これから紹介するのはある家族の話です。

良かったら、ちょっと考えてみてください。






父親、母親、娘の家族3人が父親の車で出かけました。

目的を済ませた帰りに、夕飯の買い物にスーパーに寄りました。

母親と中高生くらいの娘は、2人で献立の相談をしながら、食料品を選ぶことにしました。

父親は特に買い物する予定がなかったので、店内を歩きながら時間をつぶすことにしたようです。


食料品を買い終えた母親と娘は、ついでに娘の生理用品も見ることにしました。

売り場の前で話をしていると、そこへ父親が来ました。

父親は、棚の端から覗き見て「おーい、まだかー」と呼びかけました。

店内では少し大きめの声です。

それに対し母親が、一瞥して小声で「ちょっと待ってて」と言いました。

すると父親は、2人から2、3m離れたその場で見つめていました。


しかし、5分ほど経つと父親は再び大きめの声で呼びかけました。

「そんなに時間かかるのかぁ?」と言いながら、2人に近づいて行ったのです。

すると母親は、小声ながらも少し声を荒らげて、「ちょっと待ってて」と繰り返しました。


それに対し父親は、今度は店内に響くような大声で叫びました。

「俺はそんなもん使わねぇ!」と。


母親はとっさに、「そんな大きな声出さないの!」と注意しました。

ところが、父親は謝るでもなく、「お前らが遅いからだ!……」とぶつくさ文句を言いながら店を後にしました。

その間、隣にいる娘は顔も上げられず、ひたすら恥ずかしそうに小さくなっているだけでした。




買い物時間はいつもとそう変わりありません。

母娘一緒の時に、ついでに生理用品も購入しようとしたようです。



その後、家に着いても何もありませんでした。

夫婦や親子で喧嘩になることもなければ、誰かが言い訳したり誰かをフォローしたりすることもなく過ぎていきました。






質問です。


特に女性の方、あなたがこの娘の立場だったら、この出来事をどう思いますか?

お店ではどうしますか?

家に帰って親に何か言いますか?

それぞれの親に期待する言動、対処はありますか?


また、父親、母親の立場だった場合、あなたならどう対応しますか?

他に、不自然だったり非常識と感じたことなどがありますか?


FtMの人は娘の立場と父親の立場の両方、MtFの人は娘と母親の立場の両方を答えて頂けると嬉しいです。

FtMに娘の立場というのは、辛い思い出とか想像になるかもしれませんが……。




何でも、感じたことをコメントしてください。


実際はどうだったのかは、ある家族の日常②で紹介しています。

ネタバレになるので、ここには①のみを読んだ意見をお願いします。

②まで読んだあとは②の方に。
FtM嫡出子問題① FtMの男としての権利
FtM嫡出子問題② 嫡出子とは何か
FtM嫡出子問題③ 非嫡出子と養子縁組
FtM嫡出子問題④ 前田さんに質問 出生届を出すまで
FtM嫡出子問題⑤ 前田さんに質問 嫡出子の訴え
FtM嫡出子問題⑥ AIDで親になるということ
FtM嫡出子問題⑦ DI子の立場と権利
FtM嫡出子問題⑧ 前田さんに質問 AIDと今後に向けて
FtM嫡出子問題⑨ 前田さんに質問 家族、質問を終えて


(※2013/3/29 一部修正)


