モンブランのマイスターシュテュック149を買った | 復刻版

復刻版

栄光より挫折、成功より失敗、勝利より敗北…。

モンブランの代表的な万年筆、
マイスターシュテュック149を買った。
ザ・万年筆と言うべき、
多くの作家先生も用いる
最も伝統的な形の万年筆だ。

私は従来、ペリカン党であり
モンブランは関心がなかった。
が、ある時から一変した。
今から十数年前に
小倉にある「松本清張記念館」を
訪れた時からである…。

この「松本清張記念館」は、
清張氏ゆかりの品々が展示され
自宅の書斎や居間が
再現されていた。

その書斎には氏が愛用していた
万年筆が並べられていたが、
細身の胴のものに交じって、
マイスターシュテュックの
149や少し細い146があった。

「やっぱりカッコいいな!」と、
万年筆っぽいデザインに
完全に魅了されてしまった。
そして、いつか買おうと望んだ…。

おもろまちにあるDFS沖縄に
モンブランが入っているが、
沖縄へ行く度に寄って、
マイスターシュテュックを
見せてもらっていた。

おばちゃんの従業員がいたが、
「いつか買うから」
「今度、買うから」と、
いつも口先ばかり…。

行く度に言って、
買う買う詐欺の状態だったが、
おばちゃんもいなくなり、
DFS沖縄へ寄ることも忘れていた。

その当時、見ていたのは、
一番太い149ではなく、
少し細身の146の方だった。
149は太すぎると感じたからだ。

しばらく後に下関へ行き、
関門トンネルを歩いて
門司まで渡ったが、
偶然、松本清張氏の著作、
「時間の習俗」の舞台、
和布刈神社を発見した。


ここが「時間の習俗」の
和布刈神社なのか!
和布刈神事も見てみたいなと、
ドラマのシーンが甦り、
感慨深い気分になった。

その時に「松本清張記念館」のこと、
マイスターシュテュックのことが
再び脳裏に過って、
改めて買おうと決めたのだった。

それから丸の内の丸善や、
神保町の三省堂、
はたまた銀座のモンブランで、
再三、眺めてはいたものの、
叶うことなく時間が経過した。

初めて見た頃の価格は、
確か8万円台だったと思うが、
その後に値上がりと、
今の円安を経て、
10万円を超えてしまった…。

そのような状況の中で
今回、中古品を発見した。
太軸の149だったが、
時間の経過が好みを変えたのか?
146よりも重厚で気に入った…。

試し書きをさせてもらったが、
中古万年筆なのにクセも無く、
ニブの程度は良好だし、
80年代半ばの製造だと思うが、
ボディも美品だった。

モンブランは偽物が多いが、
私の目利きのチェックポイント、
数か所は条件を満たしていて
本物だと確信したゆえ、
即買いしてしまったのである。

あれだけ何回も見て、
購入を躊躇っていたのに、
即買いを決めたが、
縁とはこういうものなのだろう。
万年筆も「買ってほしい」と
訴えているように感じた…。

返金がきくとはいえ、
不良品を懸念したが、
家に帰って、
念のために掃除をして、
いろいろと試した結果、
全く問題なく良好である…。

良い道具はやっぱり良い。
字がすらすらと書けるし、
私の人生の道しるべだ。
また、生きていくうえで、
お守りにもなる。

換金性があるので、
お金が底をついても、
売れば何日かは、
生活することが可能なのだ。
そういう意味でのお守り…。

長年の願いが叶って、
新年早々、良い買い物が出来た。
大満足である。
でも、お守りとしての現金化は、
ならないことを願うが…。