真夏のトライアングル(26)短編小説 真夏のトライアングル 作:NaNa ★26 「リツ君、今日もかわいい」 隣の女の子が言ったのが聞こえた。 眩しいステージに向けて目を凝らした。 白い肌にゴールドの髪。襟元の開いたオーバーサイズのTシャツがその体を華奢に見せているが、まぎれもなくリツは男だった。 たっぷりと深みがありながら透き通る声が、会場の空気を震わせた。 それは変声期前の男の子のようにも、無垢な少女のようにも、妖艶な女性のようにも聞こえて、様々な光を放つ多面体のようだった。 <25 27>