改めて、今回の裁判に関わる問題を整理してみる。


★嫡出子に関わる法改正
非嫡出子差別、離婚後300日問題、事実婚、選択的夫婦別姓など

★生殖医療の問題を含めた法整備
精子・卵子・胚提供、代理母出産、子宮移植や死後懐胎子の問題など

★性同一性障害(GID)などのセクシュアリティやLGBT(性的少数者)に対する理解
GID特例法の改正や同性愛者パートナーシップ制度の確立など




直接関係しない部分もあるが、多方面に影響があると考えられる。

生殖医療に関しては法整備の問題もあるが、医療機関の生命の取り扱い(出自の問題など)も、議論の余地がある。




ここまで来てもまだ、この問題に対する私の答えは出ていない。

子どものことを考えれば、早く嫡出子と認められる方がよいのか。

子の出自を知る権利を考えれば、むしろ却下された方がよいのか。

いずれにしても、引き続き議論と法整備が必要だろう。




これまで前田さんの訴えを聞いてきて、それでも私は彼を応援しかねている。

というのは、申し訳ないが、子供の気持ちはもちろん、他のGID当事者やAID(DI)家族への影響も考えた訴えには思えなかったからだ。


もし彼の訴えが認められれば、公に血縁0%の子どもを嫡出子と認めることになるし、子どもは出自を辿れなくなる。

確かに、遅々として進まない生殖医療の問題に一石を投じたという意味で、前田さんの訴えはとても有意義だ。

しかしながら、この訴えが通ることにより生じる問題も軽視できない。




嫡出子となった場合、一般のDI夫婦で問題になっているようにDI子であることを隠せる。

出自を知る権利について議論されている最中に、出自を隠せる方法を是とする判決はいかがなものか。

告知予定の前田さんは問題なくても、この判決が他のDI子の出自を知る権利を奪うとすれば、それも考えねばならない。




また、もし嫡出子とするならば、国は父親の決定に際して、「血縁は全く関係ない」という判断を下したことになる。

そうなると、民法772条の「嫡出推定」を「血縁は無関係」と解釈したことにならないだろうか。

嫡出推定は血縁を絶対視していないが、血縁がなくても良いと断じてる訳ではない。

DNA鑑定などがない時代に早期に扶養者を決めるには、推定とするしかなかったと言われている。


つまり、血縁があるのが好ましいが、調べようがなかったため推定としたのである。

なので、民法772条1項「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」というのは、血縁を問わず決定するというものではない。

問えない場合に推定とするのであって、問える場合は血縁を優先しているのではないか。


DI男性についても嫡出子と認められているのではなく、本来なら非嫡出子となるところを見逃されて来ただけである。




これを脱法と表現している人がいたのだが、言葉は悪いがなるほどと思った。

要するに、DI子が嫡出子となるのは合法ではなく脱法なのだ。

だから、DIとわかれば誰でも、脱法として処理される可能性はあった。

そのリスクのあるグレーゾーンに飛び込んだのだから、嫡出子の承認が得られないのは仕方ないのではないか。




一方で、同じDI男性として考えると、差別だというのも理解できる。

特例法には、

「性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、民法その他の法令の規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす」

