小林 太樹 『風・遊・記』 ショートシナリオストーリーブログ   -50ページ目

『早起きは三文の得』

携帯電話のアラーム音。


「ピピッ ピピッ ピピッ ・・・」

 

男が顔を洗っている。


タオルで拭く寝ぼけ顔。



爽やかな朝の青空が広がる。


Tシャツにハーフパンツの男が歩く。


依然目覚めずボーっと歩く。


男 (フー、身体も脳もまだ起きていないな・・・

    まぁいいや、散歩だけにしておこう・・・)


ゆっくりのんびり歩いていく男。


大きな公園が見えてくる。


広い公園に緑が心地よく茂る。


男、驚きの表情。


広大な緑地公園に高齢者の人達が大勢集まっている。


男 「何、これ・・・」


高齢者の人達がだんだん円を描くように移動している。


突然聞こえてくるラジオからの声。


大きな音量で鳴り響く。


♪ ・・・新しい朝が来た 希望の朝だ ♪

♪ 喜びに胸を開け 大空仰げ・・・ ♪


男 「へー、ラジオ体操か・・・」


懐かしさが胸を過ぎる。


体操の始まりを知らせる聞き慣れたピアノ曲。


「腕を前から上に上げて大きく背伸びの運動・・・」


大勢の高齢者の人達がひとつになって体操している。


壮大な光景に見える。


じっと見ていた男の脚が動く。


高齢者の人達の「輪」の一歩手前で立ち止まる。


ラジオ体操を始める男。


周りを見ながら夢中で身体を動かす男。


額の汗が落ちる。


だんだん息が荒くなってくる。


周りの高齢者の人達は息一つ乱れていない。


それを見て落ち込む男。


しかし楽しんでいる。



最後の深呼吸。


気持ち良さそうに息を吐く男。


ラジオ体操が終わり帰途につく高齢者の人達。


満足気な男の表情。


男 「・・・いいなー、明日も来よう」


歩き出す男。


行きとは違い、足取りが軽やか。


男 「やっぱり、早起きは三文の得だね・・・」


歩いていく男の後ろ姿に元気が宿っている。


男の頭上で、あざやかな青空に太陽が昇り、

「今日」という一日が始まっている。












『力』


小林 太樹  『風・遊・記』  ショートシナリオストーリーブログ  -MY書道「力」



  あきらめない力

  

  それは継続なり

  

  成し遂げたい目的に向うとき


  強い力が湧き出す



  ひとのために尽くす力


  それは人力(じんりょく)


  このひとのためにと強く想うとき


  大きな力が湧き出る



  生きる力


  それは老若男女を問わず


  人間の「生きざま」を感じるとき


  貴い力を受け取る




  己の「力」を信じる


  人に「力」を与える












『上を向いて花火を観よう』

連日厳しい猛暑が続く夏。


夜空の下、うちわを手に涼む男。


うつむき、何か考え事をしている。


男 「・・・・・」


大きな溜息をつく。


突然ドーンと大きな音が夜空に響き渡る。


男 「・・・花火か」


立ち上がる男。



缶ビールを片手に高台に上がる男。


夜空に響いているドーン、ドドーンという音。


ようやく夜空を見上げる男。


色鮮やかな打ち上げ花火が真夏の夜空を彩る。


男 「おおー・・・」


じっと花火を見つめる。


次から次へと繰り広げられる光のイリュージョン。


男 「・・・・・」


手に持つ缶ビールは開いてない。


花火を一心不乱に見つめる男。


その男の姿。


わずか数秒間だけ光り輝く花火。


しかし人々の心にその残像が刻まれる。


鼻水をすすり出す男。


男の瞳に涙が浮かぶ。


その涙に夜空に浮かぶ花火が映る。


手元の缶ビールにようやく気が付く男。


缶を開け、グイッと飲む。


男 「あーうまい・・・」


缶ビールを飲みながら花火を見上げる男。


男 「上を向いて花火を観よう・・・か」


男、苦笑い。


夜空の花火がラストスパート。


絶え間なく打ち上げられる花火。


夜空に響き渡る爆音の心地よさ。


ショータイムのクライマックス。


素晴らしく実に見事な光の芸術。


すべての人の視線が注がれる。



いつの間にか、いつもの真夏の夜空に戻る。


男、ビールを一気に飲み干す。


男 「・・・ありがとう」


夜空を見上げてつぶやく男。


『上を向いて歩こう』の曲が流れる。


歩いていく男。


その背中。


見上げると星が輝いている。