星の輝き、月の光 -27ページ目

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

 

朝から降り出した雨は昼前には強さを増し、気がつけば土砂降り状態になっていた。

ざあざあと窓ガラスを叩く雨。

家の中にいてもその音から激しさが伝わってくる。

久々のオフで、今日はミニョを花見に連れてってやろうと考えていたテギョンは、仁王立ちで窓の外を恨めしそうに見ていた。

昨日見た天気予報では確かに今日は全国的に雨が降ると言っていた。しかしそれは大した降りではないとも言っていた。

晴れているのが一番だが、曇天の下、傘を差しながら肩を寄せ合い、しとしと降る雨に濡れた桜を見上げるのもまた一興と思っていたテギョンは、予想外の土砂降りに言葉を失う。雨だけではなく風も台風並みに強いとなれば、いくら傘を差していてもそんなものは役に立たず、外に出た瞬間にずぶ濡れになるのは目に見えていて、テギョンにはそこまでして出かけようという気力はなかった。


「せっかくのオフが台無しだ」


ひとしきり睨むように外を眺めたテギョンは、チッと舌打ちすると唇を歪めた。


「私が家を出た時はちょっとしか降ってなかったんですけどね」


ミニョがテギョンの家にやって来たのはまだ雨が激しくなる前。しばらく待てばやむかもとお茶を一杯飲んでいる間に雨足は強くなっていった。


「桜、この雨で散っちゃわないといいんですけど」


「満開だったからたぶん一気に散るだろうな。まったく、あてにならん天気予報だ」


春時雨とはとても言えない春の嵐にテギョンの鼻息は荒い。

天候にも負けないほど暗い空気をかもし出しているテギョンの機嫌を少しでもよくしようと、ミニョはテギョンの腕を掴むとテレビの前へと引っ張っていき、ふかふかのソファーに並んで座った。


「オッパはいつも忙しいから、今日はお家でのんびりしましょ」


ここ数週間、ゆっくり会うこともできなかった二人。

身体を密着させるように寄り添えば、歪んでいたテギョンの唇も徐々に緩んでいく。

テレビをつけると古い外国映画がやっていた。


「面白そうですね」


じっと画面を見つめるミニョ。しかし、映画にそれほど興味がないのか、テギョンは画面を一瞥するとミニョの肩を抱き髪を触りはじめた。

少し長めのストレートの髪はサラサラとして触り心地がとてもいい。ふわりと香るシャンプーの匂いは鼻腔をくすぐり、雨のせいでいらついていたテギョンの心も、いつの間にか凪いだ海のように穏やかになっていった。

くるくると指に巻き付けた髪は毛先からするりと逃げていく。手のひらですくい指の間を流し、左右に分けてみたり、アップにしてみたり。まるで子どもが新しいおもちゃに夢中になるように、テギョンはミニョの髪を弄っていた。

初めは何をされても特に気にしていなかったミニョ。というより、髪を触られていることが心地よく、テギョンの好きにさせていたが、引っ張られたり、ぐいっと持ち上げられるとさすがに映画に集中できなくなってしまった。


「オッパ、落ち着いて観れないんですけど」


「ああ、悪い」


そう返事をしながらも、ミニョの言葉は右から左へ素通りしてしまったようで髪から手を離さないテギョン。あーでもない、こーでもないとぶつぶつ呟きはじめ、遂にはミニョに何か縛る物を持っていないかと言い出した。

映画を諦めたミニョはそういえば・・・とバッグをごそごそ探る。中から出てきたのはラッピング用のリボンだった。


「今度お菓子作った時に使おうと思って買ってあったのを忘れてました」


親指ほどの太さのそれは、桜の花びらを集めたような淡いピンク色をしていた。

テギョンはそのリボンでミニョの髪を高い位置で縛った。


「やっぱりこの位置が一番いいな」


後ろから横からと、いろんな角度で見た後、出来栄えに満足したようにテギョンは大きく頷いた。

毛先が首を掠めながらミニョの後頭部でポニーテールがふさふさと揺れる。どうやらミニョも気に入ったようで、鏡を見ながら喜んでいた。






「泊まっていけるんだろ、先に風呂に入ったらどうだ。俺はまだやることがあるから」


夕食を済ませ、後片付けをしているミニョの背中にテギョンが声をかけた。


「私は・・・もうちょっと、後がいいです」


「ん?・・・はーん、さては俺と一緒に入りたいんだな」


楽譜から顔を上げたテギョンはニヤリと笑った。


「違います、そうじゃなくて・・・せっかくオッパに結んでもらったから、もう少しこのままでいたくて」


ミニョは後ろで揺れる髪に手で触れた。

結んでといってもただのポニーテールなのだが、ほどいてしまうのがもったいないというミニョ。

ミニョが動くたび髪が躍る。

それを見ているテギョンの視線はいつの間にか髪よりもその向こうにあるものに釘付けになっていた。

すっきりと伸びた首筋。

いつもは髪で隠されているうなじが今は無防備に晒されている。さっきワインを飲んだせいか、日焼けしていない白い肌はほんのりとピンクに染まり、そこへ後れ毛が垂れ、妙に色っぽさを感じた。