とある。

つまり、性別変更後のFtMは男性として扱うということだ。

「法律に別段の定め」というのも、性別変更後に出来た子どもに言及した法律はないため、特に該当しない。




さらに、出生届の受理に際して行われるのは「形式審査」である。

必要書類や署名、捺印がそろっているかどうかだけを調べるもので、実質的なことは追及しない。

必要書類に血縁証明などはないので、DI男性は干渉されずに嫡出子となるのだ。


それはFtMも同じなのだが、FtMには性別変更したことがわかる一文がある。

そのために、DIは証明できなくても父親でないことはわかってしまう。


しかし、性別変更の一文から親子の血縁まで干渉するのは、形式審査とは言えないのではないか。

また、性別変更を考慮に入れなければいけないという法律もない。

あらゆる法の適用において、性別変更したことが参照されるのであれば、それは性同一性障害に対する差別と言っても過言ではない。




この差別を解消するには、一文を削除する、すなわち性別変更ではなく性別更正(訂正)とすることが最も有効な手段であろう。

今後はさらなる生殖医療の応用で、FtMと血縁のある子どもなども作れるようになるのかもしれない。

親がGIDかどうかではなく、生殖医療に対応した同じ法律で判断されるべきことと感じる。




この問題に対する意見をまとめるなら、その賛否はそれぞれ別の軸で語られていると感じた。

前田さんに賛成する人は差別という感情論が中心なのに対し、反対している人は法解釈を根拠にしている。

この感情的には差別と思われることを法的に解決するためには、生殖医療を含めた早急な法整備が望まれる。






そして、差別と言うなら、特例法の要件そのものが多くの差別を含んでいると言えないだろうか。

制定当時から問題になっている子なし要件はもちろん、他の要件もGIDの診断基準以上のものが求められている。


例えば、四、五は見た目に加え性器や生殖腺の治療まで要求している。

この論文で述べられているように、特例法の要件は生物学的性と形式に終始しているのだ。


要するに、治療を望むトランスセクシュアル(TS)のみを救う法律となっている。

自分の性(男性)として社会生活を送りたいが、治療が必須ではないトランスジェンダー(TG)の私などは、全く考慮されないのである。


そのため、一般の認識ではトランスセクシュアルこそがGIDという誤解がないだろうか。

いや、FtMの中にさえそういう認識の当事者が見受けられる。


実際は、性別変更しても変更後の性別で社会適応出来ていない人もいると聞く。

適応が全く条件に含まれないのは問題だろう。

現在のGIDは、どんなに社会に馴染んでいても、手術していなければ性別変更はかなわない。

戸籍の性別という肩書きが必要なのはTGも同じであるのに、まだこの状況である。




個人的には、GID差別の問題はまだまだ先に検討されるべき事柄があると感じる。

性別変更まで出来る当事者は、GIDの中でも恵まれている存在である。

今回の裁判は、その中でもさらに一部のFtMに対する処遇についてである。

ここばかり注目されるのは、GIDの諸問題をますます見えにくくするように思う。


同じ嫡出子の問題で見ても、離婚後300日問題などの方が急務であろう。






そして、これらの問題はそもそも嫡出・非嫡出の差別があるからこそ生じている。

FtM伊東聡氏が提案しているように、非嫡出子差別問題として闘う方が有益だ。

逆にそうでなければ、複数の人が指摘しているように「非嫡出子は差別されてもよい」という訴えに聞こえてきてしまう。


親のツケを子に払わせる非嫡出子という存在そのものが、問題なのである。

世界から異常を指摘されているこの制度の廃止が、最も有益な解決ではないだろうか。


親がどうのではなく、子はみな子でいいと思う。






最後に、この問題を通じて私が一番印象に残った、ある養子を迎えた夫婦の例を紹介したい。




不妊と診断された夫は、妻と同じ条件でスタートしたいという理由で、養子という選択をした。

そして、生まれてくる子も親は選べないという理由で、夫婦は養子にも条件はつけなかった。




養子の一人に、「ずっとここにいていい?」と何度も確認する少年がいた。

彼はある時、前に実母と暮らしていたアパートを訪ね、自分の荷物が全て片付けられていたと知る。

それを養母に報告すると、また「本当に、ずっとここにいてもいいの?」と確認する。

養母は、その度に「ずっといていいんだよ」と抱きしめた。

冬になると何度も母親に置き去りにされた少年は、こうして少しずつ自分の心を整理して行ったという。




「子どもはみんな一度は捨てられるの?」そんな質問をする子もいた。

また、実母に会ったら「バカヤロウって言うんだ」と語る子もいた。

理由を聞くと、「子どもってすごく大事なものなんでしょ?そんな大事なものを捨てるんだから」だと言った。




この養親は、子どもが聞けば出生についても正直に話すことにしている。

しかし、「お母さん(養母)から産まれたと言ってほしかった」という女の子もいて、告知には難しさもあるようだった。

既に養子の事実を受け止めていたからこそ、嘘をついてほしいということもあるのかもしれない。




親は不妊、子は親に捨てられたという現実を少しずつ受け入れながら、絆を作って行っているのだと感じた。

言葉にすると安っぽくなってしまうのだが、親も子も一緒に家族になろうとする姿に涙が止まらなかった。

血縁で言うなら、この家族はみんな他人である。

でも、一番、家族らしいと感じた。




どういう巡り合わせか、私は愛されているという実感を持てないまま大人になった。

いくら法が味方しても、血縁にあぐらをかいている親に家族は作れないというのが、私の経験から思うところである。

それでも、親の悪口を言っていられる自分は、随分幸せなんだと思う。

DI家族や養親子家族を知って、切にそう感じる。






先日、国内の民間団体が卵子提供の仲介活動をすると発表した。

ここにもDIと同じ問題が含まれることだろう。


子どもが関わる問題は、情報を共有し社会で守っていく必要がある。

親となる人間は、人を生めば人を育て、家族になる努力をしなければいけない。

それは自然妊娠でも同じである。


私たちFtMも、父親になれるかどうかの前に、子どもの立場、家族とは何かを改めて考えたい。






終わり。




☆関連記事
性同一性障害と嫡出子① 親の資質
FtM嫡出子問題・続④ 嫡出子と認められFtMも父親に
初めての方は注意事項に目を通してからお読みください。

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FtM嫡出子問題① FtMの男としての権利
FtM嫡出子問題② 嫡出子とは何か
FtM嫡出子問題③ 非嫡出子と養子縁組
FtM嫡出子問題④ 前田さんに質問 出生届を出すまで
FtM嫡出子問題⑤ 前田さんに質問 嫡出子の訴え
FtM嫡出子問題⑥ AIDで親になるということ
FtM嫡出子問題⑦ DI子の立場と権利
FtM嫡出子問題⑧ 前田さんに質問 AIDと今後に向けて


(※2013/3/29 一部修正)


前田さんへの質問もこれで一応ラストとなる。

これも、内容は重複していたり質問順ではない。

また、表現には修正もあり、前田さんの意図しないものがあった場合には、再度修正することとする。


ここまで掘り下げることが出来たのも、彼の回答のおかげである。

ここに礼を言いたい。




敬省略

泰斗:

嫡出子と養子で実質的に変わらないのに嫡出子を主張し続けるのは、前田さんの男としての立場を重んじている為なのかとも感じます。
それが実際の親子関係よりも重要ということであれば、失礼ですが、親のエゴやFtMの男としてのプライドだとは思いませんか?


