深く重ねていた唇を離す。
名残を惜しむようにゆっくり、ゆっくりと。甘やかな余韻に浸りながら。
ひと呼吸おいて瞼を開いたミニョは、俺と目が合うと顔を真っ赤にして俯けた。その仕種に俺の身体は熱を増す。ドクドクと加速し続ける鼓動とニヤける顔を隠すように咳払いをすると、俺は抱きしめていた温もりを放した。
「あー、とりあえず、座るか?傷になってるとこ手当てした方がいいし、髪も乾かさないとな」
何の気なしにベッドに視線を向けたが、ミニョは一瞬表情を硬くすると、俺から数歩後退った。
「あの、えっと・・・あっ、服着なくちゃ。このままじゃちょっと・・・」
ベッドだと俺に襲われるとでも思ったんだろうか。そういえば起きてすぐに服の確認してたし、睡眠薬と聞いて俺が飲ませたのかと聞いていたな。まったく、いつの間に俺に対する評価がそんな風になってしまったんだ?
そんなことを考えているうちにミニョは服を取りに脱衣所へ行こうとした。
「おい、さっきまで着てたのをまた着るつもりか?あれはダメだ、酒のにおいがする。それに傷の手当てするんだから・・・」
俺としてはバスタオルのままでも全然、まったく、一向に構わなかったが、そのままではミニョが傷を見せないと思い、こいつを着ろとミニョに向かってバスローブを放り投げた。しかしわずかに距離が足りず、バスローブはミニョに届く前に床に落ちそうになった。
あわててミニョがそれに手を伸ばす。
しかし身体に巻きつけていたバスタオルは大きな動きには耐えられなかったようで、床に吸い寄せられるようにはらりと落ちた。
「キャッ!」
バスタオルの下から白い肌が現れた。ふくよかな胸は身体の動きから一拍遅れてぷるんと揺れる。それは一瞬の出来事だったが、俺には目の前の光景がまるでスローモーションのように見えた。
慌ててうずくまったミニョは丸くなりながら落ちたバスローブを引き寄せ、瞬時に羽織った。
「さすが・・・事故多発地帯だな」
予想外の展開に目を奪われながら、俺は思わずぷっと噴き出してしまった。
「・・・・・・見ました?」
「・・・あ、いや、まあ、見たというか、見えたというか・・・」
きっとこういう場合はウソでも見てないと言うべきなんだろう。しかし正直な俺は本当のことを口走ってしまう。
「お、俺は悪くないぞ、バスタオルを落としたお前が悪い」
「わざとですか」
「そんなわけないだろ」
「わざとですね」
「偶然だ」
あらぬ疑いをかけられても涙目で睨まれても、その姿が可愛いと思ってしまう俺の顔はニヤけてしまう。
「ほら、やっぱりわざとです」
「違うと言ってるだろう」
否定しながらもつい笑ってしまう顔では説得力がないらしい。だがミニョの口から俺のことが好きだという言葉を聞いた今では、こんなやり取りも楽しくて仕方ない。
真っ赤な顔で「下着だけでもつけてきます」と逃げるように走り去る後ろ姿を見ながら、俺はくすくすと笑いが止まらなかった。
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