短編小説 真夏のトライアングル
作:NaNa
★28
ライブが終わってもなかなか高揚がおさまらなかった。体を酔わせれば正気に戻る気がして、カウンターで強い酒を注文して一気に飲み干した。
「花音」
名前を呼ばれ振り返ると優真がいた。後ろから、ふっくらと白い肌の女の子が駆け寄ってきて彼の腕に豊かな胸を押し付けた。
「なにしてんの、早く行こうよ」
彼女の高い声に聞き覚えがあった。このまえ優真の部屋から漏れ聞こえたあの声だ。ミカは私をじっと見つめてきた。
彼女の視線の圧を不快に感じ、
「今日はもう、帰る」
優真に背を向けて出口に向かった。
誰、あの子、ミカの声が背中越しに聞こえた。