初めての方は注意事項に目を通してからお読みください。

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FtM嫡出子問題① FtMの男としての権利
FtM嫡出子問題② 嫡出子とは何か
FtM嫡出子問題③ 非嫡出子と養子縁組
FtM嫡出子問題④ 前田さんに質問 出生届を出すまで
FtM嫡出子問題⑤ 前田さんに質問 嫡出子の訴え
FtM嫡出子問題⑥ AIDで親になるということ
FtM嫡出子問題⑦ DI子の立場と権利


(※2013/3/29 一部修正)


今回は、前田さんに答えて頂いた中でもDI(AID)に関連したものを紹介する。

これも長期間に渡っているので、内容が重複していたり質問順ではない。

また、表現には若干修正がはいっており、前田さんの意図しないものがあった場合には、再度修正したい。


前田さんには忙しいところを回答してもらい、感謝している。




敬省略

泰斗:

不受理となった後にでも、代理母出産の問題などとご自分の状況を比較したことはありますか?


前田:

比較というか色んなケースを考えました。
何が大切なのか・・・。血のつながり、育てている人・・・。
代理出産は血のつながりがあるけど、分娩の事実が無いから認められない。
野田聖子さんのように卵子提供なら血のつながりはないけど、分娩の事実があるから認められる。
そして、生来的男女の夫婦がAIDをし生まれた子供は認められ、GIDの夫婦は認められない。
何が大切なのか・・・。
統一感のない法律、戸籍制度自体が問題だと僕は思います。




泰斗:

同じ扱いというなら、今後、前田さんが嫡出子として認められた後に、DIの男性が非嫡出子という扱いになった場合も違和感はありませんか?
また、法改正により、お子さんの立場が長男次男は嫡出子、第三子以降は非嫡出子になるような場合も、DI男性と同じなら受け入れますか?


前田:

もしそうなればですが、きちんと法がつくられ、それがちゃんとしてあるなら、仕方ないことだと思いますが。
でも、それはそれでおかしなことなので、変えてくれるよう運動しないといけないことだと思いますが。




泰斗:

嫡出子としての記載が認められれば、FtMであることを隠し通す人が出てくる可能性があります。
となると、一般のDI男性でも問題になっている子の出自を知る権利が阻害されると思うのですが、そこはどう考えますか?


前田:

これは、その家族の問題です。
言う、言わないは家族で決まることだと思います。
色んな考え、生き方があります。




泰斗:

子供に事実を知らせるのは大切ですが、正直に伝えればそれはそれで新たな課題があると思っています。
DIの親もその子も、その立場ゆえの悩みを相談できる場所はどれくらいあるのでしょうか?


前田:

今の会がそんな場になればと思っています。




泰斗:

DIによって生まれる子供の心理について、どう考えてきましたか?


前田:

子供がこれからどう思って、どう考えていくかは正直僕達にはわかりません。
これは、AID子だからとかではなく、どの家庭の子供もそうだと思います。
すべてを話してそれを子供がどう感じるか?
ほんと、その時になってみないとわからないことだと思います。
その時、どうなろうが構えていられるように、支えられるように、僕達夫婦は毎日全力で向き合い、愛情を注ぎ一緒に生活しています。

子供の心理についての答えになってないかもしれませんが・・・。
今、言葉では伝えにくいです。




泰斗:

僕が聞きたかったのは、DI子特有の問題についてどう考えているかということです。

DI子当事者の中には、愛情の問題ではないと言う人がいます。
寧ろ、愛情があるなら本当のことを知らせてほしいし、出自がわからなくても子どもの問題と一緒に向き合ってほしいと言っています。
中には、本当に子供のことを考えるならDIは利用しないはずと言う訴えもあります。

書籍も読まれたということですので、これら当事者の意見を聞いて、現時点で考えていることを教えて下さい。


前田:

当事者といっても十人十色でそれぞれの育つ環境、両親との仲、個人の性格など違って当たり前なので、感じ方考え方も違って当たり前です。
様々な意見があるでしょうが・・・。
子供が生んでほしくなかったというのも、子供にどう接しどう育てるかでも変わってくると思います。

僕達家族の考え方、思いを共感してもらいたいとか、絶対とかはありません。




泰斗:

その十人十色について、前田さんはどうなのか具体的に聞かせてもらえませんか?
日記を読む限りお互いの両親や兄弟とも交流があり、前田さんも子育てを楽しんでいるいい環境だと思いました。
自信を持っている点、これから検討を考えていることなど、その根拠を少しでも教えて下さい。


前田:

このことについて簡単に今すぐ言葉で綴ることは難しいので、現段階では上記回答でお願いします。
これからまた、きちんと綴ります。
これからも同じ扱いを求め、同じではないことを差別だと訴えていきます。




泰斗:

正しいはずの主張がこれほどまで通らない理由は何だと考えていますか?
国の怠慢ですか?


