今回は田中宇(たなか さかい)氏のブログ記事をご紹介したいと思います。田中宇氏は1961年生まれの63歳です。東北大学経済学部卒業後、東レ、共同通信社、MSN事業部を経て、1999年独立しました。著作は多数あります(ウィキペディアには単著が20冊挙げられています)。以前はテレビに出ていたこともあるようで、なんとなく見覚えがあるような気が私はしますが、それ以上の記憶はありません。
「田中宇の国際ニュース解説」というWEBページを持っており、会員でなくても読める記事と、有料会員(半年1500円)のみが読める記事に分かれています。無料記事は有料記事よりも数的に多く、また、無料記事であるために内容が薄いということはありませんので、まずは無料記事をあれこれ拾い読みされることをお勧めします。
ご自身のページに自己紹介があり、また、ご自身がHotwired Japanから受けたインタビュー記事にジャンプできるようになっています。
今回ご紹介するのは、「ウクライナ戦争で米・非米分裂を長引かせる」という無料記事になります。内容的にはかなり難しいように思います。難しいといっても、言葉や論理が難しいのではなく、独自の考察に常識の範囲を超えているところがあるため、読んでいて戸惑うという感じでしょうか。
記事を何本も読んでいるうちに慣れてくるのか、無視してしまうようになるのか、それほど気にならなくなります。もちろん、田中氏の理解や分析が正しい可能性もあり、今のところ私は判断がつきかねて保留状態にあります。
さて「ウクライナ戦争で米・非米分裂を長引かせる」の内容に移りますが、田中氏は " ウクライナ戦争 " と書いていますので、以後ウクライナ戦争と表記します。基本的な知識として、ウクライナ戦争に関して日本の新聞・テレビは、あるいはテレビ学者やテレビ評論家は、アメリカのプロパガンダを垂れ流していて、大東亜戦争中の大本営発表のようであることを知っておく必要があります。
日本は、NATOに加入しておらず、ロシアとウクライナの戦争に何の関係もありませんから、本来中立的な立場を保持できるはずです。しかし、岸田政総理はまるで日本がNATOの一員であるかのようにこの戦争に加担しており、マスメデイアによる報道も戦時中の情報統制が行われているかのようです。今の日本には民主主義など存在しませんね。
そんな日本政府や日本のマスメディアに騙されてしまうと、誤った認識を持つことになります。だからといって何か問題が起きるわけではなく、実際問題として日本人の多くは騙されたままの状態にあります。しかし、誤った認識を抱えながら生きていくと、いろいろなことに自分がフィットしていない感覚を持つはずで、その不全感が一生解消されないことになります。この点に関しては、新型コロナへの認識と同様ですね。
では、ウクライナ戦争に対してはどのような認識が正しいのかといえば、アメリカが仕掛け、ロシアをおびき寄せて始めた戦争になります。大東亜戦争において、日本はアメリカに騙されて真珠湾に攻め込んだ、真珠湾に攻め込むように誘導されたという説がありますが、それと同じことがウクライナ戦争で起きたことになります。アメリカのよくやる手口です。
大東亜戦争で日本軍は完膚なきまで叩きのめされましたが、ウクライナ戦争ではウクライナが完膚なきまで叩きのめされています。そのため、開戦早々ウクライナは降伏をすることになり、ロシアと合意したのですが、そこでイギリスのジョンソン首相がウクライナに出向いて停戦を禁じました。
その後、NATO各国が次々とウクライナに出向いては、戦争を続けるように説得しながら現在に至ります。なぜかウクライナ戦争に全く関係ないはずの日本までが、金を出し、必勝しゃもじという " 冗談グッズ " まで持参して、ウクライナが戦争をやめることに反対しました。日本国憲法はいつ書き換えられたのでしょうか。
ウクライナの敗戦はもう誰の目から見ても明らかなのですが、それでもアメリカは戦争をやめようとしません。ウクライナはまるで原爆を落とされる前の日本のようなものです。常識的に考えるならば負けを認めるしかないのですが、そこを煮え切らずにいつまでもグズグズしているのが、現在のアメリカ、NATO、ウクライナになります。
以上は、日本のテレビ学者、テレビ評論家は決して言わないことですが、SNS上ではほぼ常識になりつつある見解です。新型コロナ同様に、日本だけでごまかすことのできない問題ですので、どうしても正しい情報が出回ることになります。世界には正しいことを言う学者や評論家も存在しているのです。そして、そのような認識を持った上で、田中氏の「ウクライナ戦争で米・非米分裂を長引かせる」を読むことが必要で、そうでないと内容が理解できなくなります。
最近、ウクライナ軍がロシア本土に侵攻しました。今回の田中氏の記事はそこから始まります。田中氏はそれがおかしいと指摘します。なぜなら、偵察衛星でウクライナ軍の動向を常時監視しているロシアが簡単に侵入を許すはずがないからです。ということはつまり、ロシアは知っていながらウクライナに攻め込ませたということになるのですが、それはなぜでしょうか。
田中氏はウクライナに攻め込ませることがロシアの戦略に基づいていると言います。面白いですねえ。ロシア本土に攻め込ませることがロシアにとってどのようないいことがあるのでしょうか。田中氏によれば、ウクライナ戦争が長引くことによって、BRICSを中心にした非米諸国の結束が強くなっていくメリットがあり、ロシアはそれを狙っているということになります。
