悲しきオーディオマニア | 復刻版

復刻版

栄光より挫折、成功より失敗、勝利より敗北…。

日がな一日、オーディオの清掃をした。
やらなくては、と思っていたのに、
元来のナマケモノにかまけて、
ずっと行っていなかった。
恐らく5~6年ぶりであろうか?

外観が汚れるのはもとより、
経年で音質が劣化しているので、
清掃は蔑ろに出来ないが、
とても孤独で苦痛な作業である。

さて、先ずはアンプ等の機器を、
ラックから出すことから始まるが、
これが途轍もなく難儀だ。
プリやプレーヤーを持ち上げて、
早くも腰を痛めそうになる…。

そして、パワーアンプの移動だが、
マニアには分かると思うが、
重さは半端ではない。
重量が50kg位あるのだ。
女性一人分くらいの重さ!!!

持つというよりも、引きずる感じで、
手前に出したが、
この時点で、手足はガクガクするし、
腕の筋肉がとても痛い…。
日頃の運動不足の賜物だ…。

ここまでは序章で、
ここからが本格的な清掃となる。
パネルや外側を、
ひたすら布で拭く。
意外と汚れているものだ。

そして、最も孤独を感じるのが、
端子磨きである。
端子とは機器をつなぐケーブル等の
接合部分のことであり、
汚れると電気の伝導率が下がり、

音に悪い影響を及ぼす。
ゆえ、ここの清掃が一番重要だ。

布や綿棒に無水アルコールを付けて、
ひたすら磨くのだが、
すぐに飽きてしまって辛い…。
「なんで、こんなことをやっているのか?」
と自問自答しながら、
辛抱して磨き続ける…。

通常なら耐えられるのに、
コロナ禍の閉塞感が強い精神状態で、
何だか悲しくなってしまった。
悲しきオーディオマニアだ…。

精神力との戦いを終えると、
今度は再び、肉体労働に入る。
初めに外した機器たちを、
再び、収める作業だが、
当初に筋肉を傷めているので、
繰り返すのは、滅法辛い…。

文章で書くと短いが、
この間、5時間半もかかってしまった。
それにしても、機器がさほど無くても、
こんなに時間がかかってしまう…。

オーディオ雑誌に紹介されるような、
大量の機器に囲まれた人は、
一体、どうしているのだろうか?
訊いてみたいものである。

以上がマニアでないと分からない、
悲しい実態であるが、
清掃後に再生した音質が、
澄んだ瑞々しい音に変わっていることが、
せめてもの救いだ…。

でも、次もまたこんな苦労をするのか?
後に必ず訪れるであろう、
次回の清掃のことを考えると、
「もう、絶対に嫌だ!!」と、
ゾッとして、簸るんでしまった。

 

ところで、世の中の旦那衆へ。
奥方は、別に趣味でもないのに、
類似したご苦労を、
日常的に行っているのだ。
「感謝しないと、バチが当たるぞ!」
と思う…。