主婦を良しとする教育の中で再生産されてきているのではないか」と教わり、世界の見方が変わる。

 

 大学2年の時に家庭科を専攻に選び、大学院にも進み「家庭科教育学」を学んだ。そして県立高校の家庭科の場へ飛び込む。「大学の授業で受けたジェンダー論の感動をいかに生徒達に伝えられるか」。

 

【女子マネを置かない】

 野球部では、女子マネを排する。「グラウンドで活躍する男子を女子が裏で支える」、そういう役割分担を疑問に思う。実力があれば、ルールを変えて女子が高校野球の選手になってよいと思う。

 

 そして「学び」。「勉強」は、「勉めることを強いる」。教科書や先生の話を一方的に聞くだけ。「學」という字は、教室で子どもたちが考えを交わし合い、それを見守り適切な方向へ導いていくことが本来の意味。それを知り衝撃を受ける。

 

 家庭科教員の道を選んだのも、「現実の生活に密着した題材を学べる教科だと思ったから」という。「保育(家族)」「食物」の分野を中心に授業を進める。

 

【甲子園を本気で狙っている】

 野球部でも、その指導は「熱血」のようだ。ブルペンばかりで甲子園のマウンドを踏めなかった野原監督。「だからよかったとも思っている。こいつらの気持ちにもなれるから」。 

 

 今神奈川県で注目されている若手監督の一人。この夏、大師高校がどんな戦いを見せてくれるか。来週11日からハマスタで戦いが始まる。

 

 チームのテーマは「相模基準」。強豪校相手では、1つの怠慢なプレーが命取りになる。「相模基準」に達しないと、頂点には届かない。

 

 野原監督はインターネットで大量の「監督日誌」を公開している。読んでいてとても勉強になる。「甲子園を本気で狙っている」。

 

 高校野球選手の食事について、ぜひ本を作って欲しいものだ。全国の沢山の選手の親や監督・コーチたちに喜ばれること請け合いである。