前田:

古い日本の考え、新しいことを率先してしない日本。
日本というより、官僚。




泰斗:

判決では差別だとは思っておらず、嫡出子の推定が及ばないことは明らかなので、却下は当然との判断だと思います。
それに対し前田さんは、今後も自分の主張の方が正しいという訴えを続けるつもりですか?


前田:

正しいとか正しくないとかではなく、男と認めたのならそう扱うべきことなのだから、今の訴えをかえるつもりはありません。




泰斗:

子なし要件をはじめ家族にまで干渉する特例法を作った国が、簡単に嫡出子と認めるとは思えないのですが、どう闘いますか?


前田:

どう闘うかは、今の裁判と自分達で地道に活動していくしかないと思います。






★参考


賛成意見

朝日新聞の記事 FTM軟式野球部『BRAVE SOUL』
治療なしFtMのブログ

FTMの妻が人工授精で子を産んだ場合には、その子は嫡出子なの?
大島俊之:性同一性障害って何?増補改訂版 P220~P225


反対意見

性別変えた夫の子、妻出産でも婚外子扱い 法務省見解
gid.jp代表 山本蘭氏(MtF)のブログ

鬼が出るか蛇が出るか
個人ブログ


中立・その他

「嫡出子認定を」不服申し立てへ 性同一性障害の夫 (Anno Job Log)
コメント欄で激論

特別養子
過去の事件など






続き⇒ FtM嫡出子問題⑨ 前田さんに質問 家族、質問を終えて

10回の連載予定です
すみません。

携帯壊れたおかげで、全然年内に終わりませんでした。

色々調べているうちに話が広がりすぎてしまって、まとめ切れませんでした。

改めて文才のなさを痛感しております(汗)。




本題の裁判の方は、12月26日に高裁でも却下という結果が出ました。

抗告してからわずか2週間という早さだったようです。

性別変更した「夫」、「父親」として認められず Anno Job Log

前田良の日記



これ以上要望を聞くまでもないと思われていることを、僕たち当事者も考えなければいけないですね。

差別と断じるのは簡単ですが、足りないところを補わなければ前進しないでしょう。

来年は最高裁に抗告するのでしょうけど、道のりは厳しい思います。




さっさとうま煮作らなきゃっ。


みなさんよいお年を……。
初めての方は注意事項に目を通してからお読みください。

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FtM嫡出子問題① FtMの男としての権利
FtM嫡出子問題② 嫡出子とは何か
FtM嫡出子問題③ 非嫡出子と養子縁組
FtM嫡出子問題④ 前田さんに質問 出生届を出すまで
FtM嫡出子問題⑤ 前田さんに質問 嫡出子の訴え
FtM嫡出子問題⑥ AIDで親になるということ


(※2013/3/29 一部修正)


