海外で、理不尽な目に遭うことは多々ある。
サッカースタジアムとは、南米では治外法権エリアのようでもあり、とりわけ理不尽なことに出くわしやすい。
忘れもしないのが、ペルーの首都、リマ。
2002日韓W杯の南米予選、
ペルーvsパラグアイ。
南米では弱小の部類に入るペルーも、この時点ではなかなかいい位置につけており、異様な盛り上がりを見せていた。
当時、私はペルー滞在が3ヶ月ほどになり、思い入れもあり、当然、ペルーを応援。
そして、チケットを入手し、いざスタジアムへ。
しかし、途中の渋滞もあり、スタジアム到着は試合開始直後だった。
まあいい。数分くらい。
と、いそいそとゲートへ向かう。
すると、、すでにゲートは閉鎖!!
鉄格子のゲートの向こうにいる係員に、
Yo tengo targeta!
チケット持ってるぞ!
と叫ぶ。
答えは、No!
まったく意味がわからない。
Porque!!!?
なぜだと聞いても、まともな答えは返ってこない。
やれ、満席だとか、安全がどうとか。
ふざけんな!
だから、チケット持ってんだろうが!
と、サッカースタジアムで覚えたスラング、恩返し(?)とばかりに吐き散らす。
少しの時間、大騒ぎしているとどうだろうか、よく見ると、私のようにチケットを持ちながらも、入場できないペルー人が、ざっと100人はいるではないか。
心強い仲間たちだ。
Hijo de puta!
Hijo de puta!
スタジアムの係員に向け、100人がかりで汚い言葉の大合唱が始まる。
チケットをかざし、
鉄格子のゲートをゆすり、
いまにもゲートを力任せに押し倒しそうな勢いだ。
その時!!
ヒヒーン!
パカラッ パカラッ パカラッ
騎馬警官だ!
すごい勢いでどんどん近づいてくる!
デカい!!!
チケットを持ちながらもスタジアムに入れてもらえない約100人。
群れをなして入場を懇願し、大騒ぎをする約100人。
そのど真ん中に、騎馬警官が突っ込んできた。
うわーー!
群れは真っ二つに、
そして、その二つにも、また別の騎馬警官が突っ込んできた。
蜘蛛の子を散らす、とはまさにこのこと。
100人は散り散りバラバラになり、ゲート前を数人の騎馬警官がガードした。
なんてことだ。
俺たちはチケットを持っているのに、犯罪人のような扱いだ。
それにしても、この騎馬警官の威容。
戦国武将が馬に乗ったら強いのも当然か。こんなにも早く、強いのか。
まさに我々は雑兵のごとき、存在。
遠巻きに、Putaだの、Mierdaだの、Cabronだの、汚い言葉を叫んでいるが、負け犬の遠吠えである。
チケットを持ちながら、なぜこんな目に、、と思いながらも、これがペルーかと、諦め掛けた時、事態は動いた。
騒ぎを聞きつけたメディアが、テレビカメラを持って現れたのだ。
散り散りになった100人が、テレビカメラの前に集まる。
そして、チケットを見せつけ、
あいつらが入れてくれないんだ!
俺たちはチケットがあるんだ!
騎馬警官が暴力を振るってるぞ!
カメラとそれに群がる100人が、ゲートに近づいていく。
こいつだ、こいつがその警官だ!
で、あいつが入れてくれない係員だ!
ここぞとばかりの大騒ぎ。
そして、、
ゲートが開いた!!
恐るべし、カメラのチカラ。
ペンは剣よりも強し!!
係員は節目がちにゲートを開け、
騎馬警官はその場を去って行った。
試合はすでにハーフタイム。
なんだったんだ、この時間は??
それにしても、チケットがあるのに!と叫んでいたのは、目測で100人ほど。
ゲートが開いた瞬間になだれ込んだ人間は、ざっとその数倍。
さすがペルーである。
ちなみに、そのゲームは0-0だったような、1-0でペルーが勝ったような。
あまりに入場前にパワーを使いすぎ、ほとんど覚えていない。
ただ、パラグアイの英雄チラベルト(キーパーでありながら、フリーキックの名手)が、PKをわざわざ蹴りに来て、しかもそれを外し、全力疾走で自陣で帰る、哀れな姿だけは、よく覚えている。
ええもん見たなあ、と。
旅人ふちがみ