ネコの目の前でネコじゃらしを振るように、躍る髪がテギョンを誘う。

テギョンは立ち上がるとミニョを背後から抱きしめ、吸い寄せられるようにうなじに唇を押しつけた。


「ひゃんっ」


びくっとミニョの身体が震えた。


「ずいぶん可愛い声だな」


耳元でテギョンが囁く。


「だってオッパ、急に・・・あっ」


首筋に幾つものキスを落とし舌先を這わせれば、ミニョの口からは甘い吐息がこぼれ出す。


「はぁ・・・オッパ・・・私、まだ・・・んっ…洗い物が・・・・・・んあっ・・・」


服の上から撫でるように胸を触っていたテギョンの手が服の中へと侵入する。その手はそのままブラの下へ入り込み、柔らかな肉を直接包み込んだ。


「ああぁっ・・・」


ミニョの膝が震える。

指の腹で膨らみの先端を弄られ耳に熱い息を吹きかけられたミニョは、その場に立っていられなくなった。




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深く重ねていた唇を離す。

名残を惜しむようにゆっくり、ゆっくりと。甘やかな余韻に浸りながら。

ひと呼吸おいて瞼を開いたミニョは、俺と目が合うと顔を真っ赤にして俯けた。その仕種に俺の身体は熱を増す。ドクドクと加速し続ける鼓動とニヤける顔を隠すように咳払いをすると、俺は抱きしめていた温もりを放した。


「あー、とりあえず、座るか?傷になってるとこ手当てした方がいいし、髪も乾かさないとな」


何の気なしにベッドに視線を向けたが、ミニョは一瞬表情を硬くすると、俺から数歩後退った。


「あの、えっと・・・あっ、服着なくちゃ。このままじゃちょっと・・・」


ベッドだと俺に襲われるとでも思ったんだろうか。そういえば起きてすぐに服の確認してたし、睡眠薬と聞いて俺が飲ませたのかと聞いていたな。まったく、いつの間に俺に対する評価がそんな風になってしまったんだ?


そんなことを考えているうちにミニョは服を取りに脱衣所へ行こうとした。


「おい、さっきまで着てたのをまた着るつもりか?あれはダメだ、酒のにおいがする。それに傷の手当てするんだから・・・」


俺としてはバスタオルのままでも全然、まったく、一向に構わなかったが、そのままではミニョが傷を見せないと思い、こいつを着ろとミニョに向かってバスローブを放り投げた。しかしわずかに距離が足りず、バスローブはミニョに届く前に床に落ちそうになった。

あわててミニョがそれに手を伸ばす。

しかし身体に巻きつけていたバスタオルは大きな動きには耐えられなかったようで、床に吸い寄せられるようにはらりと落ちた。


「キャッ!」


バスタオルの下から白い肌が現れた。ふくよかな胸は身体の動きから一拍遅れてぷるんと揺れる。それは一瞬の出来事だったが、俺には目の前の光景がまるでスローモーションのように見えた。

慌ててうずくまったミニョは丸くなりながら落ちたバスローブを引き寄せ、瞬時に羽織った。


「さすが・・・事故多発地帯だな」


予想外の展開に目を奪われながら、俺は思わずぷっと噴き出してしまった。


「・・・・・・見ました?」


「・・・あ、いや、まあ、見たというか、見えたというか・・・」


きっとこういう場合はウソでも見てないと言うべきなんだろう。しかし正直な俺は本当のことを口走ってしまう。


「お、俺は悪くないぞ、バスタオルを落としたお前が悪い」


「わざとですか」


「そんなわけないだろ」


「わざとですね」


「偶然だ」


あらぬ疑いをかけられても涙目で睨まれても、その姿が可愛いと思ってしまう俺の顔はニヤけてしまう。


「ほら、やっぱりわざとです」


「違うと言ってるだろう」


否定しながらもつい笑ってしまう顔では説得力がないらしい。だがミニョの口から俺のことが好きだという言葉を聞いた今では、こんなやり取りも楽しくて仕方ない。

真っ赤な顔で「下着だけでもつけてきます」と逃げるように走り去る後ろ姿を見ながら、俺はくすくすと笑いが止まらなかった。




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