前回、DI(AID、精子提供)を利用する夫婦の問題・心構えについて話したが、それはDI子の訴えによって明らかになってきたとも言える。

「DIを選ぶのは親だが、それを背負うのは子どもである」というのも、DI子の言葉である。


卵子提供を受けて出産した野田聖子議員は、複数の疾患を持って生まれた我が子に対し、こう言っている。

これも「この子の運命」だと。

だが、その運命は親が選んだものではないのだろうか。






長らく、DIを秘密にすることが家族の平和を守ると思われてきた。

その考えの根底には血縁主義が窺える。


だから、一般的にも誤解されているように思う。

事実が喜ばしいものではない時、他人は「知らない方がいい」と言ったりするが、果たしてそうだろうか。

どんな事実なら知りたいか、知りたくないか。

また、どんな事実なら傷つくのか、冷静に受け止められるのかは、人によって違う。


中には、ドナーのことなど知りたくないというDI子もいるかもしれない。

実子だと嘘を突き通してくれることが、親の優しさと感じる人もいるだろう。


問題は、出自を知るかどうかを子ども本人が決められるかどうかだと思う。




DI子なのにそうではないのが自分だと思っていたら、それは本当の自分を生きていないかもしれない。


あなたならそれでよいだろうか。

知らなければ幸せだろうか。


DIの事実は、親が隠し通すことなどほぼ不可能である。

また、事実を知る前から気づいていたというDI子は、半数を越えるというデータもある。


知らずに過ごすことが限りなく難しい時代に、告知しないという選択は、綺麗事を言い過ぎているような気がする。






出自というのは、今の自分がなぜ存在しているのかに直結しているように思う。

どのように生まれたかが不確かな人間が、今の自分に自信を持つことは難しい。

性同一性障害が中々自分に自信を持てないのも、近いものがあると思う。




アイデンティティーという言葉は自己同一性と訳されるが、日本語では一言で表現できない、もうひとつつかみにくい概念だと思う。

そのため、自分が何者であるかということには関心が薄い。

アイデンティティーは、危機に直面した時に意識することも多いので、安定している人に話しても中々理解されない。

しかし、とても重要なものである。




出自を知るというのは、事実をそのまま受け止めるということである。

嬉しくない事実なら知らない方がいいというのは、知っているからこそ言える台詞でもある。

事実を知らない人間は、出自について感じること自体が出来ない。


事実が嬉しくないかもしれないなら知らないでおくか、どんな事実でも知りたいと思うか、出来る限り本人の意志を尊重すべきではないだろうか。




出自を知るということは、育ての親を否定する行為ではない。

自分がどのように生まれ、どのように育ち、どういう経緯で今に至るのか。

それを受け止めて自分の存在を確立する作業だと思われる。




親に愛されてきたと感じているからこそ、知らされないできたことに動揺する人もいる。


告知されずに来たことに憤るDI子は、親に嘘をつかれてきたということに一様にショックを受けるようだ。

これまで騙されていたという憤りと同時に、過去の自分は偽りの土台の上にいたことに直面する。

父親が違うということは、それを元に信じていた過去の全てに影響する。




DI子が訴えるのは、「もっと早くに告知してほしかった」というものだ。

片親がわからないだけでも、そこには空白が出来るという。

DIという事実にショックを受けても、早くに知ればそこから土台を築き直せる。




出自は選べないが、その後の人生は選べる。

変えられない事実は受け止めるしかない。

ならば、出来るだけ早い方がいい。

考える時間があれば、その後の人生の選択までにいくらか余裕も出来る。




DI子と知らずに結婚して子どもを産んだ女性は、自分の子どもにまで問題を引き継いでしまったという。

健康と言われたドナーは遺伝性の疾患を持っていたらしく、その女性だけでなく更にその子(ドナーの孫)にまで、虚弱体質となって現れたのだ。

彼女は、DI子と知っていたら子どもは作らなかったと言っていた。


実際は、DI子と知って子を持たない人生を選択できたかどうかはわからない。

ただ、事実を知って決断するのと、知らずに問題を残してしまうのとでは意味が違う。






ならば、告知すればそれで解決するかと言ったら、そうではない。

DI子という現実は、子どもが無傷で終わることはないようだ。

だから、その傷を親が受け止め一緒に悩むことが求められる。


責任ある立場の親が受け止めてくれないことで、子どもはより苦しくなる。

子どもが背負うことになった重荷を、どう軽くするかが重要である。




誰でも、望まれて生まれてきたということを、ちゃんと表現してほしいもの。

その愛情貯金が、大人になってからもエネルギー源となるように思う。


DI子のように自分の存在が危うくなる立場の子どもには、そこを十二分に意識しなければいけない。


「あなたが生まれてきてくれて本当に良かった」

「あなたに出会えて幸せだ」

「あなたを愛している」


DI子は、ちゃんとそう伝えてほしいと言っている。

DIではあったけれど、あなたは望まれて生まれてきたのだと……。


愛情表現するのは、当たり前のことかもしれない。

だが、これらの言葉を伝えるためには、親が本気でなければいけない。

覚悟の足りない親を見抜けないほど、子どもはバカではない。






現在は匿名ではないドナーもいて、告知の必要性を知った夫婦が、非匿名のドナーを要望する例も増えているという。

また、不妊の現実を受け入れることや、血縁がなくても家族になるということに対して、カウンセリングを行う病院も出てきている。


妊娠・出産したら終わりという悪しき慣習は、変わりつつある。






最後に一つ問いたい。

「あなたならDIで生まれてきたいですか?」


DIという技術を知った時から、ずっと子どもの立場については気になってきた。

だが、自分がその技術で生まれるというところまでは想像できずにいた。

だから、このDI子の問いに驚かされると同時に、ヒントを得たような気がした。


もし選べるなら、私は「DIでは生まれたくない」。

直感的にそう思った。


この感覚に従うならば、やはりDIは安易に選択すべきことではないと思う。




DIしか選択肢がなく、かつどうしても子供が欲しい場合に、医療や法の背景を十分に考慮して行うべきではないだろうか。

そして、親はその思いを子供に十分に伝える義務がある。






人は技術や情報から生まれるわけではない。

人から人へ思いが繋がれていると考えるのが、自然ではないだろうか。

出自を知るということは、「自分がどのような思いから生み出された存在なのかを知る」ということだろう。

たとえそれが厳しい現実だとしても、それを受け止めて生きていく強さも子どもは持っている。

この試練を親が肩代わりすることができない以上、子どもに真実を知らせないことが一概に優しさとも言えない。


「選ぶのは親、背負うのは子ども」ならば、一緒に背負うことこそ優しさではないだろうか。




★参考

AIDで生まれた子どもたちが問いかけること(第三者の関わる生殖技術について考える会)

代理懐胎で生まれた子どもの福祉‐立命館大学

『精子提供 父親を知らない子どもたち』
著 歌代 幸子




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