FtM嫡出子問題⑩ この裁判が問うもの




前田さんの裁判ではないのだが、同じように裁判を起こした人がいるようなので引用する。


毎日新聞(PCのみ)

<戸籍訂正>性同一性障害の男性、家事審判を申し立て
毎日新聞 2月1日(金)20時9分配信

 性同一性障害で戸籍の性を女性から変更した中部地方の30代男性が1日、「第三者の精子提供を受けてもうけた長男(3)の父親と認められないのはおかしい」として、戸籍訂正を求める家事審判を家庭裁判所に申し立てた。性同一性障害の人の親子関係をめぐっては、東大阪市の夫婦が同様の申し立てをしている。

 弁護団によると、09年に出生届を受理した役所は当初、戸籍の父親欄に男性の名前を記載した。ところが2年8カ月後、「(男性に)生殖能力がないのは明らかだ」として、職権で父親欄を空白に訂正したという。妻と一緒に申し立てた男性は「一度認めた親子関係を簡単に変えられたことに憤りを感じる。もし妻に何かあったら息子は誰の子でもなくなる。裁判所は重く受け止めてほしい」と訴えるコメントを出した。

 東大阪市のケースでは東京家裁が昨年10月、申し立てを却下した後、東京高裁も即時抗告を棄却した。夫婦は最高裁に特別抗告と抗告許可を申し立てている。
【丹野恒一】






これはさすがに酷いと思う。

一度認めたのに、2年8ヶ月も経って取り消し。


父親が自分の子どもではないと主張出来る嫡出否認だって、1年以内と決められている。

それは、子どものためには親を早期に決めることと、度々変更しない方がよいという理由だったはず。

こんなに遡って訂正するのは、その精神に反すると思う。


恐らく、前田さんの裁判を受けて、管轄の役所が思い出したように訂正したのだろう。


それにしても、今取り消す必要があるのだろうか。

前田さんも最高裁に抗告中で結果が出ていない段階だし、性同一性障害(GID)の子どもの問題も生殖医療の問題も、これからどうなるかわからない。

この段階で慌てて遡って職権記載するというのは、認められる前にわざわざ訂正したということ?

職権記載は一方的に書かれてしまうものだから、そういう意味でもきつい。


別に遡ってまで調べなくても、担当者が罰せられる訳でもないだろう。

もともとグレーゾーンだったのだから、その時は嫡出子としても間違いではないはずだ。

さすがにやりすぎだと思う。




じゃあ、60年以上の間に生まれた1万人以上のDI子(精子提供によって生まれた子ども)はどうするのか?

相変わらず、わからないから放って置かれている。


DI子は今も生まれ続けていて、病院によっては、必ず嫡出子として戸籍登録するように指示さえしてきたというのに……。

一般のDI家族は守るのに、GID家族は暴かれて当然という扱いに思える。




だけど、前田さんが裁判を起こしたことでこういう事態は予測されていた。

男として生きたいFtMが、GIDとして注目されてもあまりいいことはない。


性別変更の記載さえ無くなれば、他のDI男性と同じである。

だから、記載を無くすよう活動している当事者からすれば、余計なことをしてくれたというのもある。


こうなってしまった以上仕方ないが、FtMが父親になれない可能性は高くなっただろう。

iPS細胞に夢を馳せるより、改めて親子や家族とは何かを考えるときに来ていると思う。




GIDを前面に出して戦うからには裁判は勝つことが必須であり、プラスGIDの啓蒙に繋がれなければ痛手が大きいと感じる。






もう、嫡出・非嫡出の区別なんかなくしたらいいんだよ。

そもそも、親の立場で生まれたときから子どもに区別が存在してること自体おかしい。

親がルール違反をしてるなら親だけを罰するべき。


その上で、子の出自を辿れる履歴システムを構築してほしい。






★参考
できるだけフツーに生きたいんですけど
中部地方のFtM夫妻のブログ
前田良の日記
2月1日に今回申し立てした当事者について
1月25日に最高裁の抗告について

