内容は不倫のお話です。
でも、家庭にはっきりとした不満があって浮気する、
というんじゃないんです。
本当に愛した相手と再会して、
本来愛すべき相手と本当の自分を思い出してしまう
という構図。
家族を捨て、
鞍田と最果てまで生きることを選んだ塔子ですが、
実は鞍田は心から塔子のことを求めていて、
しかも似た境遇で生まれ育ったせいか、
お互いを強く惹きつけ合う相手です。
しかも鞍田は余命僅か。
苦しみと孤独を一心に背負っている。
私が最後に愛を注ぐとしたら、この男だ、
塔子がそう覚悟を決めたことも
仕方がないように思えます。
鞍田を見送った後の場面で、
娘から帰ってくるように懇願されるも、
強い意志でそれをはっきりと拒む塔子。
苦しみながらも覚悟を決めて他の男を愛した塔子は、
その責任として家庭には戻りません。
皮肉に思うのですが、
塔子は子供を愛するという経験を経たことによって、
「自分が愛するべき人は、このひとだ」
という決断を下す勇気を身に着けてしまったのではないかと思います。
不倫という二文字で片付けられる様々な関係の裏には
それぞれの事情や、覚悟などがあるのかもしれません。