俺とハング その19(無知と無謀) | オレブログ

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さあ、
俺の話しを聞いてくれ。

ロッケンロール!

(テイクオフするときに俺が発する呪文。ちょっと照れてるので小声。)

しばらくまっすぐ進み右へ体重移動する。

機体は右方向の尾根を目指し滑空する。

 

ピッ…ピッ…ピッピッピッ…。

バリオから上昇を知らせる電子音が鳴る。

 

バリオメータ(昇降計)。体感だけではわからない機体の昇降を数値、目盛り、音で知らせる。

今ではGPS機能やその他モロモロついてるのが普通。

当時、トオルが使用してた同型。今見たらヤフオクで250円スタートしてた。

 

ピッピッピッピピピィィィー。

グンッと機体と体が持ち上げられる。

(うおっ!きたぁー。とりあえず回せ。)

 

リフトの幅は大きく、俺のつたない旋回でもコアを捉えることができた。

この時テイクオフから200mのゲイン。ランディング(着陸場)から約700m上空という事になる。

(やった!初めてこんなに高度獲得できたわ。見てるかトオルー。ウッヒョー!ロッケンロール!)

 

 

まだ上昇は続く。700m、800m、900m…。1100mまで上昇した。

(…すげー。海見えるわ。)

更クサ山から一番近い海岸線まで直線で約20キロ。眼下と言っていいほど近く感じる。

 

 

ちょっとめんどくさい話になるが、グライダーの性能を評価する材料として滑空比と言うものがある。簡単に言えばどのくらい遠くに滑空できるか。良く飛ぶかってことだ。

 

例えばタイメイケンのグライダーの滑空比を10:1とする。

10:1の1を今いる高度1100mとし10倍する。

すると11000:1100となり、今いる高度1100mから理論上は11㎞先へ滑空することが可能。

 

 

上記の理屈なら20:1の滑空比のグライダーなら海岸にたどり着けるということになる。

あくまで気象条件等は加味しない数字の上の話な。


俺の機体は初級機でよくて多分6:1。そのまま海岸線に向かうと理論上は山にツッコみ、ヨーダらにアサヒスーパードライをおごらなくてはいけなくなる。(ビールで済めばって話もあるが)

山にツッコむ(山沈)のペナ詳細は、その11参照よろしく。

https://ameblo.jp/ftft2323/entry-12673055156.html?frm=theme

 

 

(ひょっとして…行けちゃうんじゃねーのかコレ!)

 

時として素人と言うものほど怖いもの知らずはない。

無知とは恐ろしい。

 

飛んだら最終的には降りなければいけない。

そこをまず確保しなければ安全には楽しめない。

先にテイクオフしたヨーダらのコースを辿るとすれば、そのコース上は10㎞までは比較的広い田んぼが在りおそらく安全に降りられる。

しかし、そこを超えると30㎞先に行くまでは経験者でも難しいランディングを強いられる。

 

(いける!チャンスだ!オッサンらに一泡吹かしたるわ!)

この時点で俺の更クサ山からの飛行は10本足らず。

高高度飛行を経験してから2ヶ月足らず。向かう先の情報はほぼ未知。

 

俺はいま生きている。

 

その20へつづく。