前田:

それは、周りが僕のやってることに関して思うことで、僕はそうは思いません。
子供が成人するまでは僕達親が子を育て、お金も教育もしていく義務があります。
その中で、子にも権利はあるけれど、僕にも権利はあります。
成人までは手をかける親の元に育ちます。だから、その間、子供には親の指導に従ってもらいます。




泰斗:

もしかしたら、お子さんは全く望まないことかもしれませんよね?
嫡出子として認められても、お子さんが親子関係に異を唱えることもあるかもしれません。
それは子どもの権利として認めますか?


前田:

それはわかりません。
でも、生まれたときからそういう環境にいればそれが普通になるわけで、子供たちは今の状態が当たり前というか普通になるでしょう。
なので、望む望まないというより、「お父さんたちこういうことやってるんだ」と思うだけだと思います。

異を唱えるのは、子供が自分で真剣に考えたならそれはしかたないことです。




泰斗:

同じ扱いでないことは理不尽ですが、嫡出子になったところで、得られるのは前田さん自身の自己満足だけではないでしょうか?


前田:

嫡出子になって何か得るという、利益のためにやっているわけではありません。
やっていてそう思われても、これは僕達夫婦が真剣に悩み、考えてやってることです。

特別養子縁組をする時、妻が自分で産んだ子供なのに、養子縁組しないといけないのもおかしい話です。
妻もなぜ、自分がお腹を痛めた子供と養子縁組して、養母という状態にならないといけないのかと感じています。
そういったことも色々考えて、話しあってのことです。




泰斗:

男性と違う扱いに差別を感じるとしても、生活は何も変わらないですし、裁判には相当なエネルギーを使うと思います。
そうまでして何を得たいのでしょうか?
男性と同等というのは何を意味するのか、違う扱いで何を失っているのか、何が許せないのかを教えてください。


前田:

何を得るとか得ないとかではありません。
そういうことがあるから何かをするという考えも、間違っていると思います。

人それぞれですが、何か利益を得るためにする人もいれば、それをして何もなくてもやる人もいます。
僕は最初に疑問に思ったから行動を起こしただけで、父親になることが目的と言われればそうかもしれません。
得る得ないでとそこまで深く考えたことはありません。




泰斗:

しかし、その自己満足に大事な子どもを付き合わせていることは、批判の対象になるのではないでしょうか?


前田:

賛否両論で、周りがそう思っても、僕達家族の考えかたなので、静観して下さいという感じです。
賛同してくださる方からは応援や温かい言葉を頂いています。
そういう方には感謝いたしますが、そうでない方に無理矢理理解してもらおうとは思いません。

人間なので色んな考え方の人がいます。
僕達家族も、批判的な言葉を見聞きしてそれに思いを注ぐほどタフでもないですし、時間もありません。
それより、前へ進むことに力を注がないといけないので・・・。




泰斗:

自分のプライドに家族を巻き込んでいるという自覚はありますか?


前田:


巻き込んでいる!?家族に対し、巻き込む、巻き込まないではありません。
もし、妻が何かしたいと思えばそれを一緒に応援し力を貸し、それが子供でも同じです。
僕だけがとかではないし、家族ってどういうものか?というところだと思います。




泰斗:

同じGID当事者でも、子供を持てない人、結婚できない人、戸籍変更がかなわない人、治療が不可能な人などがいますが、そのような人たちに対してご自分の立場をどう考えていますか?


