著者
村木厚子:障害者郵便制度悪用事件(郵便不正事件)によって被告人とされ、164日間の勾留。裁判においては、一審無罪判決。その後、検察による証拠捏造が発覚し、検察は上訴を断念し無罪が確定。事件の詳細が、この本に記されています。
厚生労働省4人目の女性局長として、2008年に雇用均等・児童家庭局長、内閣府政策統括官、厚生労働省社会・援護局長を歴任、2013年7月から厚生労働事務次官。
現在の検察の事件捜査がいかに酷いものであるかを世の中に知らしめた事件です。私はこの本を留置場にいる時に差し入れてもらい、検察の捜査がいかに杜撰なものであること、精神的に追い込み事実でない自白を平気で取ることができること等、冤罪事件の作り方を知ることができ、「負けない」気持ちを強く持つことができました。
事件の内容については、私の件と異なる点は、一審判決後に検察側の捏造が明らかとなり、検察が控訴を断念。担当検事が有罪判決を受けるところまでの打撃が検察側に与えられたことです。(私の事件も担当検事が連日連夜の打ち合わせを贈賄側と繰り返したことなど信じがたいことがありましたが事件にはなりませんでした)羨ましい気持ちもありますが、そのようなことが見つからない限り事件を捏造する検察、またそれを追随する司法の体質を変えなければならないことは明白です。
村木厚子さんには、市長在任中に福祉関係の講演の講師をされた時に、一度だけ直接ご挨拶させていただいたことがありました。少しの時間でしたが穏やかで温かいな心をお持ちの素敵な方であることを体感しました。
<内容を少し>
(引用)有罪率99パーセントの日本の司法の中で、私は幸いにも無罪判決を得ました。さらに幸いなことに、検察が控訴を断念したことによって、「被疑者」「被告人」という立場から1年3ヶ月ほどで解放されました。今振り返ってみても、本当に幸運だったと思います。第一に・・・。第二に・・・。第四に、「客観証拠」という基本を重視する裁判官が公判の担当でした。
(引用)事件後・・・捜査機関は反省し、取り調べをはじめとする捜査の在り方も改善が進んでいると期待していました。しかし、その機体を見事に裏切る事件が起きました。PC遠隔操作事件です。四人の方が誤認逮捕され、そのうち二人は全く身に覚えがないにも関わらず「自白」をしています。犯人しか知り得ない、具体性、迫真性に満ちた「供述調書」も作成され、ご本人がサインをしています。
(引用)取り調べを受けた経験のない人は・・・今の警察、検察の取り調べを受ければ、半分以上の人は虚偽の自白、証言をしてしまうのが現実なのです。そして、多くの裁判では、その調書が、「具体性、迫真性がある」として証拠に採用され、有罪の根拠とされるのです。
(私)私も恫喝をされながらの取り調べや、「関係者のところに警察が捜査に行くぞ」と散々脅されましたが、弁護士の面会や、市民の方々の声援をいただき耐えることができました。ただ、何よりも問題なのは、そのような虚偽証言を裁判所が証拠として認定することだと、事件を通して確信しました。そんな証拠を認定するから、取り調べを行う警察や検察も自無理をしてでも自白を取ろうとする。変わらなければいけないのは裁判所だと思います。
(引用)やってもいない罪に問われた時、運を頼みにしなければならないのでは、法治国家としてあまりに残念です。普通に適正な手続きを行えば、無実の罪の者の嫌疑が速やかに晴れるような、冤罪ができる限り防げるような、そんな仕組みが必要ではないでしょうか。
是非、ご一読ください。