真夏のトライアングル(55) | NaNa's secret world

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短編小説 真夏のトライアングル 

作:NaNa

 

 

★55

「僕の両親も、中三の時に事故で亡くなった」

 

その声から、律が微笑みを浮かべて話しているのが分かった。私は律の顔を見上げた。

 

「花音、大丈夫だよ」律は言った。

 

 アパートの廊下には、まだ血しぶきが生々しく残っていた。律に部屋に寄ってほしいと言われ、彼の部屋に初めて入った。私と麗子さんがそうしていたように、ダイニングキッチンの奥にある二つの部屋を、律と優真は各々個室として使っていた。

 

 律は向かって右の部屋に進み、置かれた電子ピアノの椅子に座るように促した。横長の座面に並んで腰を下ろすと、律は包帯を巻いた腕を重そうに上げ、鍵盤に指を置いた。

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