前田:

立場ということに関しての回答にはなってないかもしれませんが・・・。
変更できて、子供もいて、いいやんかとか、この今の問題も贅沢だと思われていると思います。
もちろん上記に書かれた方々の問題もなんとかしないといけないことだとは思います。

この件に関しては賛否両論だと思います。
なので、全員にわかってもらおうとか、理解してもらおうとか難しいことですし、みんな人間です。
一人一人考えや、思うことは違うと思います。
でも、僕は周りからなんと言われても思われても、僕達家族が決めたことなので信念をまげるつもりもありません。

まだまだ、GIDということでの問題はたくさんあります。
これもその1つだと思いますし。
色んな問題がある中で、全部1人の人間が解決したり、1人でやったりなんてできません。
僕自身も今まで人任せでした。
僕は今回の件で、色々勉強させてもらいました。
少しずつでも色んな問題がいい方向へ解決できるように、僕も考えないといけないと思っています。


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前田さんが感じた差別という感情を、否定するつもりはない。

実際、私もこの裁判を初めて知った時は、差別だと感じた。

血縁がないのはFtMもDI男性も同じであり、その扱いに違いが生じるのは不公平だと思う。


ただし、GIDとわかればこのような事態もあると踏んでいた。

それは確かに差別かもしれないが、あんなに厳しい要件の特例法でGIDを扱う現状では、残念ながらその程度だろうという見方だった。




この問題を「是正すべき」と考えている人と、「却下されて当然」と考えている人との違いは何か。

それは、前者は差別、後者は差別ではないという主張だけではないと思う。

後者には、国のGIDに対する理解と法整備の状況を踏まえた意見も含まれるだろう。






改めて、前田さんからの回答をまとめてみる。


まず、彼は役所の対応から差別だと訴えているが、GIDに不案内なだけではないだろうか。

それも当事者には差別と感じることはあるが、わからない人たちに説明していくのも必要だろう。

裁判で差別を訴えるのなら、期待されるスキルの一つだろうと思う。




次に、出生届を出すまで全く想定外だったと言っていたが、だとすれば、当事者としては残念ではある。

前田さんの言うように、FtMも同じ男性として認められるべきかもしれない。

しかし、もし社会にFtM=男性という理解があるなら、そもそも特例法など必要ないはずである。

法律を作らなければ性別変更出来ない社会的背景(参照⇒FtM嫡出子問題① FtMの男としての権利)を、読み取って欲しかった。




さらに、二人目を作るなという意味ではなく、この状況を踏まえた対策を聞きたかったのだが、回答は得られなかった。

兄弟を作ってあげたいという親の思いは、間違いではない。

普通の家族と同じ感情という子供を望む気持ちも、否定されるべきものではないと思う。


だが、長男の裁判中に子をもうけるということは、次男にも同じ問題が起きることを認識していたということ。

非嫡出子になるとは知らなかった長男の時とは、意味が違うだろう。

これでは「非嫡出子でも構わない」と、言っているようなものではないだろうか。

既成事実を先に作り、「子供が可愛そうだから認めてほしい」とも受け取られかねない。


子供を望む気持ちを優先させるのは自由だが、その結果には責任を負わなければいけないだろう。




また、彼の子供はDI子でかつGIDを親に持つという立場だ。

DI子だけでも難しい面があり、GID親の子には新たな課題もあるかもしれない。

そこをどう考えてきたのかを聞きたかったのだが、残念ながら具体的な話は聞けなかった。




今は関連団体もいくつかある。

DI当事者の団体としては、「すまいる親の会」「DOG」など、不妊の人の自助グループでは「フィンレージの会」などがある。

また、医療サイドからは「日本生殖医療心理カウンセリング学会」というのも存在する。


前田さんやGID当事者だけでなく、子どもを考えている全ての人に情報を共有してもらえたらと思う。




彼の訴えを親のエゴと断じるのは言い過ぎだったかもしれないが、勝訴で「何も得るものはない」という考えは意外だった。

恐らく、彼にとってはこの裁判は「間違いを正す」以外の何物でもないのだろう。


特別養子縁組で、妻が養母となるというのも間違いの一つなのだろうが、これはFtM嫡出子問題③ 非嫡出子と養子縁組で説明したように、特別養子の目的からいってやむを得ないと思う。

寧ろ、本来ならFtMの夫婦に適用されるものではないので、例外的に認められていると考えた方がよいだろう。






最後に、前田さんはこの裁判は家族が決めたことと強調したが、そこには子どもの同意は含まれていない。

彼の言うように、子供は面倒を見てもらっている間は親に従うしかない。

だが、前田さんに裁判を起こす自由があるように、子供にも自由がある。

訴訟までして差別を訴える人だからこそ、子供の意志を尊重できる親になってくれることを願う。






★参考

カウンセリングルームふらっと リンク・情報コーナー






続き⇒FtM嫡出子問題⑩ この裁判が問うもの