※信仰のさんぽ道より抜粋、「36種の餓鬼道」
毎年、お盆の時期になると目連(もくれん)尊者(そんじゃ)の母が「餓鬼道」に落ちて苦しむ話が紹介される。
それで、「正法念処経(しょうぼうねんじょきょう)」に説かれる36種の餓鬼道に落ちる名称や「因縁」と「果報」を紹介します。
「1」、かくしん餓鬼-財産を貪るために生き物を殺して喜び、少しも悔いず、
また法施(ほうせ)・財施(ざいせ)・無畏施(むいせ)をしないものがなり、飢えの炎で焼かれる。
「2」、針口(しんこう)-貪欲や物惜しみの心から布施(ふせ)をせず、人に衣食を施さず、また仏法を信じないものがなる。
腹は大山のようになり、蚊や虻(あぶ)などの毒虫により身に苦痛を抱く。
「3」、食吐(じきと)-独り美食を楽しみ、夫や妻子には与えなかった者がなる。
とくに財施(ざいせ)・無畏施(むいせ)・法施(ほうせ)をしない者がなる。
荒野に住み、食べては吐き、または極卒(ごくそつ)などに無理やりに吐かされる。
「4」、食糞(じきふん)-不浄な食べ物を僧に対して与えた者がなる。
不浄な所でウジ虫や糞尿(ふんにょう)を飲食するが、それも満ち足りない。
もし稀(まれ)に人に生まれ変わっても貧乏で病気が多く、飢えに苦しむ。
「5」、無食(むじき)-嘘で人をだまし、自分の権力で善人を牢に入れて餓死(がし)させ、後悔しない。
次の世でまれに人として生まれても胎内(たいない)で死ぬ。または短命で多難。
「6」、食気(じっけ)-独り美食をし、妻子、眷属には匂いしか与えなかった者がなる。
供養の香気(こうき)だけを食べる。まれに人として生まれても貧乏、病弱で悪臭がただよう。
「7」、食法(じきほう)-名声や金儲けのために、前世ではむさぼりや嫉妬が多く、
信仰心がないのに財産のために不浄な説法を行った者がなる。
「8」、食水(じきすい)-水で薄めた酒を売った者、酒にミミズや蛾(が)を沈めて愚人をまどわした者ががなる。
水を求めても飲めない。
次の世、まれに人となっても辺地に生まれ、貧乏で不自由な場所で生活し、常に乾きに飢え、熱病で苦しむ。
「9」、けもう-嫉妬と悪いむさぼりで、善人から物を搾取(さくしゅ)した者がなる。
亡き父母のために供えた物しか食べられず、いつも前世に施(ほどこ)しをしなかったことを後悔し泣き叫ぶ。
「10」、食唾(じきた)-僧侶をあざむいて、不浄な物を清浄だといつわって施(ほどこ)し、
布施をせず戒律は守らず、善友に近づかず正法に縁しようとしなかった者がなる。
人の吐く唾で自分の命を活かす。
「11」、食髪(じきまん)-仏の飾り物を盗み出して、自らを飾った者がなり、祭壇の飾り物などを食べる生き物に生まれる。
「12」、食血(じきけつ)-肉食をむさぼり好み、妻子には施(ほどこ)さなかった者がなり、生き物から出た血をむさぼり好む。
「13」、食肉(じきにく)-細かくした肉の重たさをごまかして売った者がなる。
肉だけを食べる醜い夜叉(やしゃ)となり、道角や町の中などに現れる。人に生まれても僻地(へきち)な場所で人肉を食べるような果報になる。
「14」、食香煙(じきかえん)-良い香りではなく、悪い香りの「香」を売り、信仰心がなく因果の道理を考えない者がなる。煙だけを食べる。
「15」、病行(じっこう)-僧でありながら戒を破り、法衣を着て遊び歩き、病気の人に与えると言って財物を求めながら、
結局は自分のために使う欲張り者がなる。
便所など不浄な場所、また墓地に生まれ、死体を食べる。
疫病(えきびょう)などで多くの死人があると喜び急ぎ、いち早く行き食べる。
「16」、伺便(しべん)-詐欺や暴動を起こし、強奪し、良い友に親しまず、善友や親族を憎み仏を拝まない者がなる。
人の気力を食べる。
「17」、地下(ぢげ)-仏法を乱して人の心を縛り財産を手に入れる者がなり、地下の闇黒所で飢えに苦しみながら体中を千切られるなどの責め苦を受ける。
「18」、神通(じんづう)-搾取した財産を悪友に与え、仏や困った人のために施しをせず、不浄の施しをした者がなる。
