自分の進むべき道は、自分で決めなさい。 ブッダ ヤタラの物語 | しょうかんのうだうだ

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仏絵師藤野正観(66)の備忘録・・・っといっても、ほとんどどこにも出かけないので、ふだん、ぐだぐだ思ったり考えていることを書き連ねることになるのは必至。

ブッダ ヤタラの物語

 


今朝の京都新聞に、ブッダの言葉を例にあげ、「学ぶ」といったテーマで興味深い記事がありましたので、早速スキャンしてご紹介します。

学生が、自分の進路を自分で決めなければならい時、一番最初にぶつかる壁。

その壁を乗り越えられるかどうかで、人生が決まるような気がします。

ブッダ ヤタラの物語 は、漫画家手塚治が書いた「仏陀の生涯」を描いた長編漫画ですが、ブッダの説話に創作を加えたもので、「第11章ヤタラの物語」は、ブッダが悟りを開く重要なエピソードとして、より理解しやすく、お話として演出創作したものだそうです。

この新聞の記事は、これを若い頃読んだであろう教育評論家の尾木直樹氏が、進路を決めかね将来に不安を持つ若者に向けて「自分で自分の進むべき道を決めなさい!そうすればどちらに転んでも後悔しないわよ!」と、「ヤタラの物語」を紹介し、エールを送る内容となっています。

ちなみに、この「ヤタラの物語」、元ひきこもりの方が、この物語に救われたと漫画をテキスト化されていましたので、以下に拝借してすこしだけ修正して転載しておきます。
※テキスト化はどなたがされたのか不明だそうです。


この手塚治の創作した人物、『ヤタラ』という男は、赤ん坊の頃に両親を戦争で殺された奴隷の大男です。
敵の国に兵隊として雇われていましたが、そこである女性に出会います。
女性はその国の王子の母親なのですが、身分が奴隷な為、実の子である王子によって牢に入れられていたのです。
ヤタラはその女を不憫に思い、実の母親のように慕います。
しかしあるとき、牢に疫病がはやり、王子は牢を奴隷もろとも焼いてしまえと命令します。
ヤタラは命令に背き、その女を連れて逃げますが、すでに疫病に冒された女はヤタラの手の中で死んでしまいます。
実の母親も、もうひとりの母親も失ったヤタラは、絶望にうちひしがれて森を彷徨います。
そのとき森の中で、バラモンの修行者シッダルタ(後のブッダ)と出会い、問いかけます。
以下はその問答です。

(※インド ブッダガヤの菩提樹の下で禅定(瞑想)をするシッダールタ=ブッダの本名)

シッダールタ
 「おまえはだれだ?………」
 「悪魔か神か?………神なら返事をしてほしい 悪魔ならいくがいい」
ヤタラ
 「おれ 神でも悪魔でもない……人間だ!!」
 「この世でいちばんふしあわせな人間だ!!」
 「おまえ坊主だな!?」
 「坊主 答えろ なぜ世の中ふしあわせな人間としあわせな人間いるのか 
  なぜそうなのか さあ答えろ!!」「答えろ!! 答えない 殺すぞ」
シッダールタ
 「わけを話すがいい………」
ヤタラ
 「おれ おっかさんふたりいた ひとり疫病で死んだ ひとりゾウにふみつぶされた!!」
シッダールタ
 「おまえは自分がいちばん不幸な人間だといったが」
 「そのふたりのおかあさんのほうがもっと不幸な人なのではないか?」
ヤタラ
 「ウッ…」
 「じゃ じゃあおっかさん こ 殺した王子だ!! それなのに王子罰うけない!!」「なぜだ!!」
シッダールタ
 「おまえの話では、その王子はほんとうはじつの息子なのだな。その女奴隷の?」
 「それが本当なら、その王子は奴隷の母親から生まれていままで育つ間にどんなに苦しんだろう」 
 「そして、奴隷として母親をわざと追放し焼き殺す命令を出したとき、
  心の中はどんなに苦しかったろう」
 「それを顔にも態度にも出さずに、王子としてがまんしなければならない立場だったのだろう」
 「その母親を憎む気持ちと慕う心とがぶつかりあったとき、その王子はどんなにもだえ苦しんだろう」
 「その王子こそ不幸な人間だ…そう思わないか?」
 「そして苦しんでいる王子を見るにつけ、まちがって女奴隷と結婚して王子を生んだ父親の王は
  もっと苦しんだろう。もっと不幸な人間ではないのか?」 
 「おまえに見守られて死んだおかあさんはまだしも、何も知らずに焼き殺された女奴隷たちは
  もっと不幸ではないのか?」
 「ずっとたどっていくがよい。だれもかれもひとり残らず、みんな不幸なのだ」
 「この世に幸福な人間なぞ、ありはしない!」

(※ヤタラはしばし号泣した後、再び問いかける。)

ヤタラ
 「みんな不幸 そんなら なんで人間はこの世にあるんだ………」
シッダールタ
 「木や草や山や川がそこにあるように」
 「人間もこの自然の中にあるからには、ちゃんと意味があって生きてるのだ」
 「あらゆるものとつながりを持って……」
 「そのつながりの中で、おまえは大事な役目をしているのだよ」
ヤタラ
 「この お、おれがか………」 「このオレに役目があるって? この役にも立たんオレが?」
シッダールタ
 「そうだ。もし おまえがこの世にいないならば、何かが狂ってしまうだろう」
ヤタラ
 「おまえ ふしぎなこという…」 「おれ……そんなふうに思ってもみなかった……」
 「じゃあ…おれ これからどうやって生きていけばいい?」
シッダールタ
 「その川を見なさい」
 「川は偉大だ。自然の流れのままにまかせて、何万年もずっと流れてる」
 「流れを早めようという欲もなければ、流れを変える力も出さない。すべて自然のままなのだ!」
 「しかも大きく美しい……よろこばれ、そしてめぐみをあたえている…」
 「おまえも巨人だ。おまえの生きかたしだいで川のように偉大にもなれるだろうよ」

(※シッダールタの弟子になる決意をし、生きることの意味や望みを教えてくれた礼を述べて立ち去るヤタラ)

シッダールタ
 「なんということだ…………」 「私がひとにものを教えるなんて………」
 「あの男は私をたたえてくれた」
 「あの男は……」
 「もしかしたら 私をためす神だったのかも…」
 「そうかもしれない」
 「なぜ なぜ私は……」
 「なぜさっきあんなことをいったのだろう? 思わず口から出てしまった!
  考えもしなかったことばが!」
 「『木や草や山や川がそこにあるように、人間もこの自然の中にあるからにはちゃんと意味があって生きている』」
 「『あらゆるものと…」 「つながりを持って!』」
 「『もし、おまえがいないならば何かが狂うだろう。おまえは大事な役目をしているのだ』」

 「私があの男にしゃべったことばは」 「私が自分自身に教えたんだ!」 
 「おお………私の心のとびらが いま 開いたぞ!!」
 「光よ」
 「光よ」
 「光よ!私の前を照らしてください」
 「私は命のかぎり果たします この宇宙の中の私の役目を!」

http://blogs.yahoo.co.jp/pori313/37143901.html より一部転載しました。