今っていつなんでしょう?

私は今この記事を書いているわけですが、皆さんがこれをご覧になっている今、それは過去の話なわけですし…。

 

今回はそんな今と昔、現在と過去のお話です。まずはいつもの通り問題を解いてみましょう。

 

  My son said he learned in school yesterday that the moon (     ) round the earth.

   1. goes

   2. has been

   3. will go

   4. went

 

「わざわざ問題を解かせるってことは、4じゃなくて…」

「あはは。確かにそうなんだけど、『なぜ過去形ではないのか』がわからないとね」

「説明できないとダメ?」

「説明はできなくても、ほぼいつも正解しているのなら大丈夫かな。『自分の力で本番でも解けるか』を想像してみて」

「迷いそう」

「ふふ。じゃあ整理していこう」

 

動詞の形とその意味1』では、動詞の形が変わっているのかどうかに注目してきました。「動詞の形が変わっていれば事実(現在形など)、変わっていなければまだ事実ではない(原形)」ことを表すのでしたね。今回は動詞の形の変わっているものについて、少し掘り下げてみようと思います。

 

「過去形って何を表すんだろう?」

「昔」

「現在形は?」

「今」

「『今』っていつ?」

「え?」

「僕は今、『今』って言ってるけどその『今』は今かな?君に聞こえた時には過去では?」

「は?」

「いや、僕は今、『今って言おう』って思ってから『今』と言ったんだから、言った時点で過去なのかも…」

「そうかもしれないけど…何の話?」

「うん、言いたいのはね、みんな現在形のことを今だとか、過去形のことを昔だとか言っているけど、その今と昔の定義ができていないんじゃないかってこと」

「確かに」

「できていないとすると、自分で考えることはできないよね。つまり『本番で自分の力で解けるか』というと、」

「解けない」

 

定義は以下の通りです。

 

  現在形:現在事実だ(と思っている)

  過去形:過去事実だった(と思っている)=現在は違う

 

今回重要なのは太字の部分。過去形=「現在は違う」という定義です。「と思っている」という表現が曖昧に思えるかもしれませんが、これも重要なポイント。実は現在形や過去形が表しているのは、時計の針で示されるような物理的な時間ではありません。話している人が「今実際にそうだと思えば」現在形を使いますし、「今そうではないと思えば」過去形を使っている。つまり、現在と過去の間には繋がりがないのです。

では最初の問題に戻りましょう。

 

「答えを過去形にしない理由は分かった?」

「うん。月が今地球の周りを回っていないことになっちゃうんだね」

「その通り。月は今も地球の周りを回っているんだから、答えは1の現在形だね」

 

動詞の形とその意味5に続く)

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