図書館でふと手に取った恋愛短編小説集
「恋のトビラ」
アンソロジーの最後を締めくくる
森絵都さんの「本物の恋」。
作品中、主人公が
ある男の子の失恋現場を見る場面があります。
その一文がとても印象的でした。
「大号泣だった ―中略― 一緒にいてい恥ずかしい、とは、しかしみじんも思わなかった。彼の泣きっぷりにはそんな負の感情を寄せ付けない迫力があり、神々しさがあった。彼のこの爆発的な苦しみは、少なくとも彼の大事な人を苦しませはしない。誰も傷つけずに自分の傷だけをひたすらえぐっている。」
この描写で、本当に好きだった人を諦める苦しさが言葉を越えたレベルで心に伝わってきました。
本物の恋だったんだな、と思い知らされる瞬間を、主人公とともに味わいました。
短編ではありましたが、とてもいい読書体験ができました。
森絵都さん!ありがとうございました。