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職場での
「分かりやすい文章」
を書くためのコツを
シリーズ3回で
紹介しています。
本日は第2回目。
毎日、色々な文章を読んでいるとき「なぜ、世間にはこんな分かりにくい文章が多いんだろう?」と感じたことはありませんか?
いわゆる、人に伝わりにくい悪文です。
実は、この背景には「悪文は書いた本人には見えない」という怖い現象があるのです。
私が「意図マスキング現象」と命名した、文章を書く人が陥りやすい心理トリックです。
このトリックの一番怖いところは、皆さんご自身が書いた悪文も、皆さんご自身には悪文に見えていないかもしれない、という点です。
つまり、あなた自身もそんな「分かりにくい悪文」を世間に撒き散らしている犯人かもしれないのです。
なぜ、こんな現象が起こるのでしょうか?
繰り返しになりますが、要するに、悪文を書いた本人には、自分の文章が悪文には見えないからです。
以下、この現象の理由を説明しましょう。
私たちは、文章を書き始めるとき、その文章で「何を伝えたいか」という自分の意図を脳内に持っています。
書いたばかりの自分の文章を練り直すため、私たちは普通、文章を読み返します。
このときも、もちろん、自分が伝えたいその意図は脳内に漂ったままです。
ここで意図マスキング現象が悪さをするのです。
自分の文章を読み返すとき、書いた本人は、その文章の本当の読み手と同じ視点で読めるでしょうか?
皆さんが書いた文章の本当の読み手は、あなたが書いたその「文章の意図」に関して予備知識が全くありません。
ところが文章を書いた本人が、自分の文章を読み返すときはどうでしょう?
その文章が「何を伝えたいか」に関しては、世界で一番よく知っているはずです。
つまり、自分が伝えたい意図がまだ脳内に漂ったままだからです。なぜ、このことが問題なのでしょうか?
書いたばかりの自分の文章が、他人には分かりづらい悪文だったとしましょう。
ところが、あなた自身がその悪文を読み返すとき、あなたの目にはどう見えるでしょうか?それは、
【1】眼から送られてくる「目の前の文章」と
【2】脳内に始めから漂っている「あなたが伝えたい意図」
の二つが重なって認識されるのです。
つまり、本当は問題だらけの悪文なのに、あなたの目には「自分の意図がちゃんと表現されている」りっぱな文章に見えてしまうのです。
【出典:かわいいフリー素材集・
いらすとや】
脳内の意図が悪文の問題点を覆ってしまう(masking)現象なので、私は「意図マスキング現象」と命名しました。
自分の文章を読み直して、誤字脱字程度は直すでしょう。しかし、意図マスキング現象のため、悪文のヵ所を認識できません。
そのため、訂正もせずにそのまま同僚や上司、お客様に送信したり、サイトにアップロードしてしまうかもしれません。
幸い、意図マスキング現象には対策があります。文章を寝かせてから、再度、自分で読み直す、という対策です。
「寝かせる」とは、他人に読ませる前に「時間を置く」ことです。
文章を書いてすぐに読み手に渡したりせず、一時間でも二時間でも別の仕事をするなどして、時間を置くのです。
理想は、文章をそのまま一晩か二晩寝かせ、それから目を通すのです。
文章を寝かせることで、自分の脳内に存在していたはずの「自分が伝えたい意図」が忘却作用で薄まります。
つまり、その文章に関しては、半分「他人の目」になれるのです。
そのため、自分の文章を読み直しても、意図マスキング現象も弱くなります。
その結果、書いた直後には全く見えなかった自分の文章の問題点が驚くほど見えてきます。
それらを改善すれば、皆さんの文章も無事、悪文卒業となり、人に伝わる文章に生まれ変わるはずです。
【続く】