それは俺がずっとずっと聞きたかった言葉。
だけどあまりにも強く望んでいたからだろうか、素直に喜ぶ俺と、幻聴かもと一瞬躊躇する俺がいた。
「信じられないな・・・」
独り言のように呟いたが、拒絶されたと思ったのか、俺の言葉にミニョの表情が凍りついた。それは本当に何というか、悲愴感漂う顔で。
でも今の俺はそれを一瞬で吹き飛ばす言葉を知っている。
「嬉しくて・・・まるで夢でも見てるみたいだ」
「夢じゃないですよ」
目に涙をためていたミニョの顔に笑みが浮かんだ。
実際に俺が見たのは、シヌと2人で去って行く夢だったから、たとえこれが夢だとしてもかなりの進歩だ。だけど夢なら覚めないで欲しいなんて思ったりしない。もしこれが夢なら、こうしている時間がもったいない。そんなものにはさっさと背を向けて現実のミニョを捕まえに行く。だから俺は手を伸ばした。
「これが夢じゃないって確証が欲しい」
俺はもう1度ミニョを抱きしめた。今度は優しく包み込むように、ぬくもりを確かめるように。
額にキスを落とし、赤く染まる頬に唇で触れて。
俺がミニョの目を覗き込めば、ミニョも俺を見つめ返す。
少しだけミニョの顔を上向かせると、俺はわざとゆっくり顔を近づけていった。
恥ずかし気に揺れる瞳がよく見える。そして少しずつ、少しずつ、近づいてくる艶やかな赤。そのバラのような唇に触れる寸前でミニョは目を伏せた。
柔らかな感触を味わうように楽しむように、軽くついばんでみる。上唇と下唇を交互に食んで。
何度かくり返していると、やがてミニョが控え目ではあるが、俺に合わせるように唇を動かし始めた。
強く重ねる唇。
うっすらと開いた歯の間から舌を差し入れ、ミニョの舌を探り出す。舌先で触れ、追いかけ、絡めて。
「んっ・・・んんっ・・・」
鼻から抜けるミニョの甘い声を間近で聞きながら、むさぼるような深い口づけを、角度を変え何度も何度も。
俺は崩れ落ちそうになるミニョの腰を片腕で抱えると、もう片方の手で頬を包み込んだ。
今、俺の腕の中にあるものの存在を確かめたくて、その手を頬から首へ、肩から腕へと撫でるようにすべらせていく。
途中で傷に触れたのか、ミニョは身体を強ばらせるように筋肉を収縮させた。それでも俺の背中に手を回し、キスに応え続けるミニョ。
その姿が愛おしくて。
放してやりたい。
でも放せない。
やっと手に入れたという喜びが大きすぎて、ミニョを求める気持ちが強すぎて、ミニョの身体を労わる余裕が今の俺には欠けている。
優しく包んでいたはずの俺の腕はいつの間にか力が入り、ミニョの身体を強く抱きしめ、唇を重ね続けていた。
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