おはようございます、
なおです。


ふつーに生まれた私が
どうやって今まで生きてきたのか?について
綴っています。。。


前回はここ

【わたしの世界観33】



父が「死に部屋」って呼んでた
ICUに移動になった。。。

まだ処置があるので・・・と言われ、
一旦家に帰る。


その帰り道、
母が葬儀屋さんに寄って欲しいと言う。

「まだ生きてるじゃん!!」
私は思わず叫んでしまったけど、

母は
「現実を見なさい!」

一言そう言い放った。



母の言う言葉の中で一番嫌いな言葉。
「現実を見ろ」と言う言葉。


だけど、この時のこの言葉の意味は
まるで違っていたんだろう。


その時は、なんて冷酷な人なんだろう。
そんなふうに思ったけど、

今思えば


感情に動かされずに
現実を把握して、
葬儀の準備だってする人がいなければ
自分がやるしかないのだ。

配偶者を亡くす間際に
感情に流されずに
着々と

何があっても困らぬように
事前準備も必要なんだ。




そして再び病院へ行ったときには

父はもうたくさんの線に繋がれて
声も発しなかった。


ただ目だけをギョロリと動かし
何かを訴えているようにも見えた。


「声は聞こえてるはずですよ」と
看護師さんが言った。


父は目をせわしなく動かし、

母、兄、弟、私、
孫である私の娘、兄嫁、弟の嫁
一人一人の目と視線を合わせた。


みんな口々に
「あぁ、お父さん、〇〇だよね、そうだよね」
などと言っていたけど、


私はエスパーじゃない。

だから父の本当に
言いたかったことはわからない。

どう思って何を言いたいのだろうかなんて
勝手に解釈したら

それは単なる自分の思い込みで

「こう言ってほしい」っていう
自分のエゴでしかない。


父の言いたいことなんて
全くわからない。



言葉は外に出してこそ
初めて意味を持つ、

そう思う。


たくさんの線に繋がれ、
体の内部が・・・
少しづつ終わりを迎えようとする。

心臓が動く音と父の呼吸だけが狭い室内に響く。


黄色くなった父の足を触ってみた。
冷たすぎてびっくりした。


娘がお腹すいたと言うので
娘と売店に行こうとエレベータを待っていると

弟の嫁が走ってきて
「お姉さん!戻ってきて!なんか看護婦さんが・・・」

腕を引かれ3人で急いで病室に戻る。


部屋の中には看護師さんに加え、主治医の先生までいた。

部屋の中に鳴り響いていた
ピッピッピッ・・・という規則正しい音が

かなりゆっくりになっていた。

徐々に少しづつ少しづつ
ピッ・・・ピッ・・・ピッ・・・鳴り響く。



そのとき、私は「電池」だって思った。

切れそうな電池と同じ。


『ピッ』の音とは比例して
父の呼吸はどんどん大きくなった。


「もういいよ、いっていいよ」
母は何度も父の耳元で言った。


少しづつ



室内の音は徐々に
ピッ・・・・・・・
ピッ・・・・・・・・・・

ピッ・・・・・・・・・・・・・・


音の間隔が広くなり

誰かの服の擦れる音だけがする。


そのとき、父はこれでもかと言うくらいに
大きな大きな深呼吸をして


そして

父の命の電池は止まった・・・・・・



静寂の中
主治医の声だけが聞こえた。


人間って電池と同じだなって
そのとき

そう思ったんだ。


誰でもみんな自分の命の電池がある。


私にもあなたにも・・・・・・・


次につづく