☆関連
FtM嫡出子問題・続② 前田良氏の次男は親子関係確認訴訟へ
ある家族の日常①からの続きです。


みんな、沢山の意見ありがとう。

色んな角度からの考えが聞けて、とても面白いなと思いました。






俺が娘の立場なら……。


FtMじゃなく普通の女の子だとしても嫌だろうなと思う。

父親のデリカシーのなさは最悪。

その場は絶対、他人のフリ。

こんなところで喧嘩したら自分が恥ずかしいだけだし。

父親にガン飛ばして暫く口利かないね。

売り場の問題じゃなく、店で大声出すって大人としてどうよ。

そんなに暇なら立ち読みでもしてろ。




でも、母親にも怒りは感じる。

女なら、むしろ母親の方が腹立たしいのかな。


馬鹿オヤジはもう関わらないとしても、同じ女としてわかるはずの母親がこの態度は許せないと思う。

娘の自分の気持ちを察してくれないこと、父親に対し思春期の娘についての教育が足りないことなど、かなり歯がゆい感じがする。




で、FtMとして娘の立場に立つと、まぁかなりキツいよね。

だって、母親と生理用品を見ている現実だけで、卒倒しそうなんだから。

俺にとっては、女の体の中で1、2を争うくらい無駄であり、受け入れ難い。


健康な女性の体と言うが、男が女の体をしてたら不健康だろう。






父親の立場なら、まず近寄らないな。

母と娘だけじゃなく、他の女性客にも邪魔だと思うから。

別のところで時間を潰すし、遅いなぁと思ってもその場では言わない。

もしイライラして大声を出してしまったとしても、それを反省できるだけの親父でいたいなと思う。


娘に直接謝ることはしないけど。

自分がバツが悪いということもあるが、そんなことされても娘も恥ずかしいだろうから、悪かったとだけ母親に伝えてもらうだろう。

その後も買い物に付き合わされて待たされることが多ければ、そこは自分の意見を言って、今後はどうするか話し合う。

時間の目安を言ってもらうとか、俺も車で音楽聞いてるとか。

特に、思春期の娘と母親の買い物に父親は邪魔なら、遠くにいるよ。


俺は、女性特有のものは細かい説明はされたくない。

トラウマもあるし、理由を聞いても経験出来ないことはよくわからないから。

購入に時間がかかるなら、それだけは伝えてほしいかな。






母親なら、「ちょっと待ってて」だけでなくもう少し説明する。

それに、父親がどんな性格かぐらいわかってるだろうから、待たせないように策は講じておくのがベターだね。

でも、母親や娘が父親の行動を先読みして配慮するというのは、イマイチ理解できない。

この程度のこと、自分で対応しろよって思っちゃうもんな。


日本の家庭は妻が夫の母親役を務めるのは珍しくないけど、俺はどうしても、そんな大人になってない奴と何で結婚するの?って思ってしまう。

だから、せめて娘だけは守ろうと思うなぁ。

父親に娘の気持ちを伝えても変化がないようなら、買い物だけでなく、父親と一緒に出掛けることはしないようにする。


だがそもそも、この母親が父親を教育する気も娘を守る気もないから、こんな事態になってしまっている感じはするけど……。








そろそろ種明かししようか。


気づいた人もいると思うけど、これは一昔前の我が家の光景。

だから、娘は若かりし頃の俺。


父親をブッ殺してやると思った出来事の1つです(苦笑)。


FtMだからそう思ったのか、女性ならどう思うのか、他のFtMはどうなのか、真っ当な親はどう対応するものなのか、聞いてみたかったんです。




うちの場合だと、今話したような解決法は当時は不可能と言っていい。


なぜ無理か。


そもそも父親は、「店内で大声を出す」ことが何を意味するかわかっていない。

大声は他のお客さんやお店に迷惑だということが頭の片隅にないから。


それは経験がないからではなくて。

父親は相手の立場は想像できないので、そもそも周囲はどう思うかということは考えていない。

イライラして周囲のことを考える余裕がなかっただけではない。

周囲のことも考えなければいけないということを、定型のようには知らないと思う。


だから、仮に家に着いてこの状況に文句を言ったところで、父親は自分の都合しか説明しないと思われる。


「大声なんか出してない。呼んだだけ」

(大きさは自分の感覚だけで、店では大きすぎるとか家族が恥ずかしいだろうという視点はない)


