短編小説 真夏のトライアングル 作:NaNa
★9
引き返して部屋に戻る間、優真と並んで歩きながら、私は彼と話せる嬉しさに浮ついて思いつくままをしゃべりだした。
「山田さんのユキちゃんは、猫じゃなくて家族なの」
「いや、あれは猫だろう」優真はわざととぼけて答えた。
「猫だけど、猫じゃない」私が言った。
優真は不思議なものを見る顔をした後、ふはっ、と笑った。
「そっか、このアパートのペット禁止のルールに違反してないって言いたいんだ」
そう言われてやっと自分が言っていることの滅茶苦茶さに気づいて、私も笑った。
「花音ちゃんは、優しいんだね」