実際問題として、ウクライナ戦争が始まって以降、ロシアと中国の仲が良くなりました。インドとロシアも関係が深くなりました。イランとサウジアラビアの対立も緩和されました。トルコなどはNATOであるとは思えないくらいロシア寄りです。その他、アジア、中東、アフリカ諸国も、続々とBRICSへの加入を表明するようになりました。
おまけに、親米諸国から経済制裁を受けているはずのロシアは経済的にも好調で、そのように考えると、アメリカからウクライナ戦争を仕掛けられたロシアは、この戦争によって多大な利益を得ている結果が生じているようなのです。アメリカの狙いとは逆になります。
アメリカはソ連崩壊後、世界の覇権を完全に独り占めしたかのように見えましたが、やることなすこと裏目となっています。あまりに汚い手口、見え透いた手口で他国を侵略するものですから、加えて、侵略しようとする国の国民を平気で大量に虐殺するものですから、すっかり世界中から嫌われるようになりました。
唯一の例外が日本で、本来日本は世界で一番アメリカを憎んでいいはずですが、なぜかアメリカの追っかけをして喜んでいます。不思議な国ですね。私には理解不能です。しかし、日本以外の世界の国々は正気です。アメリカの撒き散らす厄災から逃れようとして、BRICSに近づくようになりました。その直接的なきっかけが今回のウクライナ戦争になります。
ですから、ロシアとしてはウクライナ戦争を無理に終わらせる必要はなく、むしろウクライナ戦争が続けは続くほどBRICS側の結束が強まり、強固な連合体が作られていくことを期待していると田中氏は指摘するのです。
そして、ここで田中氏独特の考察が登場します。実はアメリカの上層部も、ロシア側、非米側、BRICS側が力を持つことを陰で画策しており、そのために負けると分かっているウクライナ戦争を仕掛けて、アメリカの一極覇権を終わらせようとしているというのです。
これは常識から大きく外れた見立て、分析になります。なぜなら、通常私たちの常識としては、個人であろうが国であろうがNo. 1を目指し、No. 1になったならばそれを維持したがると考えるからです。ところが田中宇氏は、「いやそうではない、アメリカはあえて世界の覇権国から降りようとしている」と推測するわけです。そして、結果として世界は多極化するだろうと予測しています。
なぜアメリカがわざわざ自分の力を削いで多極化したがるかといえば、経済的にはその方がメリットが大きいと考えるからのようです。BRICS側が発展すればするほど、それはアメリカの経済にも跳ね返ってきて、結果が良くなると見込んでいるというのです。
なかなかついていくのが難しい考え方になりますが、私がそういうこともあるかもしれないと思うのは、アメリカが日本などとは違って独裁体制というか、独走体制というか、一極覇権を嫌う国であることは確かであるからです。
日本は戦後79年の間、ほとんどが自民党政権です。小選挙区制を導入して政権交代が起きるのかと思ったら、全然そのようなことは起きません。愚かな日本人は殿様はいつまでも殿様でいてほしいと願うようです。野球などを考えてみても、「巨人軍9年連続日本一」「常勝巨人軍」などということを懐かしむ人は多いのではないでしょうか。巨人同様人気のあった大鵬も、勝ち続けることを期待されました。
しかし、アメリカは違うのですよね。飛び抜けて強い個人なり、団体なりが出現すると、ルールを変えるなどしてそれを抑え、一人勝ちができない体制にしようとします。政治では共和党と民主党が政権交代を当然のように行います。これはかなり意図的、計画的にそのようにコントロールしなければできないことであるのは、日本を見れば分かります。自然に任せておくと、権力側はますます力をつけてしまい、自民党は戦後79年間のうち64年間政権を担当しています。その結果、良いことは何も起こらず弊害ばかりが目立ちます。
振り返ってみると、1990年以前はアメリカ・ソ連の2極体制でしたが、冷戦時代がアメリカの理想なのかもしれません。安定したライバルがいることで、アメリカも力を発揮できるとともに、現在のように無茶苦茶なことをしなくなるのですよね。でたらめをするとライバルにつけ込まれてしまいますから。
ソ連が崩壊してライバルを失った当時のアメリカから私が感じたことは、茫然自失というか、方向性を見失ったということでした。そこで、テロなどという敵を無理やり捏造して戦いを始めました。ソ連の代わりに自分たちと対等に戦ってくれる敵がほしくて仕方がないかのようでした。
しかし、ソ連崩壊後そのような敵は現れていません。そこで、BRICSなどの非米側を育てて、巧妙にアメリカの敵を作ろうとしているというのが田中氏の説ではないかと、私なりに勝手に解釈しています。確かに、相撲でも一人横綱では沈滞してしまいますよね。がっぷり四つに組んで一歩も引かない大相撲を、取る方も見る方も期待しているはずです。
多極化といってもアメリカの敵になれるのは、つまりライバルはやはりロシアでしょう。プーチンは能力的にアメリカの大統領が十分に務まるような人です。このまま順調にBRICSを成長させて、アメリカの喜ぶライバルに仕立て上げてほしいものです。
中国やインドも十分に大きな国で、力も持っているのですが、あまりに歴史が長く、文化的に西洋文明とかけ離れています。がっぷり四つに組もうにもすれ違ってしまい、まともな勝負になりそうもありません。そういう意味でも、BRICSはロシアがまとめてアメリカに対抗してほしいと、アメリカ自身が願っていることになります。
いかがでしょうか。田中宇氏を私が読むと以上のようなことが書かれているように感じます。曲解している部分があるかもしれませんので、あとは田中宇氏の記事を直接読まれて正しく理解されるようお願いいたします。