「戦力外通告」――。プロ野球という華やかな世界に入った天才たちに訪れる、残酷な瞬間です。
著者は、横浜ベイスターズで活躍しながらも、宣告を受けてプロ野球界を去った経験を持つ高森勇旗さん。本書は、高森さんと同じように戦力外通告を受けて第二の人生を歩み始めた、25人のプロ野球選手へのインタビューです。インタビューした元選手には、コーチという立場で現役以上の結果を出している人もいれば、野球をスッパリとあきらめて公認会計士や高校教師になった人もいます。彼らはプロ野球で戦った経験があるから、違うステージでも力を発揮できるのです。
「戦力外通告」はどんな世界にも存在するシビアな現実です。しかしそれゆえ、本書で語られる元選手たちの吐露は、多くの読者の心を打つことでしょう。(ウェッジ公式HP)
初読。
2017年12月初版。前述HPによると4版まで重版。
読むまで著者が元選手だと全く知りませんでした。田中将大選手と同学年。
「ほとんどのプロ野球選手は、試合に出られない体験をしていない。逆を言うと、試合に出続けたからこそプロになれた」。
華やかな世界だけど、いつかは来る選手引退。
野球はポジションにもよるけど、社会人なら脂がのった40歳まで、現役でいられる選手はほぼない。
そしてその後野球にかかわり続けられる人も限られている。
今作に出てくるほとんどの選手が「怪我」を乗り越えられなかったこと。
その怪我のシーンまで描写されている箇所は、「致命傷」の重さを感じます。
引退後どうしてるかも多く書かれていて。
9年かけて公認会計士になった、元阪神:奥村武博さんの話。
「プロ選手のセカンドキャリアをサポートしたい。現役時代に資産形成し、引退後は社会で活躍できるよう、その選択肢をたくさん用意したい」。
そんな奥村さんの挑んだ9年間。
あきらめてコンサル業に流れそうになった時の、奥さんの言葉がガッツーン!
「野球も公認会計士も中途半端な人間に、コンサルされたい人なんていない。このままいったら、壁にぶつかる度に中途半端な人生になる」。
ずっと支えてきた家族ならではの言葉です。
元千葉ロッテ:G・G佐藤さんの話にも頷きました。
「野球もビジネスも、共通するところはたくさんある。練習→試合→反省。このサイクルは同じ。企画→商談→反省。継続が次につながることは、どこも同じ」。
プロという頂点を経験したからこそ、うまく人生を切り返し。
その先に駒を進めていけるんだろうな。
古くは小早川毅彦さんから、岩村明憲さんなども登場してました。
あまり成績を残せなかった私が知らない元選手の話も。
著者が同じ野球人だったからか、インタビューや文章の構成も読みやすく。
とても興味深く読んだ一冊でした。
今日も一日お疲れ様でした
明日もいい日になると、いいね。