ミニョの濡れた髪が頬に触れた。
バスタオルで包んだだけの身体はしっとりとしてみずみずしく、玉の露を輝かせている。
俺がいつも使っているボディソープの香りがする。それとこれはミニョ自身のにおいだろうか、首筋に顔を埋めていると、甘いにおいが鼻腔をくすぐった。
ミニョは動かなかった。こんな風に抱きしめられ、放してくださいと俺を拒むかと思ったのに、俺の腕の中でおとなしくしている。
ミニョの顔を覗くと、ひとすじの涙が頬を伝っていた。
「悪い、痛かったか」
そういえば身体のあちこちに傷があるんだったと思い出した俺は、ミニョが痛みのため身動きもできないのかと慌てて腕を解いた。
拘束から解放されたミニョは、ずり下がりかけたバスタオルを胸元でしっかりと掴み直し、口をキュッと結んだ。
俯き加減の顔からポタリと涙が零れ落ちる。
「ごめん、つい興奮して」
そんなに痛かったのかと心配してミニョの顔を覗き込むと、ミニョは涙を拭いながら首を横に振った。
「違うんです、痛いんじゃなくて・・・いえ、痛いのは痛いんですけど、でも違うんです。そうじゃなくて・・・」
下唇を噛み、すん、と鼻をすする。
「あの・・・におい・・・消えました?」
「え?」
「さっき、シヌさんのにおいがするって・・・」
「ああ、あれか、あれは・・・ウソだ。服から酒のにおいはしたが、シヌのにおいなんてしない」
「本当に?じゃあ、今の私、どんなにおいがします?」
「・・・俺がいつも使ってるボディソープだ」
俺の返事を聞いた途端、ミニョの目からは大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。
ほっとした気の緩みからか、次から次へと溢れ出る涙は、拭っても拭っても収まる気配がない。
「そんなにシヌの電話に出たいのか・・・」
悔しいが、ほんの少しもミニョの気持ちを俺に向けられないのかと、絶望感に包まれた。しかしミニョは再び首を大きく横に振った。
「違うんです、テギョンさんと同じにおいがするのが嬉しくて・・・」
泣くのを堪えようとしているのか、ミニョは涙を拭いながら息を詰めた。
俺と同じにおいで嬉しい?
さっきまでさんざんシヌの名前を聞かされ、電話に出たがっていたミニョを見ている俺は、そこから俺と同じにおいで嬉しいという言葉がどうつながるのか判らない。
「こんなこと言って、信じてもらえるか判らないし、言えないこともたくさんあってうまく説明できないけど・・・」
ミミョは何度か深呼吸をくり返し、最後にもう1度、すん、と鼻をすすると、顔を上げた。
「私もテギョンさんが好きです。どんなことがあったとしても、テギョンさんのことが好きです」
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