「19」、熾燃(しねん)-人民を殺害して、奪った財産を王や権力者に施し、ますます悪を増長した者がなり、身から火を出し、走り回って泣き叫び苦しむ。
まれに人となっても、常に他人に襲われ、財産を奪われる。
「20」、伺嬰(しえい)-前世で自分の子を殺され怒りの心を持ち、来世で夜叉となって他人の子を殺して復讐しようと誓った者がなり、
出産の便りを聞けば、そこに行き嬰児(みどりご)を殺害する。まれに人となっても恨みや怒りばかり抱く人になる。
「21」、欲色(よくしき)-男や、女、特に男性不具者が女性の服を着飾り、ふしだらな行為をして財産を得て不浄な所に施した者がなり、
儀式などの供え物を食べ、まれに人になっても淫欲(いんよく)の所に生まれ遊戯(ゆうぎ)にふけり、時に自分の妻を他人に与えて財産を求めるような果報になる。
「22」、海渚(かいしょ)-荒野を旅して病気に疲れ苦しむ人につけこみ、持ち物を安く買い取るような者がなり、朝露を飲み暮らす。
まれに人となっても足が不自由で、水を得るのにも苦労する。
「23」、執杖(しゅうじょう)-国王や権力者に近づいて悪行を行い、慈悲心のない者がなる。
閻魔王のコマ使いになり、空気のを食べる。
「24」、食小児(じきしょうに)-病人に「災いを取る」、と騙して財物を奪った者が、等活地獄(とうかつじごく)から出たあと、この果報を得て嬰児(みどりご)を殺したり食べたりする。
「25」、食人精気(じきにんしょうき)-人をあざむき、親友にも「君を守る」と騙し、友が害されそうになったときは守らず、逆に財物を持ち逃げした者がなり、仏法僧を信じない悪人の精気を食べる。
人に生まれても常に困窮(こんきゅう)し、祭壇の残り物さえ手に入らない果報となる。
「26」、羅刹(らせつ)-生き物を殺して大会を開き、「これは珍品だ」と言って少ない物を高値で売る良く深い者がなり、人を襲い、以後、人に生まれても人肉を食い、人血を飲むような果報となる。
「27」、火炉焼食(かろしょうじき)-善友を遠ざけ、僧の食事を横取りした者がなり、地獄の果報が終わった後、ここに生まれ火のついた残飯を食いあさる果報となる。
「28」、不浄港珀(ふじょうこうはく)-前世で僧侶に不浄の食を与えた者が、逆に不浄な場所に生まれ不浄な物を食し、次に人になっても女は淫女(いんじょ)となり、男は女の服を身につけ女の生活する。
「29」、食風(じきふう)-僧や病人に施すと言いながら実行せず、空腹やノドの渇(かわ)きのまま冷風にさらした者がなり、風が食物となり、人に生まれても食料に困り苦悩の多い人生を送る。
「30」、食火炭(じっかたん)-刑場の看守で、人を縛って苦を与え、食べ物を与えず、そのため泥土を食べさせた者がなり、屍(しかばね)を焼く火を食べて空腹を癒す。
次に人となっても粗悪な物しか食べられない。
「31」、食毒(じきどく)-毒で人を殺し、財物を奪った者がなる。
険しい山中の洞窟や氷山の毒に囲まれ、夏は人の百倍もある熱地や火の降る所などで過ごす。
「32」、荒野(こうや)-群族となって池水を破壊し、人々を苦しめ財物を奪った者がなり、日光にさらされながら水や食料を求めて走り回る。
「33」、塚間住食熱灰土(ちょうかんじゅうじきねつかいど)-信仰者が供えた花を盗み、それを売った者がなり、死人を焼いた熱い灰や土を食べる。
常に飢えと渇きに悩み、刀や杖で打たれる。
「34」、樹中住(じゅうちゅうじゅう)-旅行者や病人、僧侶のための樹林を盗んだ者がなり、樹の中に生まれ、蟻(あり)や虫に食われ、樹のそばに捨てられた物を食べて身をまぎらわす。
「35」、四交道(しきょうどう)-旅人の食料を捨てて困らせた者がなり、のこぎりで縦横に切られる苦しみを得ながら道角に住み、そこに供えられた食べ物だけを食べる。
「36」、殺身(せっしん)-悪事を行い、邪見の法を真実と説き、正法を信ぜず、僧の修行を妨害した者がなり、熱い鉄を口から入れられ、長い苦しみの後は地獄に落ちる。
その後も、まれに人となっても目や耳が使えず無知の人となる。