「お前らが遅いからだ」

(仮に時間を約束して自分が早く来すぎたとしても、父親は相手が遅いと言う)


「俺はそんなもん使わねぇ!」に至っては、母親が何か説明したことに対し、自分のことと勘違いしたのかもしれない。

うちの父親は、誰の話でも全部自分のことだと思うくせがあるので。

だから、説明すればするほど、「俺は……」という話になる。

娘の立場を始め、自分以外の人の都合を考えようとしない。




女性とか娘とかに対する配慮、デリカシーなんてレベルでつまずいているんじゃないんだよな。

実はもっと根本から理解できていない。

だから、もし父親に理解させようと思うのならば、迷惑という概念はもちろん、他人という存在を一から教えなければいけない。




発達障害は基本的に、他人が自分とは違う思考、感情、意志などを持ち合わせた存在であるということを深く認識していない。

こうした言葉にすると、ずいぶん思慮が必要なようであるがそういうことではない。


例えばこういうことだ。


俺がパンを選んでいると、父親が隣からこう言ったことがある。

「アンパンの方がうまいぞー」


俺は好んでアンパンは食べない。


父親は、自分と他人に好みの違いがあるという認識さえ乏しいのだと思う。

20年以上一緒に暮らしていて、俺がアンパンを食べているシーンを目撃したことがないはずだが、そういうことが関係あるとも思っていないだろう。

だから、当然のように勧める。


と言うか、本人は勧めたつもりもなく、思ったことを口に出さずにいられないだけ。

思っても、状況や立場を考えて言わないとか、言葉を選ぶことを考えたことがないのだと思う。


その後俺に睨まれても、父親は失言したとも思わない。

睨まれるということは、何か理由があるという発想もないからね。




父親なんてそんなもんと思うだろうか。

確かに一般家庭でも似たような状況はあるが、無関心や無理解の質が違う。


父親は俺の好みを知らないのではなく、好みという自分と他人で異なるものの存在から知らないのである。

子どものことをよく知らないのではなく、子どもとは何かを知らない。




だから、父親には大声は迷惑とか生理用品は恥ずかしいと言っても、半分も伝わらない。

父親が迷惑をかけた、恥ずかしい思いをさせたのではなく、俺が勝手に迷惑、恥と思っているとしか認識しない。

理解させるには、迷惑や恥の存在から教育しなければならない。






では母親はどうか。


当時だと、母親も娘の恥ずかしさはわからないと思う。

大声を出されたことはもちろんだが、こんな場面を父親が覗きに来たこと自体が、俺は気持ち悪くて仕方ない。


だがそれを母親に言ったところで、聞き入れさえしないだろう。

恐らく、「大声出さないでって注意したでしょ?」と言うものの、それは非常識なことをした父親への非難だけ。

俺がどんな思いをしたかは、気になりもしないと思う。




父親ほどではないが、母親も相手の立場になって考えることは出来ない。

だから、年齢や経験の違いも考慮されない。

俺が中学生くらいになると、母親は自分に出来ることは俺にも出来るはずだと思うようになり、未経験のことで失敗してもボロくそに言われて、本当に惨めだった。

俺が出来ないことがわかっても、教えてもくれないしね。


共感能力も低いから、俺が辛そうにしてても優しい言葉をかけることもない。




それがわかっているので、母親にも一切言わなかった。

気にしてる俺が悪いみたいに言われるだけ。

二次被害に遭うこと必至。

悔しさと恥ずかしさでグチャグチャになってる気持ちを、これ以上かき回されたくなかった。


当時は発達障害はもちろん、毒親であることにも気づいていなかったから、その不快感を表現出来なかっただろうし。


今なら、説明すれば俺の気持ちまではわかるようだが、具体的な対処までは出来ない。

父親に注意するとか、今後はどうするか話し合うとか、俺がお願いしてもしないと思う。

それが解決に繋がると理解してないんだろう。


ましてや、FtMの複雑な心理など知って欲しくもないので、もう話すこともない。




うちの親には、子どもを安心させるという意識がない。

立場という概念がわからないから、親の役割とかも表面しか理解してなさそうだし。

そんな人に子どもの気持ちを考えろと言っても、無理な話だよな。






みんなありがとう。

スッキリしました。