※仏典童話、「牛の不平」

昔々のお話。

お釈迦様は、弟子たちや衆生に数多くのいろんなお話を残しました。

さまざまな者に生まれ変わって生を受けている。そのときの出来事を話してあげました。


そのときの通称をボーディサッタ(菩薩)といいます。


インドのベナレスという国でのお話。

小さな村の牛に「大赤」と弟に「小赤」という二匹がいました。この「大赤」がボーディサッタでした。


二匹は、地主の車を引く仕事をしていました。


そして、地主には若い娘がいました。

娘は美しく、村中の男たちから結婚をせがまれていました。


地主は、男たちをみんな呼んで盛大にパーティを開こう、と思い、特別なご馳走にと「ムニカ」というブタに美味しい乳ガユを食べさせてたっぷり太らせていました。


それをみた「小赤」が兄の「大赤(ボーディサッタ)」に言いました。


「兄さん、この家の重たい車をひっぱるのは全部兄さんと僕がやってるんだよ。

それなのに、僕たちがもらう食べ物は「草」と「ワラ」だけじゃないか。


あのブタは、何もしていないのに美味しそうな乳ガユを食べてるのはどういうわけなんだろう。」


すると、兄牛の「大赤」は言いました。


「ムニカをうらやむもんじゃない。あいつは死ぬためにご馳走を食べているのだから。


この家の人たちがあのブタを太らせているのは、お客さんのご馳走にするためなのだよ。


みていてごらん、もう何日もすると大勢の人がやってくる。

そうすれば、ムニカは足を捕まえられて、小屋からひきだされて煮込み料理にされてしまうだろう。」


そうして、兄は、今の言葉を噛み締めて、詩の形で繰り返しました。


死のご馳走を食べている

あわれなムニカをうらやむな

おまえはそまつなモミガラを

食べて満足するがよい

それで長生きできるのさ


その後、言ったとおり大勢のお客さんがやってきて、ムニカは食べられてしまいました。


「大赤」は弟に言いました。


「「小赤」よムニカを見たかね?」

「見たよ、兄さん。

さんざんご馳走をたべたあげく、どんな目にあったかよくわかったよ。

ぼくたちの食べ物は、草やワラやモミガラなんかばかりだけど、それでもあんなご馳走より百倍も千倍もいいねぇ。


だってこれさえ食べていれば安全。

長生きのもとだからね。」


おしまい。