その13からの続きだ。
ガッ…上がらねーわ。リフトが弱いっ。ガッ…走れねーかも。
先にクロスカントリートライをキメたはずのヨーダから気弱な無線。
だから言ったんだよなぁ。今からだと時間的に遅いってっ。
なっシグマ、俺そう言ったよなっ!
…ですね。
トオルが言うように、きれいなクラウドストリートを形成する積雲は所々ぼやけていた。
普段の生活で、しばらく雲を眺めていられる優雅なセレブ時間を満喫できる人は少ないかもしれないが、一回経験してほしい。
ある雲に目星をつけて30秒目を閉じてみてくれ。
目を開けた時、その雲は30秒前の形を留めているか。その雲自体判別できなくなってはいないか。恐らく判別できるのは真夏の遠くにある積乱雲くらいだろう。
それほど雲の成長と消滅のスパンは短い。
※追記(ちょっと不安になってきたので目瞑るの5分にしてもらっていい?長い?だめ?)
あーあ、ダメだな、俺の予想通りだわ。なっ!俺が言った通りだろフガッ!
言っちゃなんだけどさ、わかってないんだよねぇヨーダさん。吸い上げが弱いのは目に見えちゃってるんだよねぇフガッ!
せっかく有給使って来たのにな。あーあ、サクッと飛んで今日は帰ろ。フガフガッ。
(せっかく盛り上がってるところに、また水差すようなことばっか言ってコイツは…あとでヨーダにチクってやろっと♪)
(ていうかアンタ、有給使って休める会社にお勤めされていらっしゃるんですかっ!)
(時藤三郎が「24時間戦えますかっ♪」ってTVCMでおっしゃってるこのご時世にっ!)
ああ、シグマを先に出さねーとな。行くか?
加齢臭ハンググライダークラブの中で初心者は俺だけ。
安全の為、飛ぶ順序はサポートするメンバーがいる時に限る。
はい、お願いします。
有給申請して受理される企業にお勤めの上級国民トオルにサポートされランチャーに移動する無職。恐れ入りますっ!
ちゃちゃっと行っちゃえ。どうせぶっ飛びだわ。
(…萎えること言うなよトオル。さっきのマジでヨーダにチクるぞ)
行きますっ!
ランチャーを駆け飛び立った。
その19につづく。